国会通信 No.351
【拡散の引き金を引いたのは誰だ?】
1998/6/1 (マンデーレポート第351回の要旨)
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■ 核拡散の引き金を引いたのは誰だ。
インドに引き続いてパキスタンが核実験に踏み切った。
核拡散の脅威が現実のものになろうとしている。
95年9月、タヒチで行われたフランスの核実験反対行動に
私は参加した。それにもかかわらずフランスは核実験を強行した。
その後、中国、アメリカと、核を独占している国々の核実験が
行われた。同年10月に反対要請のためにパリを訪問。
また翌年8月には中国を訪問し江沢民主席に直接の抗議を訴えた。
その際、核保有国の核実験再開は、間違いなく核拡散につながる
と警告した。それは、核独占国が、基本的に核の牙を研ぎ続ける
ことは、潜在的に核保有したがっている国の核保有願望を刺激し
続ける結果となるからである。この警告が、まさに的中したのが
今回のインド、そしてパキスタンの核実験である。
拡散の引き金を引いたのは、核保有大国のほうである。
もちろん、インド・パキスタンに対しては
日本政府は、ODAや円借款の停止など断固たる措置を講ずるべきである。
また、国連においてインド・パキスタンに対する制裁・非難決議を採択するよう
働きかけるべきである。また、あらためてパキスタンやインドなど
未加盟国が核拡散防止条約(NPT)と核実験全面禁止条約(CTBT)に
参加するよう強く求める。
しかし、それと同時に
これまでの核保有国主導による核不拡散体制が行き詰ってきていることを
知るべきである。そして新しい核拡散防止体制の構想を早急に立ち上げる
べきときが来たと考える。
■ 一つは、現在の公認の核保有5大国(=国連常任理事国)中心の体制を
非核国中心の体制に新たに改革すべきである。
これを直近の課題であるとすれば、もう一つは遠大にして究極の
核抑止力依存型ではない、新しい安全保障システムを考えるべきであり
そのことにわが国がリーダーシップを発揮すべきである。
私の持論である「情報は核を超える」構想をわが国外交の基本と
すべきである。
■ 「情報は核を超える」=「情報による平和」の実現
(1) 核抑止力と国連の関係
現在の国連安全保障常任理事国は、まさにNPT条約で公認された
五つの核保有大国である。残念ながら国連の想定する世界の安全保障も、
核抑止力を大前提にし、核保有国の談合組織とも言うべき安保理の存在に
よって、かろうじて維持されている大変不安定なものである。
その存在や意義の重要性や必然性を肯定することにやぶさかではないが、
さらにそれを積極的に追認し、追随していくことはわが国の取るべき道では
ないと信ずる。
(2) 小政策
核廃絶の方策については、究極の大政策、現実的な小政策の二つが
必要である。段階的な核軍縮に取り組むNPT条約やCTBT条約の実効性を
高め批准国を拡大するための努力、そのための核実験禁止運動の強化、等は
いうならば現実的な対策としての小政策である。これはもちろん必要であり
重要である。さらに核保有禁止条約への展開、そして核爆弾の材料の
輸出入禁止、地域非核条約の推進等、考えられるすべての核廃絶オプションを
最大限追求して行くべきである。
(3) 大政策=「情報による平和」
わが国は、これらの現実的な小政策と同時に、わが国にしかできない
究極的な平和と核廃絶の大政策に果敢に挑戦すべきである。
それが情報による平和の政策である。
1) グローバル・ネットワーク政策の実行
● 高度情報通信ネットワークは国家を超越した地球市民を誕生させる。
国境を越えた市民交流の拡大こそ、21世紀の世界の潮流。
● 「核の傘」から「情報による平和」へ。
「核廃絶」の根本的な答は、「核の雨」を降らせなくすること。
国境を越える世界市民の情報交流によって「雨雲」を吹き払うことを
考えるべきである。「情報による平和」政策である。
● 高度情報通信ネットワークの意義付けを
「国境を越えた市民交流の拡大」=「地球市民の創造」に特化し、
それと同時にわが国の情報政策の目標をそこに設定する。
具体的な政策としては
・ 地球市民の共通インフラとしての通信環境整備が必要。
このための世界的な機構を作る。
・ ハード・ソフト両面にわたる支援策の整備。
コンピューター購入費の低廉化、
通信費用の低廉化、
障害者のためのプログラム支援、
・ 通信技術の振興のためのバックアップシステムを強化する。
・ 言語障壁を乗り越えるためのハードソフト両面での開発支援。
2)覇権主義と孤立主義に対抗する
● いま、世界は二つの情報覇権主義が誕生しようとしている。
一つは、アメリカに見られるような、情報先進国が情報優位を維持し、
世界に対する情報支配を強化しようとする、情報先進国の「情報覇権主義」。
二つは、中国に見られるような、情報後進国ないし開発途上国が国内の現状と
世界のズレを隠蔽するため、情報管理を高めようとする情報後進国の
「情報孤立主義」。
● わが国は、このいづれにもくみせず、覇権主義に対してはその行き過ぎを是正し、
孤立主義に対しては、各種の支援策を組みながら、開かれた情報環境を整える
方向に誘導していくべきである。
(4) まとめ
● 核はそれ自体悪であることは万人が認めるところである。核の無意味さを説き、核
廃絶それ自体に全力を挙げることは当然であり、その努力は今後一層強化して
いかねばならない。
核廃絶そして通常兵器の輸出入規制をより強化していくことは当然である。
しかし、それだけで充分であろうか。
● 私は「核の抑止力」理論に変わるべき新たな安全保障のコンセプトを考えない限り
核の廃絶は不可能に近いと考える。なぜなら、核の抑止力理論自体が実は
人間の悲しい一面の真実が生み出した理論であり、
これに変わるコンセプトが提示されない限り、人間の悪魔の本性が変わらない限り
人類とともに生き続ける理論だからである。
● 人間は、天使と悪魔の両性を具有する生き物である。核の抑止力理論は、性悪説に
たったある意味では冷徹な現実主義的戦略論である。言わば「善の哲学」と
「悪の哲学」があるとすれば当然「悪の哲学」にたった戦略思想である。
● しかし私は、「善の哲学」に立脚した戦略論をこそ構築すべきであると考える。
「恐怖心」と性悪説を背景にした戦略思想に対して
明瞭なアンチテーゼを提示することである。
「恐怖」ではなく、「相互信頼」と「愛・友情」を背景にした
平和のシステムを構想しなければならない。
● 「相互信頼」を昂進する平和のシステムとは、
戦争や紛争の根本的な原因である貧困、人種的偏見、民族的偏見、
宗教的偏見、文化的偏見等を克服・除去するための
国際的なバックアップシステムを構築することが重要である。
それが私の「情報による」平和の構想である。