国会通信 No.239
【住専問題PART3】
1996/2/13 (マンデーレポート第239回の要旨)
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【先週の出来事】
●5日 (株)SSCT(システム・ソリューションセンターとちぎ)訪問。
新しいネットワークの可能性について意見交換。
同社は、新しいソフトの適合性検査等の業務を行う
栃木県及びジャストシステム等の共同出資による第3セクターの会社。
●5日夜 FNETDの迎撃オフに参加。
長崎の茂晴さんを迎え、NETDの今後について相談。
●7日 さきがけ総務会。
NETDに今年になってから書き込まれた住専問題についての
皆さんの書き込みを全てコピーし、武村代表ほか出席者に配布しました。
●7日 外務省の担当者からヒアリング。「在外邦人の投票権問題」について
●9日 月例経済報告に出席。事実上の景気回復宣言。
中小企業の設備投資回復の遅れについて質問。
●9日 幸福の科学対小林正憲の損害賠償請求事件につき、
被告小林氏の代理人弁護団の一員として東京地裁に出席。
(現在私が弁護士として持っている唯一の事件。
宇都宮に建設予定の教団建物に対して反対運動を行っている
「桜住民の会」代表小林正憲弁護士が、教団から1億円の
損害賠償を提起された。その第1回口頭弁論である。)
【住専問題PART3ー破産手続きは万能ではないー】
住専問題について、多くの皆さんからご意見を頂き有り難うございます。
そのうち、住専を法的処理により整理すればよいのでは、という意見が
多数寄せられています。しかし、以下の理由で破産手続きによっては
住専問題は解決できないと考えます。
1 破産手続きは清算手続きである。
住専7社のように、破綻した会社の法的処理は、再建型の会社更生法等の
手続きではなく、清算型の破産等の手続きによるしかない。
この手続きは破産財団に帰属する会社財産のプラスとマイナスを
破産管財人の手により確定させ、抵当権等の優先権を持つ債権者に
まず優先して配当し、残余財産は債権者に平等に配当して手続きを終結する。
したがって、この手続きの経済的な意味は、損失の顕在化という以上のもの
ではあり得ない。
住専7社を破産させた結果例えば農協系の5.5兆円のうち3兆円以上の穴が
現実にはっきりあいたことが確定するだけであり、結果として損害発生の
先送りをすること以上の意味は持たない。
手続きが続行する限り、欠損が顕在化し、預金の目減りに対する恐怖感から
預金者が一斉に窓口に殺到する恐れは解消されない。破産手続きにしたから
と言って取り付け騒ぎの危険は一向になくならないのである。
また、以下の理由で破産財団になったからと言って債権回収の実があがる
保障はなく、むしろ低下する危険すらある。
2 破産手続きによる債権回収機能は現実には不十分である。
破産財団の管理は、裁判所がするわけではない。
破産裁判所がすることは手続きの開始決定、破産財団の流失防止のための
保全命令等手続きの節目節目でチエックするだけでしかない。
実際の破産財団の債権回収は、破産管財人が中心になって行うのである。
しかし、管財人という名前は実に厳めしいが、その実態は町の弁護士であり
事務所のスタッフが手足になって法的手段を駆使しての回収努力でしかない。
住専7社、12兆と言われる巨額な債権の回収を、仮に日本の1万数千人の弁護士
と弁護士事務所のスタッフが総力を挙げたとしても短期間でどの程度の回収の実が
あがるであろう。私には寒々とした想像しかできない。
破産法は、そもそもこんな膨大な債権処理を予想もしていなかったであろう。
3 破産手続きは相当の時間がかかる。
破産手続きは以下の理由で相当の時間がかかりそうである。
1) 破産法や、執行法上の不備
上記のように、破産法は破産財団の債権回収の責任を破産管財人に委せている。
したがって、現在政府が提案している預金保険機構に裁判官OB、検察、警察、
不動産鑑定士等を終結させ、債権回収チームを作って回収に全力を挙げるなどと
言ったことはとてもできない。もっぱら、管財人に選任された弁護士の個人的努力に
委せられることになる。12兆の膨大な債権回収にはまったく心細い状況である。
2) 農協対母体行の責任争い
仮に破産手続きに入るとなったとすると、当然農協系統は母体行に対し
損害賠償請求を起こすであろう。農協側の言い分では、住専への融資については
母体行が全面的に責任を負うべきであると考えているから、当然である。
そして、この関係を当然破産手続きの中でも反映bケるような法的主張を
してくるであろう。となると、破産手続きは、農協・母体行間の損害賠償請求が
決着するまでは、横並びで進めざるを得ない。これも破産手続きが一気呵成に
行かない理由となる。
3) 手続き自体、景気回復を遅らす原因になって、さらに競売物件の処理が遅れる。
破産手続き自体、以上の用に時間がかかる。そして、時間がかかればかかるほど、
景気回復は遅れる。
そのため不動産市場は活性化されず、なかなか競売物件を落札する人が現れず
担保不動産の競売手続きは進まない。このような悪循環が当然予想される。
4 破産財団に帰属することにより、支払いは凍結される。
破産手続き続行中は、財団からの支払いも停止される。これによって、
もっとも困るのは、現在のところ第2次再建計画によって毎年4.5%の
利息が支払われている農協系である。
住専7社に対する農協系の5.5兆円の債権について年間4.5%であるから
金額にすれば2500億円。現在まで住専からこの利息が支払われてきた。
この利息は経常利益よりも上回っているのだから、これが支払われなく
なると農協系統の半分近くが赤字となるなど大ピンチ。
さらに前記のように、破産手続きが終結することを待っていても、
結果として、5.5兆円の半分以上が欠損金になることは充分予想される。
将来への希望は薄い。言うならば今後どんなに営業努力をしても欠損が
回復できない死に体状況となると、預金者はどんな心理になるだろうか。
現在でも少しずつ預金はシフトされていると言われる。私にとっては、
破産手続きは収拾のつかない混乱の可能性を倍加する以外のなにものでもない
5 農協は潰しても良いか。
農協を潰しても混乱は生じないのでは、との意見もある。しかし、現実に
農協には、657万人の預金者が存在しており、この人たちの存在を到底
無視することはできない。
金融システムは言うならば社会の公共財である。仮に、破綻した金融機関が出現
したときは、国家は預金者救済のために最大限の努力をしなければならない。
67兆円といわれる系統貯金が、破産手続きの結果3兆円近く欠損になるとしたら
預金者はどう行動するだろう。もし私が預金者なら、資金運用の失敗により
自分の預金が3/67もあながあけられるのはたまったものではない。当然
引き下げにかかるであろう。この心理から取り付け騒ぎが起こったとき
結局の所、預金者保護のために今以上の財政資金を投入しなければならない
のは目に見えている。
農協もまた、日本経済の一部であり、農協の短兵急な破綻は間違いなく
他の経済に波及する。農協の改革は、当然やるべきである。
しかし、秩序ある改革を目指すべきである。