国会通信 No.310


 【保安庁訓令9号廃止は撤回すべきである】

1997/8/11 (マンデーレポート第310回の要旨)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【保安庁訓令9号廃止は撤回すべきである】  ●橋本総理の訓令廃止の問題点   私の指摘するような危機感が感じられないのは、党内のみならず、他の政党や   マスコミにも共通している。   その原因を想像すると、   1) 内局不信 : 中央官庁に対する一般的な不信感、さらに軍事という             専門分野での知識の欠落、過去における防衛政策面での             評価の低さ、などによって「背広組」を「制服組」に             優越させる必要性がなくなっているのではないかとの             認識が高まっている。   2) 現状追認 : すでに軍事技術の専門的な分野においては、制服組と政治             との接触は普通に行われている現状にある。橋本総理の             訓令廃止は、この現状を追認したにすぎない。             したがって目くじらたてることもない。 3)  保安庁訓令は古すぎる : 廃止したのは自衛隊の前身である保安庁時代の                   ものであって古すぎる。防衛庁になって機構も                   変更、今さら訓令を維持する必要はない。     、、、、、、等々が問題を過小視する根拠かと想像する。   しかし、これは問題の本質がわかっていない意見である。   私は内容の当否を論じているのではない。内容にしぼってみれば、   今の自衛官がもっと積極的に防衛政策立案に必要な、軍事的、   科学技術的、側面での政治への協力の場を作るべきであると考えている。   しかし、私が問題とするのは内容の当否よりも、手続きなのである。   いかに正しい内容のものであっても、手続きが無視され、総理が   独断専行するのはこと軍事については特に警戒すべきである。  ●保安庁訓令訓令9号の廃止は適正手続き違反である。 1) 「政治的統制」と「民主的統制」    シビリアンコントロールは重要な二本の柱からなっている。    一つは、政治と軍事の分離、そして政治の軍事に対する優越を内容とする、    「政治的統制」の原則であり、    もう一つは統制(=コントロール)が民主主義の手続きや民主主義の原則に    則って行われること、すなわち「民主的統制」の原則である。 2)橋本総理の訓令廃止は、「政治的コントロール」ははずしていないが、   重要な「民主的コントロール」に明瞭に反している。 3)「民主的コントロール」とは、軍の統制について広く民主主義の原則に   則って行うことである。民主主義の基本はまさに「法の適正な手続き」   (=デユー・プロセス・オブ・ロー)のもとで行うことであり、   内容の当否と同時に「手続き」が重要である。 4)防衛庁のシビリアンコントロールについては   昭和40年に国会に対し、同名の文書が提出され、そのなかで   「内局の幕僚監部に対する優越」が明瞭に報告されている。   保安庁訓令9号は、さらに自衛隊に改変された後も自衛隊に対する   規範として、改めて国会に報告され、国会の論議を経ているのであって、   決して大昔のことではない。   今回の総理の訓令廃止は、この国会報告の事実を全く無視したものである。 5)意図的なプレスリリースの遅れ   45年間続くシビリアンコントロールの柱を廃止するといった   重大な事実であるにもかかわらず、マスコミに発表したのは、   廃止=6月30日、発表=7月22日という意図的な遅らせ方である。    この間、自衛隊救援機のタイへの派遣問題が世間に注目されており、    それと併せて論じられるのを恐れたのか、はたまた、救援機派遣に    消極的であった自衛隊の協力を得るための取引であったのか、    あるいは救援機派遣への世論の反発が少なかったのでここぞとばかりに    廃止したのか、とにかく重要な事実を国民に伝えるのを22日ずらしたのは、    実に姑息な感がする。   ●以上の観点から、総理は直ちに保安庁訓令9号の廃止を撤回すべきである。   また民主党も、この問題について党として明快な対応をすべきである。   さらにこれを契機にして海外の活動が飛躍的に高まる自衛隊に対し、   新たなそして緻密なシビリアンコントロールのシステムそして関連各規定の   整備に全力を注ぐべきである。