国会通信 No.334
【日本経済をどうみるか】
1998/1/26 (マンデーレポート第334回の要旨)
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● 22日、政党研の新年第1回例会が開催された。
この日の出席者は、自民党から河村建夫、岸田文雄、 民主党から玄葉光一郎、
新党平和から倉田栄喜、斉藤鉄夫、民政党から岡田克也、堀米征雄、民改連から
土肥隆一氏らの各衆議院議員が参加した。
顔ぶれを見てもわかるように、政党研のメンバーはおおむね
野党の新会派「民友連」の中核メンバーである。
今回の野党結集にあたって、特に政策調整の現場で果たした
政党研の役割は大変重要なものがあった。
● この日のテーマは、政治から少しはなれて経済のテーマになった。
中前国際研究所の所長である中前忠さんを招き現在の日本経済の実態に付いての
レポートをうかがった。
かなり衝撃的な厳しい見方である。
話は多岐にわたるので、特に印象に残った点をレポートする。
■ 日本経済の全体的な見方
1 構造調整のために必要な不況
97年度はゼロ成長か若干のマイナス成長だろう。
98、99年度とおそらくマイナス成長が三年続く。
戦後最悪の経済状況を迎えることになる。
これは、経済が構造調整するための必要な不況であり、
不況はすなおに受け入れたほうがよい。
政策的になにをやっても働かないような厳しい状況である。
2 金融状勢は一段と厳しくなる。
3月末までにPKO(株価操作)などの現状湖塗策をやっても
4月過ぎになれば状況がさらに悪くなっていることがはっきりする。
大恐慌時代のアメリカに匹敵するような事態である。
3 危機的なアジア経済の現状
アジアの経済危機はきわめて深刻。
当面は、インドネシアと韓国が事実上デフォルトになることは
避けられないが、これは日本の銀行に取って大問題である。
13兆円の優先株等の金融安定化資金を国内で投入しても
アジアで帳消しになってしまうであろう。
中国の人民元の切り下げは時間の問題である。これが周辺アジア諸国
に影響し、ヨーロッパの輸出不振につながり、最終的にはドルの独歩高
となって結果的にアメリカ経済の成長率を下げることにつながっていく。
成長率が3%を割り込むようになると、貿易戦争をしかけざるをえなくなる。
これが最悪のシナリオである。
■ 厳しい現状
経済の実勢は、本当なら株式市場を見ればよい。
しかし、日本の株式市場はPKOと呼ばれる株価操作が
常識化して、経済の実態を映す鏡としてどうも信じられない。
日本経済はいわば「体温計」を持たない状態。
唯一市場原理が働いているのがゴルフ会員権相場である。
これを見ると厳しい日本経済の実態が浮き上がってくる。
1 ゴルフ場の会員権の相場
毎週月曜日に日本経済新聞にでるゴルフ会員権相場によると
82年1月を100とすると、全国平均のピークは90年はじめの933。
バブルの最盛期に頂点に達している。そして97年12月の平均が164
だから、ピーク時の▲82%になっている。
日本には1コース平均1500人のメンバーで2000コースのゴルフ場がある。
会員権相場の平均は少し前で1000万円程度。
するとゴルフ会員権の時価相場総額は、
2000コース×1500メンバー×1000万円=30兆円。
会員権資産はピーク時には、この5倍の150兆円あったことになる。
すなわち資産的には120兆円の下落である。
2 土地資産のめべり
経済企画庁の資料によると90年の全国の民有地の額は2200兆円であった。
これが96年には1600兆円弱に目減りしている。
しかし実際の下落率はもっと大きいのではないか。
例えば東京都の商業地などはピーク時の2割になっているところもある。
民有地の資産額のピーク比の騰落率は東京都において90/96で▲47%
だから、資産の実際の目減りは経企庁発表をおおはばに越えてピーク時の50%
くらいになると考えるべきではないか。
とすると土地資産は1100兆円位の目減りである。
株式の時価発行総額はピーク時には900兆円くらい。
それが今や500兆円。とすると株は400兆円の目減りである。
株と土地という代表的な資産が合計1500兆円程度目減りしている。
これに絡んでいる金融は何割くらいだろうか。
1割としても150兆円の回収不能な債権が発生することになる。
1割ということはありえないだろう。
■ アジアの現状
アジア問題の本質は、まさにバブルの崩壊である。
一例をあげる。
GDPが1%伸びるのに対して銀行貸出が何%のびているかを
調べてみると、タイの90年から94年では、
GDPの1%の伸びあたり銀行貸出は10%も延びている。
明らかに過剰融資であり、1%を超える9%は、不動産市場に
回ってしまったのである。
(ちなみに日本のバブルの最盛期であった81ー89でも
年平均で4%弱であった。アジアのバブルは日本の2.5倍
回復には4、5年かかるであろう)
日本の輸出の地域別内訳を見ると、
アジアに44%、アメリカへ27%、西欧へが16%(96年 大蔵省調べ)。
だからアジア圏への輸出が断然多い状況である。
金額で言うとアジアに1790億ドルで、これは日本のGDPの約4%
(96年)である。
とすると、アジアの輸出が10%落ちれば、GDPは0・4%
落ちることになる。98年は25%落ちると予測されている。
従ってアジア関係で1%落ちるであろう。
これは実に大きな数字である。
また、中国も95年当時の25%を超えるインフレを
急激に収束させ97年になると0%を下回るような状況になっている。
これは過剰な引き締め政策の影響であるが
オーバーキルになる可能性が高い。
各国の対外債務(97年6月)(内は日本から)単位億ドル
債務残高 対GDP比% 利払費 対日債務残高
韓国 1034 47.4 93 237
インドネシア 587 93.2 52 220
タイ 693 79.5 62 377
マレーシア 288 53.4 25 104
フィリピン 141 28.6 12 21
香港 2222 144.3 200 873
シンガポール 2111 284.6 190 650
中国 579 7.0 52 177
ただしこれはBISの出している数字であって。実際はこの
1.5倍くらいあるのが普通であると言われている。
例えば韓国が最近IMFに責められて出した対外債務は1600億ドル
であった。そしてBISの数字との差の600億ドルの大半は日本の
銀行から行っていると観測されている。
ところで韓国は2200億ドルのGDPしかないのに、1600億ドルの
対外債務がある。いま韓国は実際はジャンクボンドステータスと言われる
最も信用力の低い国になっており、金利は10%以上とられる。
年間利息だけでも160億ドル。
これは事実上返済不能である。
また日本の金融機関からの貸付に付いても巨額の回収不能が
予測されている。ウォールストリートの見方だと
韓国に行っている日本の貸出額は大体750億ドル。
そしてその大半が回収不能と見られている。
また香港への貸付債権の8割り強の750億ドルも回収不能と
見られている。2国のみで1500億ドル、20兆円弱の回収不能である。
13兆円程度の金融安定化資金では焼け石に水である。
■ 日本の金融機関の再編成の方向性
日銀の資金循環勘定によると、個人金融資産の構成は
日米で大きな差がある。96年12月末の個人金融資産は
日が1209兆円、米が21兆ドルである。
その構成比は以下のようになっており、預金や株式の比率が
大いに異なっている。
日=1209兆円 米=21兆ドル
預金 54% 13%
信託 4% 6%
有価証券 12% 42%
株式 6% 23%
投信 3% 10%
債券 2% 9%
保険 25% (年金・生保)32%
米のような資産構成が日本の将来像と考えると、預金中心の
日本の銀行の数は現在の5分の1でも十分だということになる。
現在の政府の金融安定化対策は銀行の整理統合を前提にしたものではない。
そこが問題である。