国会通信 No.256


 【耐え難き断層】

1996/6/10 (マンデーレポート第256回の要旨)



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【先週の出来事】
●4日 拡大政調 (建築士法改正案、優生保護法改正案等につき議論)
●4日 衆議院本会議 (上がり法案5件の採決)
●5日 総務会 (主な論議 ★大蔵省改革 ★民訴法改正案等)
●6日 さきがけ行革本部
 ★与党大蔵省改革PTの伊藤座長修文について検討。
  「案文修正」の名を借りた実質改悪に怒りを覚える。
●6日 NPO部会 ★与党三党の調整困難、さきがけ独自案を出すことで意思統一。
●7日 衆議院本会議 (金融6法案可決。新進党新井議員造反、離党。)
●8日 中国44回目の核実験を行う。
 さきがけは今年度の無償援助の凍結、第4次円借款の再検討を提案。

【耐え難き断層】
● 先週は、大蔵省改革問題、民訴法改正問題、NPO法案の取り扱い
についてそれぞれ大詰めの議論がなされた。
そしていづれも与党3党での意見調整が困難なことを実感した。

● 上記3テーマに共通するのは「日本のシステムの根本的改革」である。

1)「大蔵省」→高度経済成長を実現した官僚主導型政治の中心をなしたのが
 大蔵省。世界第二位の経済大国となったわが国にとっては、この官僚主導型
 システムは、完全に制度疲労を起こしている。
 
 巨大な経済を大蔵省が制御できると思っているのが基本的な間違い。
 官僚主導から、市場原理主体のシステムに変更すべきである。

 にもかかわらず、いままでのシステムを無理矢理続けようとした
 結果、さまざまな弊害が発生。住専問題はその1例である。

2)「民訴法改正」→日本の裁判所は、実はかなり行政に弱い。
  憲法の統治原理である「三権分立」が、民事訴訟の現場では絵空事で
  しかないことを明瞭に知らせてくれたのが今回の「薬害エイズ」問題。

  公文書の提出命令における、司法の行政優位を確立すること、
  それによって司法の権限を強化することこそ、これからの市民社会のために
  最重要な課題である。
  
  訴訟法改正という手続法の問題ながら、その本質は「司法改革」である。

3) 「NPO」(非営利法人)→日本の社会構造に密接に関連したテーマ。
  なぜ、日本の民主主義の力は弱いのだろう。
  それは、自主的かつ自立した市民社会の層が薄いからである。

  官僚がらみの社会と、大企業がらみの社会に、対置しうる市民の
  横断的な層が、民主主義の力の源泉。
  この市民の横断的な活動の基盤が、非営利団体に法人格を与える法律。

  現在の民法は非営利団体の一部のみを、「公益法人」として法人格を与えている、
  しかも、法人格は主務官庁の「許可制」としているため、役所が間接的に
  市民団体をコントロール。ひどいのになると役所の天下りの受皿化。

  この関係を断ち切ること、そして市民団体に独自の足場を与えるのが
  NPO法案の目的。この問題は、根本的な社会構造改革に通じている。

● 以上の三大テーマに共通しているのは旧来型の日本のシステムの改革と
  言うことである。そして私はこの改革の共通の目的が市民主体の
  政治・経済・社会の確立であることから「新市民革命」と表現している。
  
● この3テーマの与党内での取り扱いについて先週それぞれ一定の方向性が
 出てきた。

1) 大蔵省改革:後退すること著しい。住専問題の国民の理解をえる実質条件が
 大蔵改革だったはず。しかし、大蔵省の周到な根回しの結果、自民も社民も段々
 後退。

 そんななかでさきがけの担当者五十嵐文彦議員が孤軍奮闘、
 ★金融6部局を明記した上で「機構改革」に踏み込まねばならない、
 ★「金融」と「財政」の分離こそ最大のポイント、
 ★方向性を決定するのは次期通常国会の前まで、
 等のポイントをようやく押し込んだものの、文章修正のレベルで
 巧妙な書き換えがなされようとしている。
 自社とさの間に耐え難い断層ができつつある。

2) 民訴法改正:文書提出命令の対象を拡大・一般化した点は残しつつ、
 秘密公文書の取り扱いについては、情報公開法と整合性をもたせて改正することで先送
り。 
 法務委員会で修正可決した。

 議論の過程で、さきがけはこの問題を統治機構の根幹にかかわる最重要課題と把握、
 頑強に修正を主張、政府よりの自民、なぜか消極的な社民との断層が徐々に顕在化。

3) NPO法:結局自民と社・さの調整がつかなかった。
 市民団体を信頼せず、法人格を悪用することを危惧し、
 また政治的発言を最小限に押さえ込みたい自民党との間では、
 そもそも基本的な価値観が違うことを痛感。
 
 与党一致の法案を提出することを断念、三党がそれぞれ独自案
 を提出することになった。

● 21世紀の日本社会がどうあるべきか、という根本命題について自社さとの
 間に、耐え難い断層がいよいよ走ってきたのが会期末間近の今週であった。
 日本のシステムを変える新市民革命こそ、豊かなみずみずしい21世紀の日本
 を創造するために必要である。鳩山新党の意味もそこにある。

● 鳩山新党のテーマは「友愛」や「美」と表現され、その非政治的な語感から
 ソフトクリームなどと揶揄されている。しかし、そんな単純な意味ではない。
 この観念にはもっと深い意味がある。

 「友愛」にしても「美」にしても、自我が確立した市民社会を前提に初めて
 誕生する。自主的かつ自発的な精神にして初めて人類共通の博愛の観念が生まれる。
 わが国の社会は、果たして普遍的な愛をはぐくめるほど成熟しているであろうか。
 また障害者や高齢者、年少者、外国人等の多様性を許容できているだろうか。
 私自身の答えはNO!である。そして、この現状認識に立った上で21世紀の最大の
 わが国のテーマを考えれば、それは「自我が確立した市民社会」を確立することである。

 従って、鳩山新党の「友愛」・「美」の政治的な表現は「新市民革命」だと理解してい
る。
 先日鳩山さんにそう進言したところ、彼は笑顔でうなづいていた。