国会通信 No.398
【イネゲノムとは】
1999/6/28
(マンデーレポート第398回の要旨)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【先週の主な出来事】
【21日(火)】
● 知的財産権戦略小委員会 第1回 開催。
実はこの小委員会のいいだしっぺは管さん。
そんなわけで、冒頭 菅代表が挨拶。
この日は 弁理士会の代表からヒアリングをしました。
金融の基本特許の大半は欧米に押さえられていることなど、
日本の知的創造力の低下が訴えられた。
【23日(水)】
● 商工・経済産業構造改革PT 合同部会。
大幅な会期延長の理由ともなっている経済再生法案については、
政府は7月下旬までにこれをまとめる予定のようである。この日は
通産省の産業政策局の担当者を呼んで意見交換。
分社化や企業再建等、どちらかといえば大企業対応の施策が多い。
アメリカの新規雇用は、むしろ中小企業やベンチャー企業にめだって増加。
(80年代の米国。大企業=350万の雇用削減。小規模企業=1700万人の新規雇用)
事業承継の際の各種の支援策はむしろ中小企業により強く必要。
私は、この点の検討もしてほしい旨指摘しました。
●特許庁に出向き、現状を視察しました。
【24日(木)】
● 高度情報社会PT
「日本のとるべき情報戦略」というテーマで 三井物産の寺島実郎さんからヒアリング。
アメリカが情報戦略を駆使しながら、金融、軍事、政治などの点で
世界の基盤を戦略的に形成して来たことについて鋭く指摘。
情報革命の意味を深く理解してこなかったわが国の遅れを実感しました。
骨太の奥深い情報戦略が必要です。
(このテーマは、後日報告します。)
●兵庫県の播磨科学公園都市にあるSPring―8(スプリング・エイト)を
単身視察してきました。
SPring―8とは、大型放射光施設の愛称です。この放射光を利用することで
物質の種類や構造、性質を詳しく分析することができます。
そしてこの施設は80億電子ボルトの放射光を出すことができる世界最大の施設です。
(このテーマも、後日報告します。)
【25日(金)】
●参議院本会議 総理大臣のケルンサミット報告と質疑が行われました。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【イネゲノムとは】
先週は、たつくば市にある農業生物資源研究所や先端技術研究所を訪問し、
日本の遺伝子工学の一分野、イネゲノムの研究現状をチエックしてきました。
以下その際見聞したことを簡単に報告します。
1 イネゲノムとは
(1)ゲノムとは
生物種に固有の生命現象の設計図のこと。
その生物が生命活動を行うのに必要なすべての遺伝情報(全DNA)が書かれています。
そして、その書き方は、アデニン(A)、チミン(T)、グリアニン(G)、シトシン(C)
の4種類の塩基配列によって書かれています。
これは、動物手も植物でも、原始的な菌類でも同じことです。
生命の遺伝子はすべてこのATGCの4種の塩基配列であることで共通しています。
人のゲノムがヒトゲノム、そして稲のゲノムがイネゲノムです。
(2)なぜイネゲノムか。
いまわが国のイネゲノム研究は世界中から注目されています。
その理由は、実は穀類のゲノムはほとんど共通しており、イネのゲノムの10倍が
トウモロコシ、その40倍くらいが小麦と、イネの遺伝子を解明すれば
その知識を他の多くの穀類に使用することができることが分かってきたからです。
(3)この研究のリーダーシップを取っているのがつくば市にある、農水省の研究機関で
す。
知的財産権の戦略を考える際に欠かせない知識や、イネゲノム研究、遺伝子組み
換え技術の研究の現状、世界有数の ジーンバンク(植物の種子の収集保管)の
内容等を調べるために、15日(火)、農水省農業研究所、生物資源研究所、(STAFF)
農林水産先端技術研究所等に行ってきました。
(参考 ・ ジーンバンクの種子の保有数
・ 第1位 アメリカ 約56万種
・ 第2位 中国・ロシア 33万から35万種
・ 第4位 日本 21万種)
2 イネゲノムの戦略
(1)生物資源研究所の桂所長さんの話は大変面白かった。
特に「ベーシックなものは協調で。そこから派生するものは競争で」
という考え方は、わが国の知的財産権の戦略の基本となる考え方だと
思いました。
(2)桂所長さんの話を、私なりに要約すると以下のとおりです。
「基本特許はアメリカが押さえている。
最も有用な特許は貸してさえくれない。
したがってまず、自主開発の上でクロスしていくしかない。
相互にインテグレーション(=統合)を目指す方向を追求した。
そして、そのうえで特許を取りかえす戦略をとった。
それがイネゲノム研究の意味である。
隠すのはもっとも下手なやり方。
いかに上手に出していくかである。
全遺伝子解明の努力をした。
公的セクターの研究結果は公開せざるをえない。
他方民間は非公開で企業の利益優先。
したがって遺伝子研究の基礎である遺伝子地図さえ特許の対象にしかねない。
これでは、せっかくの研究の基礎が私物化されかねないし、
日本の先行した立場も無にされかねない。
そこで、全体の遺伝子地図は積極的に公開して、
世界の研究者の共通して利用できるものとすることにした。
他方、地図を利用しさらにそれを精査して「吊り上げた」遺伝子情報は
個別の特許の対象とすることにした。
いわば協調と競争である。
(協調=遺伝子地図を分担して共同で作成)
(競争=個別遺伝子特性の発見や特定)
ベーシックなものは公開=協調で。それから派生するものは競争で。
これによって、企業の特許取得にやんわりと「待った」をかけられる。
また日本の先行した優位性も事実上守ることができる。
(3)遺伝子解明の現場=(STAFF)農林水産先端技術研究所
ここでは、イネゲノムと家畜(特にブタ)ゲノムの塩基構造の解析を行っている。
1)塩基の数はイネゲノムは約4億3000万個。
参考 塩基数 染色体
ヒト 35億 46
ウシ 30億 60
ブタ 30億 38
2)イネの4億3千万の塩基。その構造を正確に把握するためには
ダブリチェックをしなければならない。そのため10回程度解析を繰り返す。
単純に計算すると 4億3千万×10=43億回の解析が必要。
今、STAFFには1日12万塩基を解析するコンピューター(米製)が
10台ある。したがって1日、120万塩基ずつ解析が行われているのである。
3)最近になって新型のコンピューターが入った。
旧型(1台2000万)の倍の値段のする新型コンピューターは
旧型で1日7時間かかっていた分析を1間でやれるようになった。
この新型を今年は4台導入する。
しかし、恐るべしアメリカのCerela社(?)はこれを今年
なんと260台導入する予定だそうだ。
これと思えば大胆に資金投入するアメリカらしいやり方である。
日本の先行利得もどこまで確保できるか不安になる。