国会通信 No.507

 【シビリアンコントロールの質問に答える】

2001/10/22 (マンデーレポート第507回の要旨)


●先週のレポートに対して、原人クラブ(私のネット井戸端会議)の  論客本間峰一氏(富士総研 シニア経営コンサルタント)から  「シビリアンコントロールは国会の役目ではなく政府の役目ではありませんか?  国会が抑えるのは自衛隊の暴走ではなく、政府の暴走ではないかと思います。」  と指摘したメールが送られてきました。 ●まずは、自分の言葉足らずと突っ込み不足を反省。  あらためてシビリアンコントロールについて調べてみました。  本稿の多くは西岡朗著「現代のシビリアンコントロール」(知識社)を参考に  させていただきました。 ●ときあたかも、テロ特措法案が参議院の委員会を通過。先週金曜日の  参議院議運理事会で29日(月)の本会議の日程を決めてきたところでもあり、  あらためてシビリアンコントロールについて若干レポートします。 ●今回のテロ特措法案の審議がいよい終わりに近づき、改めて感じるのは  今回も小手先の論議に与野党とも終始してしまったということです。  「湾岸悪夢」の与党と「政権幻想」の民主党の両ボケ論議といったら  言いすぎでしょうか。 ●シビリアンコントロールについての諸外国の法制を比較するといった観点も極めて  乏しかった。日本は、明治以後、海外に出した軍隊を完全に制御できず、シビリアン  コントロールの失敗の歴史を積み上げてきたのです。そんな個々的なケーススタディー  もするべきです。しかし、そのような具体的な歴史の検証も全くなかった。 ●私は以前にもマンデーレポートでシビリアンコントロールのことを取り上げたこと  がありました(参照http://www.s-yanase.com/ 国会通信97/07/28)。しかし、日本  ではシビリアンコントロールを詳細に検証した文献も実は少ないし、国会での論議の  積み重ねも意外にないのです。それはなぜでしょうか。 ●(シビリアンコントロールについての論議が少なかった原因) 1 論議の少なさの第一の理由は、自衛隊が「軍隊」がどうかという、   入り口の憲法論議に引っかかってしまったことが大きいのではないか。   シビリアンコントロールは、政治による「軍隊」の統制を論議するのですから、   その前提問題の「軍隊」と認めるかどうかの神学論争につまずいたままでは、   当然次のステップに進めなくなってしまうのです。   これがまずは第一の理由です。 2 次の原因というと、今回も「集団的自衛権論議」に焦点があたりすぎてしまい、   その結果、緻密なシビリアンコントロール論議まで行き着けなかったことが、   第2の理由としてあげられるでしょう。   以上の通り、憲法9条論議のドグマにはまってしまったことが、   国会での「シビリアンコントロール論議」を希薄にしてしまった、、、。   私はそんな印象をもっています。 ●さて前提の話はこのくらいにして 本間さんの質問に答えます。 1 シビリアンコントロールとは、なにか?   以下アメリカの政治学者ルイス・スミスの考え方を引用します。   私はこの見解がもっとも正しいものと考えます。したがって、   シビリアンコントロールを政府と軍の関係だけに狭く考える   必要はないと思っています。  @シビリアン・コントロールとは、『民主的な文民統制』というべきものである。   それは、軍事力を政治的に従属させるだけでは十分ではないということである。   国民の福祉を擁護し、その自由を確固たらしめるには、軍隊は、文民によって   構成され、かつ民主主義的な権威に対して従属していなければならないのである。   つまり「シビリアン・コントロール」は、「政治統制」と「民主的統制」の二つの   要素が不可欠である。   @(そのポイント)   選挙による国民の代表が、軍隊に対して   1 和戦の決定、   2 軍事目的のための資金と人員の裁決、   3 緊急権限に必要な事項の認可など、   包括的政策を策定し、政策執行の責任者に対して最終的かつ包括的監督権を行使するこ   とができることをいう。   @(具体的には)立法・行政・司法全体に対する要請   《行政府》においては、   1 政府の首脳部が文民で構成され、国民に対し責任を有すること、   2 軍首脳部は文民政府の指導のもとにあること、   3 軍部の運営は内閣の一員である文民の指示によることである。 《立法府》においては、 1 和戦の決定、緊急事態における権限の付与などを行い、 2 軍事予算を票決し、 3 軍事政策の執行に対し究極的な監督権を行使できることである。 《司法部》においては 1 国民の民主的な基本的権利が軍によって侵害されることのないように、   軍の責任を追及できること、 2 軍人の権利や自由について管轄権をもつことである。  このようにシビリアンコントロールとは、軍隊に対する民主的な統制のための  統治機構全体に対する統制原理と考えるべきではないでしょうか。 ●そしてもちろんその中でもっとも重きがおかれるのが、「国権の最高機関」  としての国会であると考えます。  上記の「和戦の決定」とは、まさに戦争開始と戦争終結の決定が、  国会の意思によって行われなければならないと言うことなのです。  私は、このように考えています。  したがってるから、今回のテロ特措法案で、自衛隊派遣を最初に判断するのは  内閣であり、国会の事前の承認を必要ないとしたのは、大変な誤りなのです。 ●シビリアンコントロールに「文民統制」という訳語を当てる事が良くあります。  これは誤りではありませんが、誤解のもとにもなっているのは要注意です。  シビリアン=市民=非軍人と解釈し、軍人ではない文官が軍隊を統制  していれば良いのではと狭く考えてしまうのは、誤りです。  例えば、ヒトラーも非軍人です。文民です。  ヒトラーはまずは、政党の党首として首相になりました。  そして、当時の大統領ヒンデンブルグが死去した1934年、  国民投票を行い、89.93%という圧倒的な支持を受けて、総統に就任しました。  総統とは、国防軍総司令官・大統領・首相を合わせた元首のことを言います。  すなわち、非軍人であり、合法的に成立した政府の代表がヒトラーです。  ナチズムのドイツでも協議のシビリアンコントロールは成立していたのです。 ●しかしシビリアンコントロールとは、上述したように、立法行政司法の  三権全体にかかる重要な原則です。政府のみに対する原理と狭く解すると  独裁者の軍隊の存在を容認することになりかねません。 ●ところで、わが国の自衛隊に対するシビリアンコントロールのシステムは、  昭和40年(1965)に、防衛庁が国会に提出した「シビリアン・コントロールについて」  という文書があります。しかし、そこに書いてあるのはあまりにも当たり前のこと  であって、あまり意味がありません。    → 《国会と自衛隊  防衛事務も「一般行政事務」であり、内閣は国会に対し連帯して責任を負う (憲法73条)、出動の際の事前、事後の国会承認(自衛隊法76条、78条)等。》 ●今回のテロ特措法では、武器を携行しての海外派遣でも、国会の事前承認は不要と  されました。その結果、さらに国会による自衛隊のコントロールは薄められている  というか、放棄したに等しい結果になってしまいました。 ●シビリアンコントロールについてのもっと深い考察を行い、基本的な法体系を  しっかりと構築すべき時期なのに、今回も小手先の対症療法で終ってしまったのは  きわめて残念です。 ●別ファイルで、西ドイツ基本法の規定を紹介します。  ドイツが、戦争の反省を踏まえ、連邦軍に対する厳格なシビリアンコントロールを  憲法上規定しているか、また国会に対し軍隊への絶対的な統制権をもたせているか、  ご参考にしてください。 ●かつての日本軍はヒトラーにうまく乗せられて、英米への戦争をしかけました。  ヒトラーは、密かに、「日本人は髪の毛が3本少ない」と言ったそうな、、、。  あらためて、歴史の教訓を学ぶことの出来ないこの国の将来は本当に危うい、  そんな暗澹とした気分に襲われています。 【先週の主な活動記録】 ■10月22日(月) 8:00AM 506回マンデーレポート 0:20PM 国対委員長と打合せ 0:30PM 議運理事会 0:40PM 議運委員会 1:00PM 本会議  ■10月23日(火) 10:30AM財務省レク・総務省レク 0:00PM 常任役員会 0:50PM 国対委員長と打合せ 1:00PM 議運理事会 2:30PM 裁判官訴追委員会 庶務・調査合同審査会 ★前神戸地裁所長の迷惑防止条例違反行為について  事実関係をさらに調査しました。 7:00PM 故中川繁様 通夜 ■10月24日(水) 1:00PM 故中川繁様 告別式 ★心をこめて弔辞を読ませていただきました。 5:00PM 音楽議員連盟第26回総会 ★芸術文化基本法の立法化、芸能実演者の権利保護、  著作隣接権などについて、芸術文化諸団体と意見交換を  しました。 6:00PM 芸術文化の夕べ ■10月25日(木) 11:00AM 経済産業省 北畑総括審議官レク 11:15AM 総務省 畠中総括審議官レク 0:00PM 両院議長主催 母国訪問海外日系人歓迎パーティー ★昨年6月、衆議院選挙直前に 国際交流委員長としてロス、  ニューヨークで遊説。そのときにお世話になった方々と再開ができ  うれしかった。 3:50PM 国対委員長と打合せ 4:00PM 議運理事会 5:30PM 議運理事会 ■10月26日(金) 10:30AM 共同通信・平野記者 取材 11:30AM 議運・春日井様と打合せ 0:00PM 音楽議員連盟 小委員会。 ★自公保提案の文化芸術振興基本法案、民主党提案の  芸術文化基本法案をたたき台にして超党派の法案を  作ることで合意。まずは斎藤斗志ニ(自)小委員長  が両法案を総合した試案を作ることに。  0:50PM 国対委員長と打合せ 1:00PM 議運理事会 ★テロ特措法関連法案が本日午後6時過ぎに委員会通過が確定。  来週月曜日29日に本会議を行うことを正式に決定。 4:30PM 狂牛病対策に対する県への申し入れ ■ 10月27日(土) 7:00AM フライングディスク協会 全日本アルティメット選手権大会式典 ★今年で第26回。92年の世界大会開催以来、宇都宮の地は憧れの場所。  今年も500人を越える若者たちが全国から集まりました。  10:00AM 栃木県高齢・退職者団体連合会第8回定期総会