国会通信 No.238
【住専問題PART2】
1996/2/5(マンデーレポート第238回の要旨)
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【先週の出来事】
29日 予算委員会 開始。 新進党審議ボイコット。
31日 さきがけ総務会・住専問題で2時間半討論。
☆ 以下の意見が出る。
・ 住専問題をむしろ追い風にして、大蔵省改革の具体案を
早急にまとめること。
・ 大蔵省の天下りについて法律で規制したり、執行逃れを
容易にしている現行法(例 民法395条の短期賃借権の
保護規定)の見直し、法人格否認の法理の整備、執行逃れの
判断が迅速にできるような民事執行法の見直し、等の総合的
法整備について提案をまとめる。
・ 情報開示は徹底的に行うこと。
・ 処理のスキームの全貌を国民にわかりやすく説明をすべき事。
【住専問題Q&A】
1 処理の全体のスキームについて
● 住専7社に対しては、住専を設立した銀行(母体行)や
損保・生保・その他の銀行(一般行)及び農林中金・信連・
共済連等の農協系金融機関(系統)によって総額12.8兆円の
巨額な資金が貸し込まれている。(内訳 母体行……3.5兆円、
一般行……3.8兆円、系統………5.5兆円)
●この資金を中心にして、住専7社の名目上の資産は13.19兆円
であるが、放埒な貸し出しやバブル崩壊による担保不動産の
価額激減により、その資産価値は大幅に低下。
●住専7社の資産内容をおおまかに分類すると
・回収可能な正常資産が3.49兆円(総資産の26%)、
・不確定な要素を含んだ回収見込み資産が3.29兆円(24%)、
・回収不能と見られる債権(1次ロス)が6.41兆円(48%)、
と悪化しており、さらにこれを放置すればするほどロスは
拡大し傷口が悪化していくことが懸念されている。
●住専7社が、貸し込んだ建設・不動産等のバブルの
張本人に対する債権回収の努力をすることはもちろんであるが、
もっとも懸念されるのは住専に貸し込んだ金融機関のうち特に
体力の弱い系統の存在。
●系統は、現在まで住専7社から年率4.5%の金利で年間2000億円
弱の金利を得ているが、法的処理に移行すると即座にこの支払いは
凍結される。系統の体力のなさは、住専から得られるこの利息が
系統の経常利益の過半数を占めていることに象徴的に現れている。
したがって、住専からの利息が支払われないとなると、系統は
ただちに深刻な経営危機に陥る。
●農協の総預金額は68兆円弱、総預金者数は657万人。
住専に貸した系統資金5.5兆円のうち半分以上が回収不能と
なったとすれば、預金者の不安は頂点に達する。取り付け騒ぎが
簡単に起こりかねない緊迫した事態は避けねばならない。
●さらに、系統は、母体行の紹介により住専に融資したのだから
自分たちに損害を押しつけたのは母体行と考えている。
(「完全母体行主義」)住専は準金融機関であり、母体行の出先機関
のようなものだから安心して貸したのだ、回収不能の責任は母体行が
負うべきである、と言うのが系統の主張。
とすると、当然双方の間に深刻な法的対立が生じ、日本の金融システム
はいつまで立っても泥沼状態。世界のわが国に対する信頼はどんどん低下し
再びジャパンプレミアムの問題が発生し、株式市場も2万円台割れの状況と
なるであろう。
●これらの問題をさけるために、
1)回収不能と見られる債権(1次ロス)6.41兆円については
関係者の協議により、以下のように処理することとした。
母体行が自らの債権全額3.5兆円を放棄。
一般行は債権の4割強の1.7兆円を放棄。
系統は債権全額の返済を受けた上で、債権の1割弱にあたる
0.53兆円を贈与。(返済額を1割弱まけてやったことと同じ)
2)全金融機関、系統等から総額6.78兆円の低利融資を求め、
これを原資にして、住専7社の残り資産6.78兆円
(内訳正常資産3.49兆円、回収見込み資産3.29兆円)を
住専処理機構に譲渡させ、住専を解体した上で、
今後の債権回収業務は処理機構が行う。
3)さらに回収見込み資産3.29兆円のうち、
回収の法的処理をしても回収できなかった分(2次ロス)
については、国が2分の1を負担する。
こととしたものである。
2 疑問に答えます。(さきがけ作成の「Q&A」をベースに)
● 住専処理策について
1)母体行、農協系、財政資金などの金額の根拠は
住専処理機構への債権等の譲渡に伴い発生する損失の分担は、経営責任のある
母体行には、3.5兆円の債権の全額放棄、経営責任のない一般行には、
3.8兆円の債権の4割放棄(第3分類を含む損失を修正母体行主義で配分
した額に相当)、系統は一度債権を全額返済のうえ、5300億円を贈与する。
民間でそれぞれの立場からぎりぎりの負担をしたうえで、なお残る損失6800
億円について、不良債権問題の象徴である住専問題を早期に処理し、
わが国の景気を本格的な回復軌道に乗せていくために、
やむなく財政資金を投入することの政治決断をしました。
2)農林系の5300億円の根拠。贈与とした理由。
過去の住専各社の設立以来の経緯から見て、農林系は一切負担を負う必要
はないという「完全母体行主義」の主張もあります。しかしわが党は、
農林系も貸し手として住専への融資のリスクを判断できたのだから、
一定の責任は負うべきだと考えています。
系統の債権は、一度全額返済したうえで、ぎりぎり可能な資金協力を
してもらう「贈与」の形を取ったのは、そのためです。
農林系が5300億円の根拠ですが、結局の所各信連や共済連等の
負担能力を総合的に積み上げて、当事者間で最終的に合意した金額です。
系統は、母体行と比較して体力は弱く、5300億円の負担によって
47の都道府県信連のうち20程度は赤字になります。
さらに、47信連の昨年度の経常利益は合計で1304億円しかありません。
今まで住専から信連に対して毎年4.5%の利率で年間1505億円の利息が
支払われていましたが、この利息が支払われなくなると当然赤字になります。
住専を破産等の法的処理に委ねると、直ちに利息の支払いも凍結されます。
これによる混乱は避けなければなりません。
3)農林系に甘いのでは。農林族が動いたのでは。
系統の負担については、決して甘く考えたわけではありません。
母体行が実際に経営権を持ち、役員も派遣してきたという住専の実態、
上記のような住専の弱い体力、さらに657万人に及ぶ農協貯金者の保護
等総合的に勘案した末の結論です。
しかし、系統も農協貯金者の貯金を預かって運用する者として当然の
審査・運用についての管理義務は免れません。母体行の言うなりに
なった、貸付業務の実態はそもそも資金運用者としての能力自体疑わ
れかねません。
従って、系統もリストラ、組織の再編・合理化に早急に取り組まなけ
ればなりません。そのための法整理を急ぐこともすでに橋本政権成立の
際の三党合意に盛り込んでいます。
4)法的整理の道をとらなかった理由。
法的整理に持ち込めば、一見公明正大の様に見えます。
しかし、上記のように法的整備に入ってまず直ちに影響が出てくるのは
住専7社からの利息をあてにしていた系統に対して、利息支払いが凍結
されることです。破産手続きは破産財団の支払停止から始まりますから
凍結は当然の結果です。そうなると、全国の系統が大混乱となります。
そして、この自体は破産手続きが終了するまで続きますので、経済に対する
ダメージは長期化します。
さらに、系統は自分たちには責任がないと考えていますから、当然紹介融資
等をしてきた母体行を相手取り、ばく大な損害賠償訴訟や、詐欺等の刑事告訴等
複雑にして広範な訴訟合戦に発展することは目に見えています。
この結論を出すのにも相当長期の時間がかかります。
その間に住専の損失はさらに雪だるま式にふくらんでいき、景気回復基調が
不安定になり、土地市場が活性化されず、抵当物件の担保価値はますます下落
し、住専の2次ロスはさらに拡大し傷口を広げていきます。
すでに債務超過状態の住専各社の経営が早晩行き詰まるのは確実。住専からの
利払いが停止して債権が焦げ付けば、全国のほとんどの信連が赤字転落。
また訴訟が解決しないうちに体力の弱い金融機関からつぶれていく事になります。
系統や金融機関の預金者には不安の影が拡大。疑心暗鬼のなかで我先にと
預金引き下げに殺到する「取り付け騒ぎ」がいつ起こってもおかしくない
危険な状況になるでしょう。
こんな事態の発生を社会学的に実験することはできません。
なぜなら一旦発生してしまうと、その収拾のためにばく大な預金者保護のための
公的資金投入が必要となるからです。
その社会的、経済的影響を考えて、今回のような政治的決断をしたわけです。
5) 今回の処理案で住専はどうなる。
今回の処理により、住専はその貸付債権等を「住専処理機構」に譲渡し
解体されます。また、この措置は住専の債権回収機能が弱かったのを強化し、
債権回収に全力を挙げるためにも必要です。
処理スキームは「預金保険機構」と「住専処理機構」の二つを
中心に展開されます。
まず、「預金保険機構」に「金融安定化拠出基金」(仮称)を設置し、
住専に出融資していた金融機関(金融以外に証券、生保、農林中金、
商工中金を含む)から約1兆円の無利子の基金を拠出してもらいます。
この基金と、母体行や農林系などから低利融資してもらった資金を
あわせて合計6.78兆円で、住専の債権を買い取ります。
その後「住専処理機構」は、この基金や低利融資の資金を運用して収益を上げながら
、
債権回収を行っていきます。また回収の結果、損失が発生した場合は、
その収益金であな埋めして行くことになります。
この結果当然住専は解体され、「住専処理機構」に移転されることになります。
6)債権回収はどう進めるのか。また住専から借りた借金王はどうなる。
このスキームは、住専では強力な債権回収ができなかったことを反省し、
強力な取り立てをするための主役の変更でもあります。
すなわち「預金保険機構」には、警察、検察、国税から現職の職員を出向させて
特別のチームを作り、また「住専処理機構」には、警察OBや不動産鑑定士
など債権回収の専門家を採用して、両機構一体で債権回収強力に進める体制を
作ります。そして債務者に対しては破産手続や強制執行などあらゆる法的手段を
用いて迅速かつ的確に債権回収に全力を挙げることとなります。
住友銀行名古屋支店長射殺事件などと住専の大口貸出先の不良債権回収を困難
にしている暴力団の絡みも指摘されています。民間金融機関が単独で債権回収に
あたる限り回収がほぼ困難とされる債権(第3分類)についても、政府を挙げた
取り組みによって債権回収に万全を尽くします。
7) 国が将来の損失の2分の1を負担する理由。
上記の通り、「住専処理機構」は、住専7社から約6兆7800億円で債権債務
の譲渡を受けるのであるが、この資金は母体行や系統などからの低利融資による
ものである。
ところで、将来損失が発生する恐れを認識・認容しながら、融資実行をすると
なると背任罪に該当する恐れがでてくる。また融資を決定した金融機関の取締役
等に対しては銀行等の会社に損害を与えた者として、株主代表訴訟を提起され
かねない。
このような懸念を払拭し、上記6.78兆円の低利融資を可能にするために、
この融資には「預金保険機構」の保証をつけ、またさらに5年、10年先
に「預金保険機構」の住専勘定に損失が発生した場合には損失額に応じて
2分の1を上限に、その時点で財政支出することにしたものである。
● 住専の経営破綻の責任について
1)借り手の責任
住専問題の第一義的な責任は、金を借りて返さない借り手にあります。
資産デフレの状況の中で、金を返せなくなった事情はあるにせよ、
多くの借り手の企業は、バブルの時期に不動産融資を受けて地価高騰を
引き起こした張本人でもあります。まして、国民に負担をお願いする以上、
金利も返済せずに毎日ベンツを乗り回して豪遊しているような不真面目な
借り手の経営者は、放置する訳にはいきません。
住専処理法案を一刻も早く成立させて債権者を住専から「住専処理機構」に
変更したうえで、強力な債権回収をしなければなりません。
また、名義を換えただけで執行が困難になる現在の民事執行法を改正したり、
法人格否認(子会社に移転して執行のがれをされる場合)の法理を一般法ではなく
明文化したり、等の債権回収強化法案を作成する必要があると思います。
2) 債務者の実名リスト等の情報開示
住専の融資先上位100社の実名リストは、与党も一致して要求しています。
ただ、この中には、正常な借り手も含まれているので、プライバシーの保護などの
観点から、資料の公表方法は、秘密会などの工夫が必要と考えます。
大口融資先への融資額のうちいくらが不良債権と認定されているのかは、匿名
でも公表する必要があると考えます。
ただし、新進党が要求している「5年後の預金保険機構」の責任準備金残高など
は、今後の状況変化によって算定不能であり、このようなためにする資料請求に
ついては認めるのが困難なものもあります。
国会法104条や議員証言法に基ずく資料請求決議が必要なものについては、
政争の具にすることなく与野党一致して積極的に要求すべきです。
3) 母体行と農林系の責任の所在
母体行は、住専の経営権を支配し、経営者を派遣していました。
住専は実質的な子会社であり、その経営責任は極めて重いと考えます。
単なる貸し手である一般行や農林系と、経営責任がある母体行の責任を
同列に論じることは適切ではありません。
特に過去の再建計画の中で、農林系の債権引き上げ要求に対して、
それを押し止めるなど、母体行が責任を持つ形で残高維持を求めてきた経緯があり
その社会的道義的責任は重いと考えています。
いままでの再建計画の中で金利面で母体行ゼロ%、一般行2.5%、農林系4.5%
という格差を設けたことや、農林系の資金を優先弁済してきたのも、そうした経緯
を踏まえた措置であります。
4) 金融行政の責任と改革の方向性
大蔵省は、住専の立ち入り検査権限をもち、経営状況を十分把握できる立場に
ありながら、住専の経営がここまで悪化するのを防げませんでした。
その監督責任はきわめて重大であると考えています。
大蔵省は住専の母体行が住宅ローンに進出し、住宅金融公庫の融資が拡大して、
個人ローン市場から住専が締め出され、またバブルの過程で不動産融資に傾斜
していくのを知りながら放置してきました。
さらにバブル退治のための不動産融資「総量規制」の網をかけず、結果として
農林系の住専向け融資の拡大を招き、住専の傷口を広げました。
住専の再建計画にも深く関与し、平成5年の第二次再建計画の際には、
民間から「住専を整理せよ」との意見もあったのに、結論としては
農水省との間で覚書を交わして、再建計画を結ぶよう行政指導しました。
この時母体行からは念書まで取っています。
この時の計画は地価が上昇して行くことを前提にしたかなりずさんなものでした。
実際には、地価はさらに下がり、再建計画は完全に破綻してしまいました。
大蔵省から住専への天下りが多かったことも、監督者の眼鏡を曇らせていたの
ではないでしょうか。
こうした過去の護送船団行政の反省、教訓を踏まえて、
金融検査や監督を第三者機関で行うとか、
公務員の天下り禁止期間を延長するといった改革を
断行すべきです。
5) 政治の責任
行政の責任は、それを十分に監督、指導できなかった政治の責任でもあります。
過去の金融行政の総点検にあたっては、政治の責任も避けては通れない重要な
課題です。
なぜ、政策判断を誤ったのか、判断材料としての情報を的確に入手していたか、
役人の知識経験に依存しているからこんな結果になったのではないか、
政党として、政治家個人として真剣に反省すべきです。そして将来に残るべき
教訓や原則を必ず明らかにすべきです。
そのために歴代の首相や蔵相、自民党の幹部にも国会で事実関係を明らかに
してもらう必要があります。
そして大切なことは住専問題に与野党なしということです。
総量規制や三業種規制が住専問題の大きなきっかけであることは明らかです。
確かにそのときの大蔵大臣は橋本さんであったかもしれませんが新進党の幹部
のみなさんも小沢党首を初めとして自民党の政策中枢にいたことは
紛れもない事実です。この問題を政争の具に使えば使う程、真相究明は
霧の彼方に消えてしまいます。マスコミも含めて、バブルの奔流に巻き込まれて
しまった当時の状況を冷静に思い出しながら、未来に教訓となる真摯な因果関係
分析とバブルの総括をすべきだと考えます。
● 住専問題への党としての取り組み
さきがけは、昨年6月の新三党合意の時に、不良債権問題、特に住専問題の
早期解決を主張し、合意に盛り込ませました。
参院選中も、公的資金の導入を辞さずに不良債権問題を早期に処理すること
を提言しました。武村前蔵相が「敵前逃亡」などと言われますが、
もし本当に逃げようとしていたなら「処理策」の決定自体を先送りしたで
ありましょう。
まさに逃げず、責任転嫁せず、先送りせず、国民の圧倒的な批判の声を充分に
予期しながらも、自らのリーダーシップで住専処理に取り組んできたのが
武村さんであったと思います。
今回の住専処理の決定は、確かに責任問題の追及が前にあったほうが
国民の理解は得られやすかったと思います。しかし,米国でもS&L
(貯蓄貸付組合)危機の時には、先に20兆円の財政支出を決めて、
後からRTCで民事・刑事の責任の追及を行いました。
補正予算・本予算・税制が一体となって資産デフレを解消しようと
最後の戦いを挑んでいるのが現在です。金融システムが元気にならなければ
積極的な貸し出しなど起こりようもなく、景気回復はまた足踏みしてしまいます。
住専問題を当事者まかせにしたり、また法的処理に委ねたり、いずれにしても
時間はかかります。今年一年こそ勝負の年だと思います。来年はありません。
住専問題の泥沼から一刻も早く離陸することが現在の最重要課題だと考えます。
ご理解いただければ幸いです。
なお、党としては、住専問題・金融改革プロジェクトチームを設置して、
金融行政の総点検や住専破綻の種々の責任の明確化、金融行政改革案作りなどを
早急に検討立案して参ります。
ファクシミリや電子メールによる「住専110番」を開設して、
住専の問題について広く情報を集め、国会審議で追及すべき点を洗い出して
いきたいと思います。皆さんのご意見をお寄せ下さい。