国会通信 No.411
【スバル天文台視察記 その1】
1999/10/12 (マンデーレポート第411回の要旨)
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【先週の出来事】
● 11日(水)
10:00 知的財産権戦略小委員会 開催。
EUの知的財産権戦略について 駐日大使館のヒアリング。
11:00 常任幹事会 開催。
鳩山新体制発足に伴う人事により、私は新たに常任幹事に選任され
ました。
この日の常任幹事会から出席しました。
これからは2週間に一回のペースで開催されます。
なお、この日は ネクストキャビネットと既存の政策調査会の各部会と
の連携をさらに密接にすべきであると提言しました。
13:00 スエーデンの国会議長一向の表敬訪問を受け 意見交換。
国際交流委員長の仕事である。
16:00 NTT DATA IN FORUM に参加。
● 6日(水)
15:00 経済産業委員会の理事懇談会。原子力臨界事故について
の参議院の対応を協議。
来週中に、委員会への科技庁の報告を求め、そのうえで質疑をする事
を決定。
16:30 民主党原子力臨界事故対策本部第2回目を開催。
本部長の鳩山代表、管政策調査会長も出席。
JOCや科技庁から事情聴取。
●7日(木) 「明日の政治家を作る会」で講演。
90年代の政治を総括。
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● 本年9月4日 ハワイ島のマウナケア山頂にある、世界最大の直径8メートルの反射鏡を
持つ、大型光学赤外線望遠鏡「すばる」を視察してきました。
●9月4日の午前9時、宿泊先のホテル「コナ・サーフ・リゾート」を出発。
案内者は、文部省国立天文台ハワイ観測所 副所長で教授の西村徹郎さん、奥様
の求美さん、そして事務長の有井博文さん。
NAOJ(National Astronomical Observatory of Japan)のロゴが横っ腹に
ついている4WDを西村先生自ら運転して、ハワイ島北部にある標高4205メートル
のマウナケア山頂にある「スバル」をめざしました。
2 さてハワイ島はハワイ諸島最大の島。その北部にそびえるのがハワイ語で
「白い山」という意味のマウナケア山です。
マウナケア山は、体積を高さで割った比率が世界一といわれるように、なだらかな
広い裾野を持つ山です。
急勾配、一部未舗装ながら、山頂まで車で登ることが出来ます。
これも山頂付近に世界の天文台が13個も集中している理由なのでしょう。
しかし、そうは言っても、富士山よりもずーっと高い山。
山頂付近は気圧が地表の60%くらいになります。
高山病に注意をし、標高2800メートルにあたる国際共同の中間施設に着いたのが
10時半ころ。
そこで30分ほど休憩をとって体をならし、水分を補給して、山頂には11時過ぎ
ころに到着しました。
3 スバル天文台のあらまし (以下は西村先生のお話をベースにしています。)
● 1991年からハワイのマウナケア山頂に、口径8メートルの可視光・赤外線観測用の
大望遠鏡を建設する計画が始まりました。
そして9年の歳月を経て今年完成。
この9月17日に完成記念式典を行うことになっています。
望遠鏡の名称は一般公募によって「すばる」と命名されました。
● 建設費は約400億円。
直径8メートルの反射鏡を持つ可視光の望遠鏡としては現在世界でナンバーワンです。
もっともこの望遠鏡を作るノウハウについては世界の研究者がそれぞれ協力し合って
いるとのこと。
同じ規模の望遠鏡は、米英共同のGEMINI、欧州南天文台(ESO)の「VLT」など
あるので、あまり世界一と力まないほうが良いのかもしれません。
● なぜハワイかということですが、最近の研究によると、可視光や赤外線の観測とも
なると、なんといっても気流の安定が重要。
太平洋というフラットで広大な地表面は安定した大気のまとまりを用意してくれており、
そこに突然海抜4200メートルという高山が立ち上がっているこのマウナケアは、
望遠鏡で可視光を観測するについては世界でもっともよい環境にあるとのことでした。
すんだ空気、高い晴天率(65%)、少ない温度変化、など、高解像、高精度の観測が
可能な世界のベストポイントがここマウナケア山頂なのです。
●可視光・赤外線観測用の望遠鏡を選んだのはどう言うわけなのでしょうか。
いままで望遠鏡といえば可視光を見るものでした。
可視光とは波長0.35〜0.75ミクロンの、目に見える電磁波のことです。
一方、宇宙を飛び交うさまざまな電波の一部は大気を通して観測できます。
それが波長1オングストローム以下のX線やガンマ線などの電波であり、
いままではこの「可視光」と「電波」の二つを通して宇宙を見てきたのです。
特に最近の物理学の発展や量子力学の発展は電波望遠鏡そして電波天文学を生み、
また量子学的天文学も確立し、宇宙のさまざまな現象に対し多角的なアプローチ
が行われるようになりましたが、まだまだ不充分です。
特に赤外線はちょうど「可視光」と「電波」の中間領域にあり、条件の良い高山では
地上では検出できない近赤外線(〜数ミクロン)から中間赤外線(波長30ミクロン)
まで見ることが出来、「スバル」はここに焦点を絞っています。
すなわち可視光の0.3ミクロンから中間赤外線の30ミクロンまでの電磁波の観測が
「スバル」のメインターゲットです。
特に赤外線は、星が誕生する際に発生する超高熱を確認するために大いに役立ちます。
また、可視光の分析はそのスペクトラム分析を通して、発光体を組成している物質が
なんであるか(各元素ごとに燃焼のときに発する光の波=色が異なる)解析するのに
役に立ちます。
スバルは、このように可視光と赤外線の観測を通して、宇宙における恒星誕生の
メカニズム解明を狙っているのです。
● 変貌する宇宙像
ビッグ・バンという言葉はずいぶん広まりましたね。宇宙の始まりは、大きな爆発
だったという考え方ですが、星と星の距離はどの方向を見ても急激に拡大しているとの
観測が現実に行われ、この理論は実証されました。
しかし、そのほかまだまだわからないことや、私たちの想像を絶することがたくさん
あります。
その代表が宇宙の見方を根本から変えそうな、銀河と銀河の間にある「見えない物質
ダークマター」と言われるものです。
今までは、見えない部分=空虚と漠然と考えていましたが、どうもそうではないらしい。
この見えない部分こそ、全宇宙で最大に存在する物質であり、その泡状のかたまりと
かたまりの境界上に銀河が連なっているのでしかないのでは、と言った今までの
考え方を180度展開するような考え方すら出てきています。
先日私は、岐阜県神岡町の東大宇宙線研究所「カミオカンデ」に行ってきました。
ここはニュートリノという素粒子を研究観測しているところですが、実はこの
ニュートリノこそ、全宇宙にもっとも多く存在する物質ではないかと主張する学者が
増えており、銀河と銀河の間を埋め尽くしている「ダークマター」といわれる星間物質
の主役ではないかと言われたりしています。
カミオカンデの観測で、重量=エネルギーを持つことが立証されれば、
この仮説はさらに説得力を持ってきます。
このような宇宙論の新たな展開に「スバル」はとてつもなく大きい貢献をして
くれるのではないでしょうか。
● 林理論
西村さんが大いに薫陶を受けた、京都大学教授の林先生こそ、アメリカの教科書にも
出てくる、星の誕生についての林理論を考えた人でした。
この仮説は、恒星の誕生を以下のようにモデル化しました。
すなわち、宇宙にあるチリ(=ダスト)やガスが、何らかの理由で回転しながら、
凝縮をはじめる。
加速度的な回転は、さらにダスト・ガスを集約し、高温と高密度の恒星のコアを
生み出していく。
これが林理論です。
今回、スバルの望遠鏡の試験中に偶然、オリオン座の三ツ星の下あたりにある
真っ暗な暗黒星雲に焦点を合わせたところ、今までは何も観測できていなかったところ
に、赤外線を放つ星を観測することが出来ました。
これはもちろん世界ではじめての観測です。
そして、この林理論による原始星の誕生を観測したものではないかと言われています。
早速スバルの威力が現れたなと言った感じです。
● 星の輪廻(りんね)
全体の宇宙は150億年前のビッグバンから始まったこと、そのときの超高温、
超高密度の名残の電波が最近になって電波望遠鏡で検出され、ビッグバン理論が
ほぼ証明されようとしています。
しかし、急激に膨張しつつある宇宙の中にあってもそれぞれの星や銀河は、
誕生と死亡を繰り返していることがわかってきました。
星はその生命を終えようとするときに急激に拡大し、そして最後は爆発します。
しかし、この爆発は新たな誕生のドラマの始まりでもあります。
なぜかと言えば、この爆発によって新たに発生したダストやガスこそ、原始星の誕生の
エネルギーであり源材料になるからです。
まさに生成流転のりんねを繰り返しているようです。
宇宙論は、ここに至って一種哲学的・宗教的色彩を帯びることになってくるのです。
● 惑星を見つけたい
さて、望遠鏡は、みずからエネルギー(光や熱、電波)を放っている星、すなわち恒星
を発見するためのものです。
例えば、私たちが住んでいる太陽系では自らエネルギーを放出しているのは太陽だけ
です。
したがって、何万光年も離れたところから望遠鏡でのぞいて見えるのは太陽だけ。
自分で光を放つことの出来ない星、すなわち地球を代表とする惑星を観測することは
出来ないのです。
しかし、人類の長い間の夢は、他の星にすんでいる生命体の発見でした。
そして生命体の誕生の可能性は、すべてが燃焼する生命にとって苛烈な環境の
「恒星」ではなく、モデラートな自然の存在可能な「惑星」であることは言うまでも
ありません。
しかし、惑星は自らエネルギーを出さないので、望遠鏡では観測できない。
未知との遭遇を夢見て宇宙を観測しながら、見えるのは生命誕生の可能性がきわめて
低い恒星だけ。
これは宇宙への夢の、大きな矛盾です。
しかし、最近の宇宙天文学や望遠鏡の驚異的な発展により、この矛盾も乗り越えられ
そうになってきました。
それは、恒星の周りを回る惑星の存在が、恒星の発するさまざまなエネルギーを
微細に揺らすことが観測できるようになってきたのです。
例えば光にしても熱にしても、それは一種の波です。
そして波である以上、波が共通に持っている特色=すなわち救急車のサイレンの
変化と同じ現象=「近づくときには、高くなり(波長が短くなり)、遠ざかるときは
低くなる(波長が長くなっていく)」=いわゆるドップラー現象を観測することが
可能です。
波長は色の変化となったり電波の変化となったりして観測可能です。
「恒星」の周りをグルグル回る「惑星」が、引き起こす周期的な微妙な変化を観測する
ことができる。
そしてこのことによって、直接は観測できない惑星の存在を推認することが出来る
のではないか。
こんな研究も盛んになってきました。
西村先生の話によると、現時点では、全宇宙で約20個くらいの惑星の存在が、
以上の方法によって推認されるようになってきたとのことです。
●山頂につきました。いよいよスバル天文台に入ります。
西村先生の、慎重かつ手馴れた運転によって、意外に簡単に山頂につきました。
後でわかったことですが、山頂の気温は摂氏5度、そして気圧は650hp。
地表が1013hpですから気圧は本当に地表の半分近い状態。
4wdから降り立った瞬間、少しからだがふらついたような感じです。
西村先生のアドバイスで、頻繁に深呼吸?。
というよりも空気を肺に大きく吸い込んで2,3秒息を止め、肺に空気を溜め込むように。
すると、少しながら息苦しさがとれてくる感じです。
スバルの隣には、双子のようなケック天文台。米英共同のGEMINI
(ジェミナイと発音)はさらにその向こうにあります。
さながらマウナケアの山頂は天文・銀座といった景色。
多くの天文台が球形のドームであるのに対し、わがスバルは底部が楕円の円筒形、
角度によっては長方形の立屋に見えます。
これも流体実験を繰り返しながら、立屋の四方についているシエルターを
コンピューター制御で開閉し、気流の流れを安定的にしようとした結果の形状。
その高さは地上43メートル。
さらに地下20メートルにわたって望遠鏡を支える円筒形のピアが設置されています。
ドームの隣の観測制御棟にまず入りました。そこではスバルを作った三菱のスタッフや
コンピューターの一部を担当した富士通のスタッフにお会いしました。
個人差はありますが、普通の人だと半日もいれば頭がぼんやりしたり、視界が悪く
なったりするそうです。
なお同行の有井さんは高山には順応性高いと自慢していました。
なぜですかと聞いてみると面白いことを教えてくれました。
なぜか喫煙者はここに来てもあまり息苦しくならないそうです。
地上でも、すでに息苦しさの免疫をつけているせい
なのでしょうか?詳しいことは有井さんもわからないようです。
ドームの中は、さらに温度を摂氏2度に保っています。そのために厚い防寒ジャンパー
に着替え、手袋をはめてドームの中に入りました。
●スバルは静かに身を横たえていました。
スバルが星を見るのは夜です。
そして人体の熱が気流を変えてしまうため、観測時はドーム内は立ち入り禁止。
私が入ったときは、望遠鏡はほぼ水平に近い状態に身を横たえていました。
直径8メートルの主鏡は、それを支える264本の従者ロボットとともに、
暗青の金属色に鈍く輝く底部に収まっていました。
●スバルのすばらしさ(以下次週に)