国会通信 No.222 

【パリ訪問報告1】

1995/10/16 (第222回 マンデーレポートの要約)

  ::::::::長文です。3760字::::::::


【訪仏の成果】
● 10月9日から12日の間、2泊4日の強行軍で訪仏。
フランス要人に面会して核実験強行反対を訴えてきました。
パリ通信 No2 と No3 で会見の詳細については報告
しました。今回は、その感想をまとめてみました。

● 与党代表団と大相撲

1 残念ながら、与党代表団の訪仏の評価は低かった。
同時期にパリを訪問していた大相撲の一行がシラク大統領に面会、
核実験反対の意思を伝えることが出来たのに比べると、
国会議員のほうは「肩すかし」、
何をやっているんだ等揶揄嘲笑のマトになった感じ。

2 しかし、大相撲パリ場所の招聘者はパリ市長時代のシラクさん本人、
会って当然の話。それに比べれば国家議員のほうは「招かれざる客」、
抗議のための急遽の渡仏である以上、アポもなければ、断られるのも
覚悟の上。

3 月1回の実験ペースから見ても、シラクさんをテーブルに
つかせるための根回しの時間的余裕もない。
そもそも「抗議」に行く以上、会っていただけるよう
頭を垂れてお願いをしているようでは、最初から勝負はついたようなもの。

4 正々堂々、面会を求め、会うかどうか、
会うとしたらどの程度のレベルの人間をだすか、
それは相手の判断にまかせればよいと考えた。
対応の次第によって結局シラク大統領の程度が
判断されるだけのこと。

5 日本側議員を揶揄嘲笑するテレビ・新聞は、
本当の相手を間違えていやしないか。
与党代表団に対し、
「元首でありかつ自らの態度はすでに表明済みである」として
形式的な外交慣例をタテに会おうとしないシラク大統領こそ、
真摯な議論をするのを逃げたとして非難されるべきではないか。

6 フランス側はシラク大統領が大変な親日家であることを
誰もが強調する。
しかし「日本の心」は「大相撲」や「歌舞伎」などの
伝統的文化だけではないことを知るべきだ。
核のない平和の願いも間違いのない日本の心である。

7 親日家シラク氏の愛してやまない大相撲の力士たちからも
核実験反対の声が出されたのを大統領はどう聞いたのだろうか。

● 人に会うことが成果か

1 訪仏中のマスコミの注目は大統領に会えるかどうかに集中した。
そして会えないことが確定した段階で、成果なしとレッテルを
貼り付けた。

2 しかし、大統領に会うことだけが成果なのだろうか。
今回、多くの議会関係者や大統領側近は、
日本との長い外交の歴史の中で、はじめて国会議員から
強硬な核実験反対意思を聞いたのではなかろうか。

3 しかも、それは「唯一の被爆国」だからという
過去の歴史からの願いであるのみならず、
同時に、核の抑止力を乗り越えて新しい世界の安全保障のシステム
を追求する未来志向の問いかけであったことを知ったと思う。

4 「核実験強行」が「核拡散」に結びつく、
さらにはNPT体制を崩壊に導くと言う我々の論理には
結局「フランスには東と南から核の脅威が迫っている」という
現実論でしか応じることは出来なかった。

5 この議論をするときのフランス側の苦しそうな表情は
印象的であった。

● 顔の見えない理由

1 日本外交はよく顔が見えないと言われる。
その原因には様々な理由があるが、今回強く感じたのは
外務省が舞台裏でシナリオを書き、表から見るときっちりとした
シナリオがきれいに流れるようなことを
マスコミもまた多くの日本人も外交と錯覚しているのではないかと
言うことである。

2 シラク大統領の核戦略は基本的にはドゴール以来の
自主独立フランス戦略に端を発している。1960年以来
35年続く国家政策が一朝一夕で変わるはずはない。

3 そんなフランスの政策に真っ向からぶつかって行くのだから
安易なシナリオや「落としどころ」など見つけられるはずはない。

4 まさに真剣勝負のにらみ合いになるに決まっているし、
論理の刃で渡り合うしかない。
その緊迫したにらみ合いのなかで、初めて新しい展望が開けてくる。
大統領に儀礼的に会い15分間程度の表敬をするよりも
今回の真摯な論議のほうにいみがあると考える。

5 日本外交の特徴は3つの「S」と言われる。
S=smile,S=silent,S=sleeping.
しかし、今回の訪問は不十分ながらも
明らかに3つのSから飛躍していたのではなかろうか。

● 成果はあった。
1 人の面で「成果」を見ればシラクさんに会えなかったのだから
 決して満足できる成果はあげられなかった。しかし、それに代わる
 多くの人々と会い、率直な議論を展開することが出来た。

 特に大統領府の外交政策を実質的に決定していると言われる
 レビッド大統領外交顧問やゴドフラン対外協力大臣との会談は
 多いに意味があったと考える。

2 実験中止という正面の成果は困難かもしれない。
 しかし、側面の成果は間違いなくあった。

1) 回数を8回から7回に減らす可能性を明言。(外交顧問)

2) 潜水艦用の核及び、シミュレーションのためのデータが
 集まり次第止めることを示唆。       (同上)

3) ジュネーブで行われているCTBT(包括的核実験禁止条約)交渉
 の早期締結に積極的に協力することを明言。  (同上)

4) CTBT交渉の大きな論点であった
 小規模核実験や工業的核実験除外論にたいし、
 フランスが例外なしのゼロオプションにたち米英がそれに
 追随したこと。               (同上)

5) CTBTにおいてゼロオプションの採用を未だ決定していない
 中国とロシアについても早期締結のために働きかけることを
 示唆。                   (同上)

* 特にCTBT交渉におけるフランスの姿勢を3)4)5)のように
 より先鋭化させつつあるのは、核実験反対の圧力があるためである。
 正面の成果は少なくとも、間違いなく側面の成果を上げつつある。
 
● フランスのたそがれ
1 ドゴールにあった「第3世界のリーダー」としてのフランスといった
 ビジョンや世界観が語られなかったのにはがっかりした。
 米ソ冷戦が終わった後、壮大な核廃絶のプログラムを自ら提案し
 世界の尊敬を集め新たな平和のリーダーになれるチャンスを、
 フランスは自ら潰してしまった。

2 フランス側の核実験再開の理由は
 結局の所「東と南からの核の脅威」に対抗するためでしかない。
 すなわちフランスのための核、自国の安全のための核でしかない。

3 この理論は、フランスがごく普通の国に成り下がったことを如実に
 物語る理論である。そのうえ核開発の潜在的な願望を有する一部の
 途上国は、このフランスの論理を模倣しかねない。核拡散につながる
 ゆえんである。
 まさに落日のフランス、たそがれのフランスを感じて帰ってきた。

● 「核の傘の下にいる日本」論に対する反論

1 核保有国が非保有国に対する非難としてはもっとも低劣で
 自分勝手な論理である。

 なぜなら、核を保有する国が存在しなければ他国の傘の下に
 身を寄せる必要もないからである。保有国の存在こそ全ての
 問題の発端であることを忘れている。

 さらに、核を持つ能力が潜在的にありながら自ら不保持の決断を
 している国に対する敬意を欠いている。
 この非難の行き着く果ては、傘の下にいる国が自前の傘を持つこと
 を認める論理に発展しかねない。こうなればNPT体制は全く有名
 無実となるであろう。 

● 気になる安全保障理事国入り支持発言。

1 今回会ったフランス側要人の多くは、話の最後に
  日仏の友好関係や経済関係に悪影響が出ないことを期待し、
  そして日本が国連の安全保障常任理事国になることを支持する
  と結んだ。

2 繰り返し安保理のことを言われると、だんだん邪推したくなる、
  安保理入りしたいなら核の問題であまり余計なことを言いなさんなよ、
  また安保理になる前提は核の抑止力を承認することなんだよ、、、、
  こんな声がささやかれているような気になってくる。

3 あたかも、日本外交に対する「殺し文句」が安保理入り支持と
  勘違いしているかのようだ。
  日本の外務省に対しては、このことをちらつかせておけば
  簡単にコントロールできるとでも思っているのだろうか。
  あるいは大使館はそれほど熱心にこの「外務省の悲願」を
  アピールしているのだろうか。

4 核実験を反対する日本に対して、ことさらにささやかれる安保理入り
  支持発言は、安保理 =「核保有国クラブ」であると言う実態をよけい
  際だたせるような気がしてくる。
  だからこそ私は安保理入りについては慎重にならざるをえないのである。

● 質問に対する答え
1 今回の行動は与党三党の党務として訪仏しています。
 従って、国費は使っていません。各党の負担となります。
2 今回使用した飛行機の座席はファーストクラスでした。
 強行日程のなかでの心身の調整のため許されると考えます。