国会通信 No.435


 【放送の地上波デジタル化問題事】

2000/4/4 (マンデーレポート第435回の要旨)


【先週の出来事】 ■ 27日(月)    8:00  第433回マンデーレポート実施。   12:00  カナダ大使と懇談。 ■ 28日(火)   10:00  交通通信情報委員会。NHK平成12年度予算について集中審議。          全会一致で承認。 ■29日(水)   10:00  本会議。あがり法案の採決。産業技術力強化法案についての趣旨説明          及び質疑。   13:00  レクチュア。かねて問い合わせしてあった、建設省都市局、          運輸省旅客課、通産省産業政策課、国会図書館から、、、。   16:00  知的財産権戦略PT          「ヒトゲノム計画の現状と展望」について          講師 慶応大学医学部 分子生物学教授 清水 信義 先生。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【コメントー清水教授の業績】  ●清水教授は、英国の科学者チームと共同しながら、人間の22番染色体の遺伝子構造を、  全部解明した人。  さらにダウン症を起こす遺伝子22番染色体に存在する事をも発見。  人には23対の染色体がある。  その中にATGCの4つの塩基の組み合わせからなる遺伝子が存在する。  現在、遺伝子構造の解明は世界が協調と競争を繰り返しながら激しく先陣争いを  している。各対のうち全部が解明されたのはこれが最初である。 ● 世界の学者グループは、遺伝子の地図を完成することについては、共同作業を行い、  そしてその成果である遺伝子の地図については全部公開している。  しかし、アメリカのセレーラ社に代表されるように民間業者が先回りして、  この地図自体を特許の対象にし、自分の個別的な利権の占有物にしようとしている。 ● このような状況をほっておいてはならない。人間の肉体や自然界にすでに存在している  生命体の基本情報については、これを特許の対象から除外すべきである。 ●この事については、つい先日、クリントン、ブレア、の二人が歩調を合わせて、  公開と共有を提案したようだが、日本には清水先生のようなすごい業績を上げていると  ころがあるのに、政府は何のアピールもしなかった。愚かであるとしか言いようがない。  詳細は後日。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ■30日(木)    8:00  ゼンセン同盟 産業労働政策懇話会 幹事会に出席。    8:30  郵政部会。          電波通信事業法の一部を改正する法案について郵政省をヒアリング。    10:00  交通情報通信委員会。          港湾事業法改正法案。社民党、共産党は反対。賛成多数で可決。          4項目の付帯決議案を取りまとめて、提案。これは全会一致で可決。   12:20  宇都宮帝人労組の国会見学団 来訪。あいさつ。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【コメント 港湾事業法改正案】 ●目的  港湾事業に競争原理をいれ、適正な競争の中で、運賃や料金の低廉化をはかり、      香港やシンガポールのアジアのハブ港湾と比べて低下しつつある日本の港湾      の競争力を回復する。 ●内容  1 事業参入規制の見なおし   主要9港については、一般港湾運送事業の需給調整規制の制度を廃止する。 2 主要9港における一般港湾運送事業の運賃・料金の認可制を事前届出制に。   3 セーフティーセット   過度なダンピング等の 競争の悪影響が出たときには   運輸大臣が運賃料金の変更命令を出す事ができる。 ※ 主要9港 = 京浜(東京、横浜、川崎)、千葉、清水、名古屋、          四日市、大阪、神戸、関門、博多。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ■31日(金)   10:00  本会議 人事案件とあがり法案12件の採決。   12:30  カラン航空 大阪―ヌメア線就航に伴う意見交換会。          これにより日本は、「天国に近い島々」のニューカレドニアと          さらに近くなった。   18:00  やなせ進城山地区後援会主催の国政報告会。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【放送の地上波デジタル化問題】 ■衛星デジタルは今年の年末から開始されるが、郵政省の計画から言えば  2006年から全国の地上波放送がすべてデジタル化し、さらに2010年以降は  アナログ放送がすべて廃止される予定である。  先週行われた、委員会での質疑では、膨大な設備投資の予算を予定している地上波放送  のデジタル化についての、NHKを取り巻く基本的な問題点を取り上げた。 ■以下はその質問の要旨である。 1 地上波デジタルの計画の進め方について     《NHKの財政状況》  NHKの2000年度予算を見ると、受信料収入6313億円を中心にした 事業収入が6558億円、事業支出が6363億円、その差額すなわち事業収支差金は プラス195.5億円を計上している。財政安定化資金533.9億円にも手をつけず に繰り越すなど、全体的には健全財政になっているが、今後の放送をめぐる状況から言 うと、決して楽観はできない。 《地上波デジタルの具体的な日程》  特に大きなものとして、地上デジタル放送の計画がある。平成10年の10月に取り まとめられた地上デジタル放送懇談会の最終報告書によれば、2006年に全国デジタ ル放送開始、そして2010年のアナログ放送終了の予定となっているが、この計画に したがってデジタル化のための膨大な投資が行われようとしている。 《設備投資の具体的な内容》  現在の放送は、放送局が番組を作り、それを光ファイバーで放送所に伝送し、放送所 がこれを各家庭に電波で送信している。渋谷の放送センターをはじめとするNHKの放 送局の数は全国で54。東京タワーなどメインとなる放送所はNHKで42局。中継放 送所はNHKで6,860局。デジタル化となると、まず番組を制作する放送局の番組製作 のための設備を更新し、次ぎに放送局から放送所に光ファイバーで伝送している番組送 出のための設備を更新し、さらに放送所の電波を送る電波の送信設備を更新することに なる。 《デジタル化には6500億円かかる》  これに要する費用はどのくらいかと言えば、すでにNHK会長が国会で明らかにして いる通り、番組制作設備に3000億円、番組送出設備に500億円、そして送信設備 に3000億円と、トータル6500億円の巨大な設備投資が必要とされるのである。 これは1年間のNHKの全受信料をも上回る巨額な投資である。  そこで当然このような計画を進める際の十分に検討された資金計画が必要となるのは 当然である。 《厳しさを増す経営環境》  ケーブルテレビの出現や、シーエスチャンネル、そして今年末開始予定の衛星デジタ ル放送など、映像メディアはますます多様化している。視聴者の好みは当然多岐に分か れていく。それはまさに受信料収入がますます徴収しづらくなることを意味している。 このような収入面の不安要因がある一方、支出の面においても、各放送局の放送会館の 建て替え時期も迫っていたり、また、スポーツをはじめとする放送権料の高騰などや著 作権料についても無視できないものになっている。これら財政面に山積する課題を、ど のようにして乗りきりながら、地上波のデジタル化計画を進めていく考えが見えてこな い。 2  急激な技術革新とポスト・デジタル化     《光とコンピューター》  さて、デジタル化を技術的に見ると、2つの部分に分けられる。ひとつは 放送局から放送所への光ファイバーによる伝送システムと、放送所からの電波送信シス テムである。いまや光通信においても発信する情報量の大容量化などすさまじい技術革 新が進んでいる。そして電波送信や電波受信の機器についても驚異的な技術革新のさな かにあることは言うを待たない。 《ナノ革命=微細化技術の革命が今起きている》  ちなみにIT革命あるいはデジタル革命の根幹に位置する半導体デバイスの分野の技 術革新の現状を見てみよう。ここでは「ナノ革命」と言われる微細化技術の革新が、2 1世紀の産業技術の決め手として先進国が火花を散らしている分野である。  ここに「半導体技術ロードマップ」という図表を見ていただきたい。これは昨年の秋 、日、米、欧、韓国、台湾などの主な半導体産業が加入しているSIA(セミコンダク ターインダストリー アソシエーション)で決定された技術開発の目標である。                   1999   2002    2005    2008 1 DRAM素子寸法(nm)    180    130    100     70 2 DRAMビット数(Gbit)    1     4     16     64 3 SoC素子数 (M Tr.)  12-25   25-100   50-500   100-2000    nは「ナノ」。1/100万ミリメートルのこと。 現在でも最先端の半導体素子の寸法は180ナノ。すなわち0.18ミクロン。 それが2008年には、0.07ミクロンのサイズにすることが目標とされている。 その結果ひとつの半導体チップにノせられる半導体素子の数は 1億個ないし20億個が目標とされている。 半導体チップののサイズはだいたい2センチメートル角の薄い長方体。 その中に1億個を軽く超えるトランジスターが存在するようになる。 驚異的な技術革新が進んで行くのである。  そして微細化技術の成果は、直ちに情報端末に現れる。携帯電話やアイモードの驚異 的な進化は、テレビと言う情報端末の姿すら変えてしまうかもしれないのである。  また光ファイバーの大容量化は、有線ケーブルによる通信と電波の境界を取り去って しまうかもしれないのである。  このように考えてみると、地上波デジタルが究極の放送の姿と考えて巨大な投資を続 けていったらよいのかどうか、ためらいを感じざるを得ないのである。膨大なデジタル 化対策の設備投資を行った後、放送の姿が革命的に変わり、投資が壮大な無駄になりや しないかと言うことである。そこで、今のうちからナノ革命や光ファイバーの大容量化 が進んだあと、未来の放送の姿がどうなるかを、もう一度しっかりと予測し、壮大な無 駄を作ることのないように配慮しておく必要があると考える。 3  民間放送業界への対応         地上デジタル対応には膨大な設備投資が必要である。巨額な投資圧力は、とくに 受信料と言う安定収入を持たない民間放送に対してより強烈な圧力となっていくであろ う。デジタル化を民間にも迫ることは、民間放送の経営基盤を弱めることにつながらな いか、さらにこの点についてのなんらかの支援策を考えるべきである。 4 地域密着型テレビ局の必要性      デジタル化は、巨額の設備投資を要求し、結果として巨大な放送産業のみが生き残れ ると言った事態をもたらすかもしれない。しかし果たしてそれだけで良いのだろうか。 デジタル化の技術的な良さはなくとも、地域に密着した、小回りのきく小さな放送局、 身近な放送局があっても良いのではないか。むしろ地方主権の時代には、このような全 国展開よりも地域の独自性を生かした放送局が必要とされるのではないだろうか。小さ な資本でも取り組めるような放送、NGOの活動としてもできるような放送もまた必要で ある。ホウソウを逆さまにするとソウホウ、まさにSOHO的な放送の余地も認めてお くべきではないだろうか。郵政大臣の所見を聞きたい。