国会通信 No.252
【歴史資料センターの行方】
1996/5/13 (マンデーレポート第252回の要旨)
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【先週の出来事】
8日:さきがけ大蔵改革部会
大体の方向性決定。
9日:外交・防衛部会
いわゆる極東有事について、外務省からヒアリング。
9日:与党政調に対し「50年プロ再開」を要望。
10日:平成8年度予算成立。
【歴史資料センターの行方】
1 橋本政権になって、対応の遅れが目立ってきているのが
いわゆる戦後問題。先日も「女性のためのアジア基金」の
呼びかけ人の一人三木睦子さんが、辞表を提出、その理由は
橋本政権の従軍慰安婦問題についての消極的な対応に対する
抗議の意味と、報道されていた。
2 橋本政権は以下の通り、積極的な取り組みを約束したはずである。
■参考■ 橋本政権発足にあたっての三党合意
★第14項★「昨年、戦後50周年の節目に当たり歴史の教訓・反省に学び、
未来を望んで人類社会の平和と繁栄の道を歩む決意をした。
今後戦後処理問題については歴史資料センターや子ども図書館の設立、
平和友好交流計画の推進、女性のためのアジア平和基金への支援・協力
その他解決すべき諸問題に着実に取り組むとともに、
アジア諸国民との信頼関係を確立する。
また、中国遺棄化学兵器の処理に適切に取り組む。」
3 私は、本年3月からさきがけの「戦後50年問題プロジェクトチーム」の
座長を荒井聡氏から引き継いだ。
就任早々の座長会議での議論は、これを存続すべきかどうか議論。
私は存続を主張、社も同じ。
自民内には強い幕引き論がある模様。
議論の末、責任座長役の自民党虎島和夫議員が以下のメモをまとめた。
●『今後の戦後50年問題の取り扱いについては、橋本政権誕生にあたって合意
された三党政策合意にのっとり、今後は、戦後50年問題プロジェクトとして
存続させることが望ましいとのことで、その判断については政策調整会議に
委ねることとした。』
現場のプロとしては存続すべきであるとの意向を強くにじませたものであった。
この趣旨を三党の政調会長からなる政策調整会議に報告、
しかし、結論は三座長預かりの先送りとなり、
現在まで棚上げになっている。
4 私は、以下の理由から、
早急に戦後50年問題プロジェクトチームを再開すべきであると考える。
その旨先週与党政策調整会議の現時点の責任座長伊藤茂氏に申し入れた。
1)今後の経緯を見極めなくてはならない項目の存在
●女性のためのアジア平和国民基金の募集状況もはかばかしくない。
お詫びと反省の意思をいかにしめすか結論が出ていない。
また呼びかけ人の辞任問題や、国連人権委員会における
クワラスワミ勧告が「留意」として採択された。
● 戦前の歴史の総括につながる歴史資料センターについても昨年
6月30日付の有識者会議報告書(下記 参考)が出て、
一定の方向が示されていながら、
依然内閣の外政審議室に預けられたまま、所轄官庁が決められず、
棚上げになったままでいる。
2)未処理事項の存在
恩給欠格者問題、北方領土における諸問題、シベリア等の戦後抑留者問題、
旧植民地出身の軍人軍属等の補償問題、いわゆる強制連行問題等の懸案事
項が残っている。
5 歴史の総括の重要性
● いまわが国は、クリントン大統領訪日、沖縄基地問題等を契機として、
集団的自衛権等の憲法問題、日米安全保障の新たなガイドラインの策定
等、歴史の転換点にたった重大な選択をする岐路に立っている。
● これらの詳細について論ずるのは別の機会とするが、
この際特に強調しておきたいのは、これらの問題と
「戦前の歴史の総括」は、相互に密接に関連している
と言うことである。
私は、極論すれば、戦前の歴史の総括ができないならば、
わが国は未だ憲法改正を提案する資格はないと考えている。
なぜなら、自らの過去を直視する勇気を持たない国民は、
自らの未来についても責任ある決定ができるはずがない、
と考えるからである。
■参考■ アジア歴史資料センターの設立について(提言・要旨)
(発表 平成7年6月30日)
(作成者 アジア歴史資料センター(仮称)の設立検討のための有識者会議)
1 設立の意義
センターの設立は、戦後50年を機に、我々日本人が世代の相違や立場の違いを
乗り越えて、近現代史における日本とアジアの関係を見つめようとする姿勢を世界に
向かって示すものである。アジア諸地域の人と歴史認識をめぐる対話を深め、来るべき
21世紀における日本と世界との共生の基盤を構築する上できわめて重要な意義を有す
る。
2 センターの基本的性格
センターは日本とアジア近隣諸国等との間の近現代史に関する資料及び資料情報を、
幅広く、片寄りなく収集し、これを内外の研究者をはじめ広く一般に提供することを
基本的な目的とする。
日本及びアジア諸国における関係諸施設・機関等のハブセンターとしての役割を果
たすとともに、国内のみならず国際的にも日本・アジア関係の近現代史に関する資料
及び資料情報を発信する。
3 センターの事業
(1) 基本的方向
センターは、以下の事業を実施する。
1) 史料、文献・図書等の資料の収集、保存、整理、検索及び利用に関する事業。
2) 上記資料の所在に関する情報の収集及び提供に関する事業。
3) 国内外の関係機関・施設との協力、情報交換等の交流事業。
(2) 資料の収集・保存・利用
●資料の範囲:史料(公文書及び手記・日記等の私文書)、文献・図書、写真、映画・ビ
デオ、オーラルヒストリー、裁判関係資料等。
●対象とする時代:19世紀中頃以降。当面の重点は20世紀前半。
●対象とする地域:日本を含む東アジア、東南アジア、大平洋諸島、オセアニアが重点。
●コンピューターによる検索その他の情報サービスの提供を行い得るようにする。
(3) 所在情報の収集・提供
● 国内外の関係機関等が所蔵する関係資料の所在情報を、それらの機関等と協力、連携
の
もとに収集する。
(4) 交流事業
● 国内外の公文書館、図書館、資料館、研究機関等との協力関係を構築することにより
資料や情報の収集、交換を進める。
● シンポジウムなどの会議の開催に用いたり、内外の研究者等の交流がはかれるような
施設を整備する。
(5) 対象とする利用者
● 内外の研究者、ジャーナリスト、学校教育・社会教育関係者等が中核となろう。
しかし、外国人も含め広く一般に開放された施設であることが望ましい。
4 センターの組織運営
(1) 組織
国の機関とするのが望ましい。
(2) スタッフの高度な専門性の確保
● 資料収集を目的とするポスト・ドクトラル等の専門研究者を確保する体制を確保する
。
● 専門的知識を持った司書及びいわゆるアーキヴィストを必要数常勤として確保する。
(3) センター運営への助言
● 収集すべき資料分野の選択及びセンターの運営に関しては、広く恒常的に内外の専門
家の助言を求めることが望ましい。
5 速やかに開始すべき事業
● センターに所蔵されるべき資料及び資料の所在情報の収集と、諸外国の関係施設・機
関との協力関係の構築は、センターの施設の完成を待つことなく、できる限り速やかに着
手。
● こうした予備的事業を遂行するためにセンター長の選任など必要な体制作りは、でき
るだけ早い機会に行われることが望ましい。
● 特に、散逸又は劣化の恐れのある資料及びオーラルヒストリーは速やかに収集する。
6 周辺環境の改善、改革
センターがその機能・役割を十分発揮するためには、以下のような周辺環境の改善、
改革を要する。
1) 歴史記録に関する国民的意識の喚起
2) 歴史記録の中で中心的な部分を占める公文書の扱い、特にその公開の問題。
3) 司書、アーキヴィスト等の専門職種の人材育成と社会的認知。
4) 公文書を作成する立場にある各省庁等国の機関の理解と協力。
おわりに
提言が契機となって、国民各層の間にセンターの設立をめぐる論議が深まり、国民的
な総意にささえられてセンター設立に向けての動きが高まることを期待する。政府に対
してはセンター設立構想の速やかな実現と資料及び資料情報の早急な収集に向けて必要
な措置を積極的にとられることを切望する。
★有識者会議の主なメンバー
座長 石川忠雄(前慶応義塾長) 座長代行 細谷千博(国際大学教授)