国会通信 No.325


 【山一 自主廃業】

1997/11/26 (マンデーレポート第325回の要旨)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【先週の出来事】 1 山一証券は24日午前6時から臨時取締役会を開き、自主廃業することを決め、   大蔵省に営業休止を届け出た。負債総額は3兆円を超え、事実上、戦後最大の倒産   である。 2 山一は証券不況が長期化する中で、業績が悪化。さらに総会屋との不正な関係   も摘発され、急速に株価も下がっていた。21日にはアメリカの格付け会社が山一の   社債を「投資不適格」に格下げするなど、対外信用も失墜。   さらに、22日には2000億円を上回る巨額な簿外債務の存在が明らかになった。   このような状況の中で、ついに自力再建の道を断念、自主廃業に追い込まれる   こととなった。 3 24日午前には、大蔵大臣と日銀総裁があわただしく記者会見、   今後の方針を明らかにした。   まず大蔵大臣は、「投資家保護・会社資産の保全を図る」ための必要な   措置をとること、また金融システムの安定に向けて「あらゆる選択肢の   検討を指示した」として、公的資金の投入の可能性を検討することを示唆。   さらに、銀行、証券、保険の全般についてシステムの安定と信頼確保に   全力を挙げる考えを表明した。   また日銀総裁は、「日本銀行法第25条に基ずき、同社の顧客財産の返還、内外の   既約定取引の 決済、海外業務からの撤退等に必要な資金を供給する   (いわゆる日銀特融)」旨表明した。 4 迅速果断な対策を 1) まずは、情報の徹底した開示と関係者のきびしい責任追及を前提にした   上で、公的資金導入のシステムを早急に立ち上げるべきである。三洋証券、   拓銀そして山一と続く一連の金融システム崩壊は投資者、預金者、保険者に   甚大な被害を与えようとしている。預金者等の保護のためにも、日銀特融   のみならず財政負担を避けるべきではない。   80年代のアメリカが、貯蓄金融機関(S&L)の破綻処理のために   約1700億ドルの財政資金を投入した例にならうべきである。 2)以上の処理の前提には徹底した情報開示、そして関係者のきびしい   責任追及が不可欠である。   24日の山一証券社長の記者会見によれば、株主資本4,314億円につき、   約2,648億円の含み損および簿外債務があることが明らかにされた。   この巨額の簿外債務は、いわゆる「とばし行為」(株式を転々と移転させ、   その都度株価を相対で上昇させて利益を計上していくやり方。株価が低迷している   と、最後に相場よりも高い株価で買い戻しせざるを得ず、巨額の含み損を抱え込む   結果となってしまう。)によるものが大半であり、モラルハザードの典型である。   関係者の責任はきびしく問われなければならない。   またこのような巨額の不正行為が行われながら、市場や投資家側から   実態をチエックできないのは充分な情報公開が行われていないからである。   情報公開制度の早期導入は市場の不安心理を取り除き、日本の市場への   信頼を取り戻すためにも緊急の課題である。   さらに、「法人の山一」として有名な同社が、巨額なとばしによる   簿外債務を抱えていることは市場では相当有名な話であった。このことは   損失補填が禁止された92年秋以降のバランスシートを注意して見れば   充分推測できると言われている。しかし、それにもかかわらず、大蔵省、   日銀ともその実態を見抜けなかった。その監督責任は重大と言うべきである。   特に、大蔵省について言いたい。今回の公的資金導入をタテにとって、   やはり財政と金融は分離できないと強弁するであろう。しかしそれよりも   重大なことは、大蔵省には危機を未然に防止する能力が欠如していることが   今回も明瞭になったという事である。癒着の中で輝きを失った眼に市場の   監督を任せることはできない。財政と金融の分離はさらに強力に推進   すべきである。 3)大蔵省の財政健全主義(=支出抑制本能)から脱却すべきである。   日本経済はついに危機的な状況に到達した。それにもかかわらず、   橋本総理も、また自民党執行部も「財政構造改革こそ最大の景気対策。   公共投資や減税のような財政出動は避けるべきだ」との立場を崩してはいない。   しかし、これは大蔵省に吹き込まれた偽りのヒロイズムに酔っている   としか思えない。先週も述べたとおり、日本の負債総額は確かに先進国中   最大であり、対GDP比でも最高である。   しかし、負債(448兆円/95年末)から資産(394兆円/同)を   差し引いた純負債(=54兆円)の対GNP比では主要先進国中もっとも   良いのである。(日=14.3% 米=49.2%、独=48.1%、英=44.2%、仏=39.3%)   いたずらに負債のみ強調し、必要以上に危機感をあおる大蔵省のやり方は   支出抑制のための意図的な誘導である。大蔵省は、支出抑制こそ国家経営の   基本と考えているのだろうが、右肩上がりの状況の時にはそれでよいかも   知れない。しかし現在のような危機的な経済状況の時にまで支出抑制を金科玉条と   考えていては、わが国の経済は壊滅する。   特別減税廃止、消費税アップで7兆円、医療費値上げで2兆円、の   3点セットで今年の国民負担は9兆円もアップしている。冷え切った   消費者の心理を少しでも明るくし内需喚起のきっかけとなるよう大型の   所得税減税を考えるべきである。   さらに農道空港に典型的に見られるような悪玉公共事業は論外だが、   都市の防災等のインフラ整備やハブ空港の建設、情報インフラの整備、   教育施設の再構築など、未来に向けた明るい社会資本整備の大プロジェクト   を打ち上げるべきである。   そして、規制緩和も総花的、矮小的な進め方ではなく、たとえば土地の   流動化を高めるとか、高度情報化社会実現等々の「明瞭なイメージを持った   大きなテーマ」を設定しながら進めて行くことが重要であると考える。