国会通信 No.405
【民主主義のレクイエム】
1999/8/16 (マンデーレポート第405回の要旨)
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【先週の出来事】
●9日(月) PM3:30
「国旗国歌法」案 参議院本会議で可決 成立。
参議院民主党は、自由投票に。民主党の内訳は、反対31票 賛成20票
棄権5票で、ふたをあけて見れば反対のほうが多かった。
先に行われた衆議院でも1票差で反対が多数。
民主党は党議をまとめられずに自由投票で臨んだのだが、結果的には、
衆・参両院とも反対が多数であった。
とするなら民主党を「反対」でまとめることも可能だったはず。
「反対」で党内をまとめて、自自公に対決したほうが、対立軸は明快に
なったはずである。
●同日 PM9:00頃
法務委員会で「組織犯罪対策」3法案について、荒木委員長(公明)強行
採決。
国会は混乱に。
通常の強行採決のパターンは、与党質問者がみずからの質問途中に
「審議打ちきり」動議を提出することで始まる。
しかし今回は、野党第一党の民主党理事円より子氏の質問をさえぎる形で
自民党理事が動議を提出した。
この事自体「数の暴力」を感じる。
しかも委員長は動議提出者の指名を行わずに採決した。
これもルール違反である。
さらに、ビデオを何度チエックしても委員の挙手は一回のみ。
最低、動議の採否と法案の採否の2回必要なのに一回しかないのは、
採決自体が存在していない事を明白にしている。
また委員長は、採決対象の法案の名称を発言していない。
そして議事録にこれらの記録はない。
こんなおそまつな強行採決はいままで見た事がない。
●10日(火)民主共産社民の3党は 法務委員会での採決無効、審議差し戻しを主張
そして深夜11時50分に民主党は衆議院に内閣不信任案を提出。
● 11日(水)PM3:00
衆議院において午後1時から内閣不信任案の討論採決。
たった2時間で終了。
自自公の反対多数で、不信任案は否決された。
これを見ていた参議院のほうでは、なんとあっさり否決されてしまった
のか、もう少しふんばって、時間をかけてくれれば、この不信任案の
のちにセットされている参議院での時間との戦い
(会期末は13日。時間内に決着しなければ廃案か継続になる)に
多少ともプラスになるのに、衆議院は頼りにならんね、との声がしきり。
● 同日 PM4:45 参議院本会議場。
民主・共産・社民 共同提出の荒木委員長解任決議の動議についての
提案理由説明。
民主党の円議員が三党を代表して趣旨説明に立つ。
発言時間については制限なし。
いよいよ、翌12日PM9:30まで続く30時間の与野党激突が
始まった。
PM5:00すぎころ、円氏の冷静そして緻密・執拗な質問が続く中、
公明党の政治姿勢を批判した発言中に、自民党の保坂議員がやじ。
その内容は、「あんたも離婚したじゃないか」
という、差別的な内容。
法案とは無縁の卑劣な人身攻撃であり、また離婚者に対する差別発言、
さらにはセクシャルハラスメント発言が、議会のど真ん中から出てきた。
これに対し、野党の男性女性議員をとわず猛烈な反発。
常日頃、差別的なヤジに苦しめられていた女性議員の怒りが一気に沸騰
した。女性議員たちは議長席の下までつめより、議長に抗議。
議長は「休憩」を宣告した。
休憩後問題の発言については、後刻理事会で事実関係を明かにし、
そのうえで対処するとの議院運営委員会での結論が出て、再会。
円氏は、この中断を含めて、3時間にわたり委員会採決の不存在を訴えた。
恐らく国会史上に残る長時間の大演説であった。
その後民主党の千葉景子議員、共産党の吉川議員、社民党の福島議員、
がそれぞれ立ち、一時間前後の賛成討論を行ったが、それぞれすばらしい
内容の演説であった。
反対者の長時間に及ぶ反対討論はアメリカでは「フィリー バスターズ」
制度と呼ばれている。
牛歩戦術よりも、まずは言論によって戦う、との姿勢の表れである。
その後採決。投票の順番は議場の並び順に従い、与党→野党となっている。
野党は、細かい指示があったわけではないが各自思い思いのスタイルで
時間をかけて投票するいわゆる牛歩戦術を展開した。
これに対して議長はおおむね一時間を過ぎたあたりで「投票時間制限」を
宣告。
「投票箱を閉鎖」し、牛歩を続ける議員の投票権を強引に剥奪していった。
野党は、内閣総理大臣の問責決議、議長、議運委員長の解任決議、等
考え付く限りの動議を提出、これに対して与党は発言時間制限の動議を
提出、提案理由説明、討論、採決と一つ一つのステップを踏んだが、
議長の投票時間制限の強権発動のもと、組織3法案成立の時間は刻一刻と
迫ってきた。
● 12日 PM3:00
合法的な抵抗も限度。法案についての採決に入り、とうとう成立。
● 12日 PM4:00
引き続き住民基本台帳法案について、委員会での採決の手続きを省き、
委員会の頭ごしに法案の採決を行う中間報告の手続きに入る。
この法案のかけられた委員会は地方行政委員会でその委員長は民主党の
小山議員。
したがって法務委員会のような強引なやり方はできない。
そのために、緊急非難的に使われるべき「中間報告」=多数の力で委員会
の採決なく本会議にかけられる制度=という規定を流用して、委員会を
飛び越えようと言うわけである。
この制度に訴える事は、議会の委員会制度を形骸化することにつながるの
は目に見えている。
住民基本台帳という、21世紀の市民社会のあり方を規定する重要な法案
にこのような規定を採用する事は信じられない。
まさに多数の横暴である。
● 12日 PM8:00
法務大臣の問責決議案。
これが、今国会最後の採決案件となった。
提案理由は私が野党三党を代表して演説。17分。
冒頭、民主主義の本質とは何かと問題提起した。
多数決のみが民主主義の原則だと思ったら大間違いである。
もうひとつの重要な原理は、多数による反対意見の尊重、少数意見の尊重
にあると主張。
今回のように、立法の目的を「犯罪捜査に必要」だからと説明しながら、
審議の過程で「携帯電話の盗聴は技術上無理である」ことが明らか
になった、すなわち実際は犯罪捜査の有用性はきわめて低い事が立証され
た、だとすれば多数意見は自らの意見を修正してしかるべきであると
論じた。
● 13日 145通常国会の案件はすべて終った。
延長後の国会で強引に可決された三法案。
それを阻止できなかった事の悔しさが湧き起こる。
三法案の成立によって、日本は、国家管理の道をさらに強めていく事に
なる、残念であり無念である。
この日朝、洗濯物を宿舎のベランダに干しながら、なにげなくCDを
かけた。
するとベルディーのレクイエムが流れてきた。
ダイアナ王妃が好んだレクイエムの最終曲「リベラ・メ(私を自由に)」を
聞きながら、不覚にも涙が流れてきた。
昨夜の深酒と疲労が涙腺をゆるめたのかもしれない。
しかし、この涙の意味は何なのだろうか。
日本の戦後民主主義は「死んだ」とまでは言いたくないが、この国会で
瀕死の手前くらいまでは来たのではないかとの歴史的な直覚がある。
それを阻止できなかった。
またもや自民党勢力との正面衝突で敗北した。
多数の横暴に対し、精一杯戦ったが、勝てなかった。
発言者を「離婚者」とののしり、「難聴」とののしる、
野卑な勢力との戦いに勝利できなかった。
しかし、涙はカタルシスである。
悲しさや悔しさを、さらなる闘志に昇華してくれる。
「それでもなお」と叫びながら、何度でも戦っていくしかない。
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145通常国会の反省点
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1 今国会の、大きな反省点は、以上のことにも関連するが、基本戦略の甘さで
ある。
戦略の最大のポイントは「戦場の設定」である。
「どんなテーマで」(what)、「いつ」(when)、「どこで」(where)、「誰が」(who)、
「どんな方法で」(how)、戦いを挑むかが明快でなければならない。
この戦場の設定が本当にへたくそであったと思う。
2 私は「国旗・国家法案」「組織犯罪対策3法案」そして「住民基本台帳法案」の
3つはいづれも共通のテーマを持っていると考えるべきである。
これを推進しようとする側は、けっきょくのところ「国家管理の強化」を是認する
考えを有している。
しかし、民主党はこの方向とは逆の方向、すなわち官権の伸張よりも民権の伸張を
のぞむ勢力であること、すなわちて市民の側に立った姿勢を考える勢力であり、
このテーマを明快にしながら、この3つをセットにしての戦いを組むべきであった。
3 そして今国会の最大の争点=「戦場」=をこの3つに絞って、通常国会の冒頭から
さまざまな想定=シナリオ=を描きながら、仕掛けをしていくべきであったと思う。
しかし、そのいづれにしても、取り組みは甘かった。
特に参議院から見れば、衆議院で十分に戦われずに参議院に送りこまれてきた、
上記3法案の戦い方は最初から困難を強いられたようなものである。
1) まず、国旗国家法案である。
なぜ、安易に民主党政調は、PTのこの法案について出した結論=賛成=を
そのまま通してしまったのか。
この法案こそ、自民党との対立軸を明快にする最大の争点ではなかったのか。
また、プライバシーや内心の自由を守っていくといった共通テーマとして
「盗聴法」「住民基本台帳法」と一体化しさらに反対運動の相乗効果を高める
テーマとして意識すべきであった。
しかし、代表はじめ党幹部は、党内に「君が代」法制化についての強固な
反対論者がおり、さらに党内世論も、上述のように法制化反対論者が結果と
して衆参とも多数であることについての認識が低かったようである。
だから政調が法案賛成との決定を安易に出し、その後参議院の有志
(私、竹村、小宮山、桜井等)から、強固な反対署名が集約・提出されてから、
党の方針は大幅に変わることになる。
結果として代表・幹事長が全議員から再度ヒアリングして
国旗=国歌の分離案(国旗のみの法制化)と法案についての自由投票案に
党方針を変更することになる。
国旗国家法案についての過少評価が後の迷走を生み出す出発点となった。
また、「国旗・国家法案」と「盗聴法」の問題点の本質を共通のものととらえて
一体化した運動を展開する迫力を欠く結果にもつながっていく。
私は、参議院の全員協議会等で「『君が代』に賛成しておきながら、
盗聴法に絶対反対を唱えることは自己矛盾である」と再三指摘したが、
私の主張はあまり影響力を持たなかったのが残念である。
2) 盗聴法案について
この問題についても、衆議院においてもっと十分な争い方をして欲しかった。
党幹部が「むしろ衆議院が貴族院化している」と冗談交じりに言ったとおり、
衆議院法務委員会でもっと揉んでくれていれば、そもそも欠陥は明白なの
だから衆議院段階での大幅修正等も可能性が出てきたかもしれない。
確かに自自公の数の優位が圧倒的かもしれないし、公明党があそこまで変節
(というのも浜四津代表自ら盗聴法反対を明確にしていた)し、
そして自自公路線を強めてくるか判断は難しかったかもしれない。
しかし、あまりにもあっけなく衆議院を通過させてしまった。
そのことは、この盗聴法の問題点、そして政治的争点としての重要性を
あまり意識できていなかったのではないか。
むしろ党内において盗聴法の争点としての意義を認識するようになったのは、
衆議院通過後からである。
これでは、戦いがごてごてになってしまっても当然である。