国会通信 No.477

 【村上正邦氏への証人喚問を終えて】

2001/3/5 (マンデーレポート第477回の要旨)


  2月28日、前参議院議員村上正邦さんへの証人喚問を行いました。   証人喚問をするのは始めての経験。   しかも、全国民注視、野党のトップバッターなどと、   多くのプレッシャーのなかでの証人喚問。   けっこう肩がこりました。 以下は、その感想です。 ●17分。 とにかく時間が短かった。  全会派で2時間。  そして自民党が若干持ち時間をはきだしはしたものの  自民党28分。民主党34分と決まりました。  民主党の質問担当者は、簗瀬がトップバッター、  補充質問は桜井議員が行うことに決定していました。  また二人のテーマは、私が幽霊党員問題、桜井議員が  ものつくり大学関係とし、双方の持ち時間は17分と決めていました。  また、通常、時間配分は質問と答弁の両方を合わせた時間として  決めますので、私はKSDの幽霊党員問題と村上正邦さんの関連を、  17分間のやり取りのなかで、うきぼりにしなければなりません。  冗長な答えが返ってくるような漠然とした質問をすると、  結果としてどうなるでしょうか。  そんな下手な質問をするといたずらに答弁の時間を長くしてしまいます。  自分の持ち時間を村上さんに食いつぶされてはならない。  そのための簡潔・明瞭な質問を心がけました。 ●人よりも制度が問題。   私は、村上正邦という人物よりも、村上正邦をそうさせた  仕組みや構造がさらに問題であると考えます。  そしてそのことが感じられるような質問にしたいと考えていました。  まずは、自民党の参議院の比例の順位決定基準です。   すなわち新規党員2万人以上、後援会員100万人の獲得という基準です。  党費は、個人会員の場合年間4000円。党費は2年分継続することという  基準もつけられますから最低 2万×4千円×2年=1億6千万円   の党費納入が最低の基準です。  証人喚問の速記録のうち、この部分を抜粋すると 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ○証人(村上正邦君) 後援会は三百二十万でございます。            党員は七万と九万ですから十六万かと記憶いたしております。 ○簗瀬進君      その十六万獲得党員のうち、            KSDにお世話になったのは何万人ですか。 ○証人(村上正邦君) 平成十年は九万だと報告を受けております。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ということですから、 平成十年だけでも3億6千万円のお世話になっているということです。 こんな比例選挙の構造が、村上正邦さんとKSDの癒着をさらに 強めていったことは間違いありません。 だから、今回の質問にあたって、私が自戒したのは、 村上さんを単なる犯罪者扱には絶対にしたくないということでした。 問題の核心は、まさに初心を忘れさせ、権力欲のとりこに人間を変えていく、 システムや、構造、体質などだということです。 ●村上正邦さんだけか。  参議院の自民党の比例当選者は、大なり小なり、  村上的構図のなかで、当選した人たちがたくさんいます。  党費立替、幽霊党員問題は、村上さんだけではありません。  村上さんは、やりすぎた、目立ちすぎたから叩かれたんだと、  内心で思っている人がたくさんいるでしょう。 ●「悪魔は堕落した天使」 喚問のあたって、  村上さんの人物像を把握しておこうと思いました。  そして彼の著書を何冊か目を通しました。  特に、長女の明子さんが誕生の際に一命を取り止めたときに  寄せた詩、「タンポポ −明子に捧げるー」は印象に残りました。  そのときの気持ちを思い出しながら、真実を語って  ほしいと思いました。  そして質問の冒頭に、このことに少し触れました。  明子さんは、のちにダウン症にかかります。  そして予算委員会の理事の円さんは、明子さんの手を引いている  証人の姿を何度か見ていたそうです。  質問の打ち合わせのとき、ふとそんな話になったとき、  証人の障害者に対する思いには嘘がなかったはず、  などと円さんと話をしました。    村上さんは、貧困のなかで育ち上昇志向のきわめて  強い人だったようです。  そして常々、自分は「村上水軍」の末裔だなどと  言っていたそうです。  厳しい環境を、先祖の家系を精神的な支えにして乗り切った人、  そんなところは、なんとなく私の亡父を思い起こさせました。  私にも、こんな内面の葛藤がありました。    最初の質問の切り出しで、村上さんの目は、少しうるんだように  見えました。  謝罪を求める私の質問に対し、率直に謝罪もしました。  しかし、その直後から「私は犯罪者ではない」と、  くずれそうになる自分を懸命に建て直したようです。  そして結果としては証言拒否を連発する、  自己保身まるだしの答弁になってしまいました。    質問後に、国対のなかまと雑談をした際、  そんな私自身の心の揺れを話しました。  みんな真剣に話を聞いてくれたのはうれしかった。  そして木俣議員(彼はプロテスタントです)がぽつりと、  こう言いました。  よく牧師さんから  「悪魔ももとは天使だった。悪魔は堕落した天使なのだ」  と教えられるそうです。  村上さんも、かつては高い志を持った政治家であり、  参議院の独自性発揮のためにも情熱を燃やした人です。  しかし、いつしか「堕落した天使」になってしまった。  彼を堕落させ、また最後には彼を切り捨てて、  その影に隠れようとするもの、それが本当の悪魔(の構造)  だと思います。  それを変えない限り、また第2、第3の村上正邦は、  この地上に出現してくるでしょう。 ●国会議員は理想を語るべきか?   質問にあたって寄せられたメールの中で、  国会議員は理想を語るべきだ、検察官や裁判官とはちがうのだ、  このことを心してほしい、とのアドバイスもありました。  正直に言えば、私はあまり人の失敗を細かくあげつらうことは  好きではありません。  しかも、村上さんは、議員を辞職し、また逮捕目前の状況です。  「おぼれる人をさらに深みに追い落とす」ことには、  積極的な情熱を注ぐ気にはなれません。  しかし、真相を究明しない限り、政治の土壌や構造の改革はできません。  理想の実現のためには不可欠の追求だと思います。 ●たたき上げが犠牲者に。   自民党のスキャンダルで司直の手にゆだねられる人、  それは大体「たたき上げ」の議員です。  派閥の領袖であろうと、小物であろうと、その点は共通しています。  田中角栄しかり、村上正邦しかり。  官僚出身であり、霞ヶ関と深い関係を持つ人ほど、  刑務所の塀の中には落ちません。この事実は今回も同じです。  本当に問題とすべきは、政治と官僚の根深い水脈です。  旧内務省、旧大蔵省の大物政治家たち、この人たちは、  塀の上を歩きながら、なかなか内側には落ちません。  日本の闇の中心は、ここなのです。 ●あやまるべきは誰か。    村上さんは、委員長の質問に答えて、  議員辞職をした一身上の理由を国民に迷惑をかけた、  政治不信を高めてしまった、  その結果参議院選挙を目前にした皆さんに大きな迷惑をかけてしまった、  などと答えました。  しかし、これは大きな誤りです。  村上さんが謝罪すべきは、まずKSDの会員であり、  ものつくり大学に期待した若者たちのはずです。  私がお会いしたT金属販売の社長さんは、こう訴えました。  自分たち中小企業は、経済激変の中で大変厳しい環境に置かれている、  友人や親戚に必ず自殺をした人がいるくらいだ、  そんななかで災害や退職時のことを考えてKSDに入ってなけなしの  会費を払っている、その金の中から20億円以上の金が知らないうちに  自民党に流された、これはほんとうに許せないことだ、  と涙ながらに訴えられました。  村上さんは、古関さんと共謀して、  巨額の資金をKSDから奪い、  そのうえ、今回の不祥事によって、  会員の急激な減少の原因を作りKSDの事業自体の基盤を  著しく危うくしてしまいました。  村上さんがあやまるべきは、  まずはまじめなKSDの会員たちなのです。 ●公益法人だから、より問題。   ロッキードやリクルートは営利企業の贈賄事件。  KSD問題は非営利団体の贈賄事件。  私は、非営利の方がより悪質だと考えます。  なぜなら、みんなのためになるから(=公益)と言いながら、  その公益法人を隠れ蓑にして、  巨額の資金を自民党と自民党国会議員に垂れ流したのです。  無防備で善意にあふれた中小企業者を食い物にした点は、  まったく許すことができません。 ●政治・行政のエアポケット。   KSDの問題を別の見方をすれば、  行政・政治の不作為による犯罪と考えることもできます。  まずKSD本体は、中小企業者の共済事業という、  それ自体は社会的な必要度も高い事業です。  したがって本来はきちんとした法律や制度をつくって  行うべき重要なテーマです。  しかし、その部分には正面からの手当てをせず放置しておく。  そして、政府がやる代わりに、KSDという財団法人にやらせる。  そして、その財団法人を上手にリモートコントロールしていく、  こんな構図が浮かび上がってきます。    さらに、KSDにしてもアイムジャパンにしても、  財団法人の設立の許可は労働省のような中央官庁が握っています。  したがって、会社のような営利企業よりもより強い支配  (たとえば天下り)が可能となります。    この構図は、今回の証人喚問ではあまり触れられなかった、  アイムジャパン等の外国人労働問題についても同様なことが  言えます。  日本の外国人労働者問題については、わが国の政治はずっと逃げ腰です。  その証拠に、この問題についての根拠となる法律は  「出入国管理法」という法律でしかなく、  また村上さんが手をまわしたのはこの法律の運用のための  省令=法務省告示=の改正でした。  外国から来て日本に長期間滞在し、  働こうとする人たちについての「法律」が、  「出入国管理」という水際の管理で行っているのです。  「滞在」を正面から認めず、出入国についてのチエックという  便法でやっている、これがわが国の体制なのです。  このために、外国人を、実際は労働者として使用しながら、  「技能実習生」として受け入れるといった、  実態とあわないあいまいな制度を作り出してしまいました。  物事に正面からぶつかろうとせず、あいまいな制度を作り、  そしてそれを放置しておくからこそ、  多くの問題が生まれてしまうのです。  このような政治・行政のエア・ポケットを、  意図的に作り出し、そしてそこに見えづらい利権の仕掛けをしていく。  官僚の天下りと政治資金という利権の種をまいていく、  これが問題なのです。 ●真実の収賄者は自民党。  村上さんは、受託収賄者として証人喚問の翌日に逮捕されました。  しかし、真実の収賄者は誰でしょうか。  それは、自民党です。巨額の党費という「ワイロ」を受けとり、  その対価として、村上・小山という二つの議席をKSDに  提供したのは自民党そのものです。  司法が裁くべきはこのような「自民党の犯罪」です。  警察が逮捕すべきは「自民党」自体です。