国会通信 No.324


 【不況と財政赤字】

1997/11/17 (マンデーレポート第324回の要旨)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【先週の出来事】 11/10 民主党栃木 幹事会 開催。  /13 プロジェクト2010     講師:須藤修 東大社会情報研究所 教授    「デジタル革命と電子マネー」について議論。    電子商取引の発展が銀行をはじめとして経済のあり方に    大きな影響を及ばすこと、それに伴って「共通鍵方式」や    「公開鍵方式」といった暗号方式の開発に欧州、アメリカが    全力をあげている状況、さらに「公開鍵を保管し、身元確認を    する認証局」の設置が重要であることなど報告される。   【不況と財政赤字】 1  日本経済は依然として元気がない。   将来への展望のなさ、自民党の景気対策への失望感等が重なって   株式、円、そして債権の3つの下落が重なった、いわゆる「トリプル安」が   一段と進んでいる。  14日(金)の状況を見ると ●株式   日経平均(終値,円) 15,082.52円 ●円相場  東京(17時,円)  125.74-76 ●債券   東証・大口(終値,%) 1.635  であった。  バブル崩壊後の日経平均株価の最安値は1万4309円であったので、まだ  底が見えていない状況である。 2 地元を歩いてみても不況感は大変強いものがあり、先週も地元では大手の企業が   不渡りを出したのでは等の噂がまことしやかに流れていた。橋本総理は、   「財政構造 改革こそ最大の景気対策」とがんばっている。   この橋本総理の考え方は、「財政は、現在主要先進国中最悪の危機的状況に陥って   いる」(「財政構造改革の推進について 平成9年6月3日閣議決定)に基づいて   いると思われる。   しかし、日本の財政状況は果たして「先進国中最悪」と言うほどのものなのであろ   う か。   きびしい財政状況を必要以上に印象づけることは「財政支出の抑制」を至上命令と   考えている大蔵省の政策的誘導ではないのか。   そしてわが国の状況を必要以上に悪く思わせることによって、国民の消費意欲を   さらに冷え込ませる結果になっているのではないかと思う。 3  7月12日付の読売新聞の記事   (エコノeye「政府負債残高の不思議」山家悠紀夫)はOECDの   「エコノミックアウトルック97年6月」を紹介しているが、その内容には   大変興味深いものがある。   政府の「総負債残高」の対GDP比では確かに「最悪」かもしれないが、   「純負債残高」の対GDP比ではそうも言えないのである。 ● 95年末の政府の負債残高は448兆円(「国民経済計算年報」97年版)であり、   これの対GDP比は80%を超える。   これは確かに主要先進国のなかでは最悪である。   (イタリアを除いて大半が60%台) ● しかし、政府が保有している金融資産(社会保障基金や外貨準備金など)も   相当な額に達している。   95年度末では政府の金融資産の残高は394兆円(同上)。   負債から資産をひいたものが「純負債」であり、95年度末ではわが国の純負債は   54兆円となる。 ● この純負債残高の対GDP比を見ると、以下のように日本は主要国の中では   もっとも低くなっているのである。   ( 日本  =14.3%         フランス=39.3%   英国=44.2%  ドイツ=48.1%     米  国=49.2%) ● 資産だけを取り出して見れば、確かに日本の負債総額は主要先進国中最大ではある。   しかし、相当の金融資産も保有しているので、総合すれば先進国中、純負債残高の   GDP比は最小なのである。   このような状況にあることを政府はもっと的確に国民に伝えるべきである。   一方的な数字のみを強調し、しかも「最大」を「最悪」にあえて言い換えるなど、   かなり意図的なものを感じる。   4 さらに対外純資産(対外資産から対外負債をひいたもの)も91年以来日本は   世界第1位である。そして財政赤字はあっても経常赤字は日本にはないのである。   (日本=1270億ドル 台湾=931億ドル ドイツ=822億ドル    米国=766億ドル  日銀)                   外国から借金して経常収支を赤字にしてきた国とわが国は明らかに異なっている。 5 もちろん財政再建は重要である。しかし、わが国の財政状況を正確に伝えた上で   論議を進めるべきである。   来年4月からはビッグバンの第1弾としていよいよ為銀主義が廃止される。   これによって、相当量の預金が外国銀行に移し替えられるだろう。それは、   さらに一層の金融機関の貸し渋りを導き、運転資金をショーとした多くの   中小企業が倒産の危機にさらされることとなろう。   他方、規制緩和政策の重要なポイントである、情報通信産業を筆頭にした新産業の   育成は思うように進んでいない。   このような状況の中で必要以上に国民心理を圧迫するかのような政府の姿勢は   多いに疑問である。