国会通信 No.254


 【選挙制度見直し論議】

1996/5/27 (マンデーレポート第254回の要旨)



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【選挙制度見直し論議】
● 社民党の有志が、現行の選挙制度の見直しを議員立法で
行おうと活動中。
この問題について党議拘束をはずそうと提案している模様。
● 提案しようとしている制度は、中選挙区連記制と言われる。

● 私は、現行の小選挙区比例代表制を決して完璧な制度と考えてはいないが、
大変なエネルギーを費やして作った制度である以上、一度も実施せずにお蔵入りと
することはできないと考えている。

● ただ、このような議論が何度も蒸し返されるのは理由がある。
それは、現行の選挙制度が3年前に決定された際も、
またそれ以前の自民党の政治改革本部の議論においても、
選挙制度を決める際の基本的なポイント自体が明瞭に
認識されていなかったからである。

● 不完全な人間社会の作り出す制度である以上ベストはあり得ない。
相対的に有権者からベターと認識されるものを選択せざるをえない。
さらに、政治の世界には二律背反の理念が存在して当たり前である。
例えば、「強いリーダーシップの発揮」と「多様な意思の反映」は
往々にしてぶつかり合う。
従って、どの制度を選択しても必ずプラス面とマイナス面が混在する。

● 要は、有権者が
1) 制度の持つ功罪を明瞭に認識しつつ、
2) 自国の政治のスタイルをどのように整えるのかとの明瞭な目的意識を持って、
3) 有権者各自の選択によって決定すること
が理想であろう。

● しかし、そもそも選挙制度論議はリクルート事件から端を発した。
金権腐敗を断ち切るとの目的はもちろん重要である。しかし、制度論は
それだけに止まらないはずである。もっと多面的な議論が必要なのに、
なかなかそこまで及ばなかったのは、出発点が不幸であったためである。

● また、現在の小選挙区・ブロック比例並立制の新制度決定も
細川政権と強力野党の自民党との厳しい対立の中での、切迫した
状況での妥協の産物であったため、上記1)ないし3)の理想を
考慮する余裕など全くなかった。

● だからこそ政治家にとっても、国民にとっても消化不良、了解困難の
理念不在のしろものとしか認識されないのである。
そのために、何度も何度も論議が蒸し返される。
これも日本の政治の決定能力の弱さの象徴である。

● この議論の際に参考になるのはニュージーランドの議論である。
同国は1992年、選挙制度を2回の国民投票にかけて決定していった。

第1回目は「現行制度を変えるべきか、どうか」。
そして第1回目で「変える」の賛成が84%であった(投票率は53%)ので、
第2回目の投票では、4つの制度を提案してどれを選ぶか投票し、
70%を獲得して断然1位となった制度(混合議席比例制
→ドイツの併用制に似た制度)に決定した。

小国ながら、実に整然とした決定をしたことに大変な敬意を覚える。
わが国の混乱ぶり、政治家の露骨な自己保身の浅ましさを見るとき、
恥じ入るばかりである。

(なお、同国の国民投票の内容の詳細については、
多少長くなるので、11番会議室にアップする予定です。
興味のある方は、そちらもご覧下さい)

● また、国民投票の際、同国は有権者に対して
「判断のポイント」を示したがこれは大変参考になる。

これこそ、いままでの日本の選挙制度論議の中で欠落してきた
政治制度論の基本であり、わが国の政治の状況を客観的に
判断する場合の基本的座標軸になるものである。

● 以下簡単に紹介する。

1) 正当性 Legitimacy
=選挙に敗北した側も受け入れられる制度か。
その選挙制度を「可能なかぎり最善の」国家運営の基礎として
国民全体が受け入れられるか

2) 政治的統合性 Political Intigration
=国家を統合させるか分裂させるか。
異なる考え方をより尊重させるか。

3) 政府の実効性 Effective Goverment
=政府はその立案した政策を達成できるか。
又は議会で多数を得ていないために倒れるか。

4) 議会の実効性 Effectiveness of Parliament
=議会が有意義な方法で政府の政策に挑戦し立案できるか?
内閣が議会を支配することになるか?

5) 公正さ Fairness
=議席の配分と得票のバランスはどうか?

6) 選挙区民の代表 Representation of Constituents
=国民と議員の結び付きを強めるか?
選挙区民が、選挙区選出議員にその考えを伝えることがどの程度容易か?

7) 有権者の参加 Voter Participation
=有権者がその制度の仕組みを理解するか? 
議員を選ぶ方法が直接的なものか?
有権者が意図した結果を生じさせることが困難か?

8) 政党の実効性 Effective Political Party
=制度が、政党を強めすぎたり弱めすぎたりしないか? 
有権者の意見に耳を傾けそれに従って行動するのを促進するか?

9) 少数民族及び特別なグループの代表

10) マオリ族の代表

● わが国の選挙制度論議についての基本的検討事項が列挙されていると
考えるがどうだろうか。
かつての自民党での政治改革論議のさなか、私はこのニュージーランドの議論を
ベースに国民投票の提案をしたことがあった。しかし、一顧だにされなかった。
激しい政争のなかで、もっとも肝心な基本の議論を省略して、
底の浅い結論しかだしえないわが国の政治的状況、
その付け回しを将来に回すのはそろそろ止めにしなければならない。