国会通信 No.242


 【司法強化のために】

1996/3/4 (マンデーレポート第242回の要旨)


【先週の出来事】 ●26日 宇都宮税務署 確定申告状況を視察。 ●27日 拡大政調。大蔵3法他。 ●28日 総務会。 ●29日 拡大政調。NTT分割案について討論。 ●1日  拡大政調。民法、民事訴訟法改正案について議論。 【司法の強化のために】  1) 先週拡大政調で法務省から民訴法改正案について説明を受ける。   特に「文書提出命令」について議論紛糾。提案通り認めるわけにはいかない、   として修正を求める意見が多数出た。結論は次週に持ち越し。 2) 今回の改正の4つの骨子  ●争点整理手続きの充実、整備(裁判のスピードアップ):   争点や証拠の整理を集中的に行う「準備的口頭弁論」、   現行の弁論手続きをより充実させた「弁論準備手続」等の手続きを新設、   裁判の迅速・適正化を図る。   ●証拠収集手続きの拡充・整備:文書提出命令の対象になる文書を追加。   必要な情報を直接相手方から取得する「当事者照会制度」を設ける。  ●少額訴訟手続きの創設(裁判のスピードアップ):   30万円以下の金銭支払い請求事件につき、   1回の期日で審理を終え即日で判決言い渡しをできるように   する特別の訴訟手続きを新設。   また、その際裁判所は分割払いや支払期限の猶予を   つけることもできることにする。   ●最高裁判所に対する上訴制度の整備:   最高裁判所への上訴が濫用されぬよう整理。  ●平仮名、口語体化 3) 最大の問題は「文書提出命令」についての改正内容:   文書提出命令を一般化した点は評価できるが、   その例外として「公務員の、職務上の秘密に関する文書で、   その提出について監督官庁が承認をしないもの」については   文書提出義務の対象外とされていることは、多いに問題である。   さらに文書提出義務の存否を審理する際にも、この文書を除外しているから、   結局役所がいやだと思えばその理由を示すまでもなく   提出しないでも済んでしまう。 4)理由  ●証拠の遍在を正し、行政訴訟の場合の当事者対等の  原則を実質的に確保するためには、原則的に公文書の秘匿は  認められるべきではない。 ●現代型訴訟(公害、薬害、医療過誤、消費者訴訟)においては  挙証責任を負わされる市民は、行政に対し圧倒的に不利である。  今回のHIV訴訟でも、厚生省の資料が出てこず原告は多いに苦労した。  市民の側の立証を助けるためにも、  行政資料の公開の範囲を多いに拡大すべきである。 ●「職務上の秘密」と言っても、「秘密概念」が不明確。  結局役所が「それは秘密だ」と一方的に言えば、  なんでもかんでも提出拒否できることになり、今回の改正の趣旨と逆行する。 5) 問題は他の条項とのバランス。 ●司法対行政の関係において日本の訴訟法は、驚くほど官優位。  法務省は、このバランス論から、修正はかなり困難と難色。  EX  書証に対する人証の場合、 272条 公務員に対する証人尋問→当該官庁の承認。 273条 国務大臣に対する 〃 →内閣の承認。 274条 国会議員に対する 〃 →院の承認。 ●承認拒絶の理由について明らかにする必要はないし、  これについての意義申し立てて続きもないことから、  そもそも日本の司法は基本的に行政や立法に優位する  存在ではないことが明らかであろう。  このことは、司法官が有権者の選挙による審判を受けていない  ことすなわち司法権の民主的裏付けがないことを理由にした  謙抑的な姿勢から来ているのであろう。  (司法ファッショへの懸念・恐れ) ●しかし、現実には現代型訴訟のような官・民間の挙証力の  圧倒的な格差を生じてしまっている以上、  この民訴法は全体的に改めていく必要がある。 6)修正の方向について ●裁判に提出を拒むことのできる文書はあってもよい。  例えば外交上の機微にわたる文書や、プライヴァシーなど。  しかし、これらですら状況によって秘匿できる幅は変動するはず。 ●したがって、「公益ないし第3者の秘密保持の必要性が  具体的に認められる場合」は提出拒否できるとし、  「拒否理由の正当性」についての立証は役所の側が負うこととし、  また正当性の判断自体司法が行えるよう法案を修正すべきである。