国会通信 No.232
【住専問題】
1995/12/25(マンデーレポート第232回の要旨・長文注意)
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【先週の主な活動記録、参加した主な会議】
●24日 平成8年度予算案決定。
【住専問題】
先週決定された住専問題の与党処理案については
多くの皆さんから大変厳しいご批判を頂いております。
そこで、決断に至った理由や今後の方針等について
さきがけの考え方を説明します。
1 住専問題の経緯
まず、今回の最終決断に至る長期間の住専問題の経緯について
振り返っておく必要があると思います。
住専問題の歴史をまとめてみると以下のようになります。
1971-79年 日本住宅金融など住宅金融専門会社(住専)8社設立。
73年12月 金融制度調査会(蔵相の機関)が答申に「住専育成」を
盛り込む。
75-80年 住宅金融公庫や銀行の個人向け住宅ローンが増え、
住専は法人向け不動産融資に傾斜。
80年10月 大蔵・農水両省が局長通達で、都道府県信連の住専向け
融資を、非農協組合員への員外融資規制を受けない
「金融機関向け」と位置付ける。
●《89年8月〜91年10月 橋本龍太郎大蔵大臣 》
90年3月 不動産向け融資の総量規制(注1)など「バブル退治」の
政策が始まるが、住専は対象外。
このことから農林系の住専向け融資が急増。
■ 注1:総量規制
不動産向け融資を規制し、土地投機を抑制する目的で90年に
大蔵省が金融機関に対して出した銀行局長通達によるもの。
通達の内容は、
(1)不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える(総量規制)
(2)不動産業、建設業、ノンバンク(住専含む)に対する融資の実態報告
を求める(三業種規制)
の2点が主な内容。
しかし、(1)の不動産向け融資は住専を対象とせず、また、
(2)については農協系金融機関は対象外とされたため
結果としては農協系ー住専ー不動産行へと資金が流れ
住専の不良債権問題悪化へとつながった。
91年頃 住専の経営が急速に悪化。
●《91年10月〜91年11月 海部俊樹総理大臣・蔵相兼任 》
●《91年11月〜92年12月 羽田大蔵大臣 》
91-92年 住専7社の第一次再建計画(注2)まとまる
(農林系は貸出金を回収しないことで協力)
■ 注2:第一次再建計画
経営状況の悪化いた住専の再建を図るため、過去二度にわたり
再建計画が策定されている。
・第一次再建計画(H3ー4年)
母体行を中心に策定、主な内容は母体行の金利
減免・母体行以外の金融機関の残高維持。
第1次、第2次の二つの再建計画は、下落した地価が10年後までに
再上昇することを見込んだ甘いもので合ったため、いずれも
地価下落で行き詰まることになる。
●《92年12月〜93年8月 林義郎大蔵大臣 》
93年2月 大蔵・農水両省の担当局長が「住専の債権は母体行が責任を
負う」とする覚書を交わす。
93年2-6月 金利減免を柱とする第二次再建計画(注3)
■ 注3:第二次再建計画(H5年)
母体行・大蔵省中心に策定、
金利減免(母体行0%、一般行2.5%、農林系4.5%、10年固定)
が主な内容。この時に、大蔵・農水両省により
「住専の再建は母体行が責任を持って行う」覚書が交わされた。
●《93年8月〜94年6月 藤井裕久大蔵大臣 》
●《94年6月〜現在 武村正義大蔵大臣 》
95年3月 第二地銀系の総合住金が農林系と元本返済の一部繰り延べで
合意。再建計画の破錠が明確に。
6月 連立与党が、いわゆる「新三党合意」策定。
検討作業の過程で、さきがけより、今後検討すべき課題とし
て、不良債権問題(特に住専)を提起。
結果、「秋の臨時国会をめどに不良債権問題の早期処理の
検討を急ぐ」事が盛り込まれ、与党として検討することと
なる。
7月 新三党合意」に基づき、与党政策調整会議の下に
「金融・証券プロジェクトチーム」(以下PT)設置。
8月 大蔵省が住専8社の立ち入り検査を実施。
大蔵大臣が「住専問題の年内処理」を表明。
9月 与党PTが中間報告として、「論点整理」を発表、
11月中にPTとしての方針を策定することを明記。
大蔵省が住専の立ち入り検査の結果、8社合計のロス見込み額が
7兆7000億円と報告。同日両省含む当事者に、直ちに問題解
決のための話し合いをし、解決策を取りまとめるようPT3座長
より勧告。
9月 金融制度調査会金融システム安定化委員会が公的資金導入と受
け皿機関の設置を求める中間報告をまとめる。
9-11月「整理」方針を固めた7社の母体行と農林系が5回にわたり協議。
損失分担は物別れに。
12月1日 与党PTの報告(口頭)を踏まえ、与党政策調整会議がガイド
ラインをまとめ、両省に提示。
11日 首相が「最後の決断は自分がする覚悟」と19日までに政治決断を
下す考えを示す。
14-18日 大蔵省案について関係者による実質的な詰めの作業が行われる。
与党で関係者の責任追及論高まりこれまでの経緯、
種々の責任の明確化等について3党で合意文書作成。
19日 与党、責任追及等を前提に了承。三党首・与党首脳会談、
臨時閣議で処理策最終決定。
2 公的資金導入による処理方法を選択した理由
1) 以上の経緯で分かるように当事者間の協議はなかなか進まなかった。
そこで最終的には、「協議続行」か、「協議打ち切り・法的処理開始」か、
「公的資金導入による早期処理」かの3者のうちどれかを選択せざるを
えない状況となった。
2) 協議続行は、損失額をさらに飛躍的に増加させてしまうのみで
景気の先折れ懸念を高めるだけである。また法的処理開始も債権回収が
現実に困難であること、法的処理期間の時間経過の中で損失をさら
拡大する懸念が強いこと、母体行と農協系の訴訟合戦を引き起こし
金融システムが大混乱すること等、いずれにしても日本経済の混乱を
長引かせる結果しか想定できないとの結論に達し、公的資金導入による
問題解決の方法を選択せざるを得なかった。
3) 公的資金導入による早期解決
以上の検討の結果、今回泥沼のようになってしまった住専問題に終止符を打ち、
日本経済への国際的信頼を回復して、景気回復を真実のものとするために
当事者双方にぎりぎりの負担を求めた上で、なお残る損失を財政資金で埋めて
早期に処理することを決断した。
総損失額 6兆4100億円(回収不能 6.27兆 欠損見込 0.14兆)のうち、
母体行 3兆5000億円
一般行 1兆7000億円
農協系 5300億円
政府支出 6800億円 の各負担を決定することとなった。
4) 問題の処理のために国民の血税6800億円を使用することになるのは
まことに申し訳ない次第である。ただ、現在の処理案でもすでに経営の悪化
している系統金融機関のうち信連の20くらいは赤字決算が予想されている。
処理を先送りすることが、損失額をさらに増やし、結果として昭和2年に
わが国をおそった金融恐慌が再び勃発することを恐れる。
5) 今回の税負担をお願いする以上、この問題の責任は徹底的に
究明する必要がある。
昨日の与党院内総務・政調合同委員会でも私はあえて発言し、
「責任追及に例外なし。政治も行政も経済も。貸し手も借り手も。
責任追及に例外を設けてはならない。
自己批判の精神でやらなければならない。」
と発言した。
過去の政策判断のミスについての政治・行政の責任追及はもちろんのこと、
債権回収のための公的機関を作り、借り手の責任を追及するとともに、
住専の融資に絡む金融犯罪についても厳格に捜査し、追求していく体制を
作ることが大きな課題だと考える。
3 責任問題等について
1) 次期通常国会において、衆参両院に特別委員会を
設置し、当時の関係者の証人喚問・参考人招致等
を行うことにより、住専問題の責任の所在を明らか
にするべく最善の努力を払うべきである。
その際のポイントで重要なのは次の各事項である。
a) 政策責任(行政および政治)
(1)バブルを発生させたプラザ合意後の超金融緩和政策の政策責任
(2)バブル退治にあたり銀行等のみを救った不動産融資や総量規制の政策責任
(3)住専の再建計画策定にあたり、地価下落を読み損ね整理をせずに先送
りした政策責任
b) 借り手の責任
(1)資金的に余裕がありながら元本返済も利払いもしない借り手の責任
(2)資産がありながら追い証を拒む借り手の責任
c) 住専の経営責任
(1)住専経営者の経営判断の責任
(2)融資審査、担保の確保、追い証の徴求などの債権回収努力は十分だったか
(3)経営情報の開示に虚偽記載、粉飾決算はなかったか
d)母体金融機関の責任・義務
(1)出資者としての経営監督・経営指導責任
(2)役員派遣に伴う実質的経営責任
(3)融資、融資先紹介にあたって背任的行為はなかったか
C主たる融資者(メインバンク)としての責任
e)貸し手の責任・義務
(1)融資にあたっての審査は十分だったか
(2)貸出しリスクに応じた引当金の積み増し等の経営努力は十分だったか
(3)経営者は善管注意義務を果たしていたか
4 今後の課題について
(1)住専問題に関する情報のディスクロージャー
与党の方針は、ひとことでいえば[住専問題に秘密なし」
である。大蔵・農水両省は、従来なら個別企業の秘密として
開示を避けてきたあらゆる企業情報を含めてすべて情報を
開示しなければならない。
すべての資料要求に誠実に答えなければならない。
住専関連は守秘義務を解いたのである。
母体金融機関は、住専処理に伴う償却による決算見通しの
変更を速やかに市場に情報開示する必要がある。
農林系は、経営体力がないことを証明する情報を開示する必要がある。
系統全体で住専以外のノンバンクに5兆円以上の不良債権を抱えて
いるといわれるが、こうした農林系金融機関が抱える危機の実態の
情報開示も不可欠。
(2)金融機関のリストラ
銀行と農林系統金融機関は、住専問題を当事者間で解決出来ず、
国民の税金による負担を求める事態に立ち至った事をともに深く反省し、
自らのリストラ努力によって経営責任を国民の前に明らかにすべきである。
銀行は、一般の事業会社が経営危機に陥れば、銀行管理で強引にリストラを
進めるのだから、住専処理に伴う赤字決算を契機にリストラを一段と
進めるのは当然である。
農林系統金融機関は、早急に組織再編成のための関係法令を整備したうえで、
速やかに47都道府県信連の整理に取りかかることが必要である。
(3)債権の回収と金融犯罪の摘発
最大の課題は、債権回収を協力に進めて、二次損失負担の拡大を防ぐ
事である。このため、預金保険機構を参謀本部とし、警察、検察、
国税当局の緊密な協力体制を作り、債権回収に取り組む。
また住専の最大の借り手である末野興産の場合は山口組、桃源社の場合は
住吉連合といった暴力団との関連が噂されているが、これらを相手に
債権回収にあたる覚悟が必要である。従って債権回収業務には、
警官のボディーガードをつけるなど特別の体制を取るべきである。
さらに、不良債権の増大の背景には、金融機関からの不良債権の
付け替えなども行われていると指摘されている。こうした背任行為などの
金融犯罪についても、個別の債権回収を進めながら告発を進め、
捜査していく必要がある。
(4)金融行政の改革
金融政策の失敗を繰り返さないために、行政機構を含む
金融行政の抜本的な改革を早急に検討し、平成8年度中
に措置する必要がある。
【年末のご挨拶】
今年1年ご愛読ありがとうございました。
今年3月から開始したネットワークでの国会通信も
今回で43号。タヒチ通信、パリ通信、号外等の
番外編をいれると回数は50回を越しています。
慣れぬ通信での不手際や、時間のなさから来る
応答不足など多々反省することあり、心苦しく思いつつ
年の背を迎えました。予算作成の中枢での経験のご報告も
したいところですが、住専問題で締めくくらざるを得ない
現在の政情を大変残念に思います。
来年もよろしくお願いします。
【来年の予定】
1996年の国会通信は
1月8日から開始します。ご期待下さい。
A HAPPY NEW YEAR !!!