国会通信 No.510

 【超党派の文化芸術振興基本法案】

2001/11/19 (マンデーレポート第510回の要旨)


●超党派の議員連盟は数多くありますが、なかでも  「音楽文化振興議員連盟」(略称音議連)は歴史も古く、過去の実績も  豊富です。例えば、前会長桜内氏のときには「音楽文化振興法」を  議員立法することに成功しました。現在の会長は橋本龍太郎氏。  私はこの議連の副会長をしています。 ●音議連のここ数年の目標は音楽にとどまらず、すべての文化を  みずみずしく発展させていくための基本法を作ろうということに  絞られていました。 ●多くの芸術団体や芸術家、芸能実演者のみなさんの要望を受けながら  民主党でもこの問題に取り組んできました。私も、議論に加わりながら、  以下のように民主党の基本方針をとりまとめたうえ、民主党案を作成し  与党案とのすりまとめを行ってきました。 ●民主党案の基本 1目的 芸術文化が、  人々の豊かな創造性をはぐくみ、  多様な価値観への理解を促すとともに、  経済及び社会の発展に資することにかんがみ、  芸術文化に関し、基本理念を定め、  並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、  芸術文化に関する施策の基本となる事項を定めることにより、  芸術文化に関する施策を総合的に推進し、もってゆとりのある豊かな  国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とする。 2基本理念 (1)「文化権」の明記   何人も、自由に多様な芸術文化を創造し、及び享受する権利を有する   ものとする。 (2)芸術内容への行政の不介入 施策を講ずるに当たっては、芸術文化に関する活動を行う者の自主性が尊重さ れなければならない。 (3)地方分権型芸術文化政策 芸術文化に関する施策は、芸術文化活動が地域の人々により主体的に行われる よう、地方公共団体が主導的役割を担うことを原則とする。 (4)民間の政策関与 政策立案・実施の過程で広く専門家・国民の意見を反映させる。 ●すりあわせは音議連の中に小委員会を作り与党案と民主党案の総合化を  はかりました。小委員会の座長は自民党の斎藤斗志ニ衆議院議員。  ここで様々な議論をおこないました。その一部を紹介します。 1 文化権論議  ★法制局は、あたらしい「権利」を作り出すことにはかなり消極的です。   かつて環境関係の立法の際に、「環境権」という文言をいれこませようと   必死になりましたが、実にガードは固いものがありました。    ★その理由は、法律として「権利」と明記するとそこから様々な波及効果が   出てきます。例えば「権利」「侵害」を理由にする損害賠償などの民事訴訟や   行政訴訟など。したがって、社会の発展にしたがって新しい権利的な観念は   どんどん発生してきますが、安易にこれを法律上「権利」と書き込むと   よけい混乱する、、、、どうも法制局はこのように考えているようです。   ★しかし、そんな消極的かつ保守的な姿勢では、新しい社会の変化には   対応していけません。このへんに日本の法秩序がいつも社会の変化に   おいていかれる原因があるのでしょうね。  ★「文化権」についても、はじめに出された与党案では、法制局の見解が   発揮されたのか、それらしい文言は入っていませんでした。しかし、   再三論議をした結果、最終案では基本原理の部分に以下のような記述が   入りました。  「文化芸術の振興に当っては、   文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることに   かんがみ、国民がその居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、   これに参加し、又はこれを創造することのができるような環境の整備が図られ   なければならない。」  ★法制局的な立場で、下線部分を解説すると、「生まれながらの権利」であるから、   なにもこの法律で新しい「権利」を作りだしたわけではないですよ、、、、と   一種の逃げを打っているわけです。  ★しかし、民主党の立場としては、この法律によってはじめて「文化を創造し、   享受する権利」としての「文化権」が陽の目を見たことになります。   この点はわが党案の大きな成果だったと思います。    2 芸術内容の行政不介入  ★民主党案の基本原則の2番目が、文化・芸術に対する行政不介入ということでした。  ★ドイツのヒトラーが戦争遂行の重要な柱として文化政策を推進したことは   史上有名です。私の好きなフルトベングラーという名指揮者も、宣伝相ゲッペルス   からの大変な圧力と暗闘しながら戦時下のベルリンで演奏活動を続けていました。  ★そんなことを思い出しながら議論したのは与党案にあった   「芸術文化の水準の向上」という文言でした。  ★私はこの言葉に強い違和感を感じました。   なぜなら、「水準」は誰が決めるのか、「向上」はだれが判断するのか、   が問題になるからです。  ★もし、お上が「水準」を決める、「向上」の度合いもお上が判断する   となれば、もちろん政府を批判する活動などは自然に排除されていきます。   「御用文化」の誕生、政府ご用達芸術家の誕生につながります。   一つ間違えるとナチスドイツの文化政策になってしまいます。  ★こんなことを執拗に主張。与党の皆さんも、この主張には理解を   示していただき、最終的には「水準の向上」文言は削除となりました。 3 著作隣接権の問題  ★著作者の権利が著作権であることは言うまでもありませんが、   著作者不明の活動もたくさんあります。そして、そのような活動でも   感動が生まれるのは、それぞれの演技者の表行動が大変重要な意味を   持っているのです。例えば歌舞伎や演劇など、このような芸能実演家   による創造活動も保護されてしかるべきです。このような著作権に   隣接する権利を著作隣接権といいます。  ★この点をしっかりと明記するよう主張しました。そして、最終的には   著作隣接権が明記されました。 4 列挙主義の問題点    ★今回の立法にあたって、与党案はかなり詳細に該当する各分野を   例示してきました。法案上明記されている分野は以下の通りです。   第8条 「芸術」 文学、音楽、美術、写真、演劇、舞踊、その他     第9条 「メディア芸術」映画、漫画、アニメーション、CG等、   第10条 「伝統芸能」雅楽、能楽(能、狂言)文楽、歌舞伎、   第11条 「芸能」講談、落語、浪曲、漫談、漫才、歌唱      第12条 「生活文化」華道、茶道、書道       「国民娯楽」囲碁、将棋、川柳        「出版物等」出版物、レコード    ★このように一つずつ書き込むことについては、私たちには異論がありました。   法律で文化の「格付け」をしているのではないか、   すきま文化や新しく創造された文化はもれてしまうのではないか、、、   などの疑問です。  ★橋本会長が提起した各地の「まつり」の文化や、伝統の「大相撲」など   も位置付けられないのではないか、等の疑問を提起しました。  ★法律自体が文化の「多様性」が重要であるとの認識を示しているし、   また各分野もかなり精査し漏れの内容にしているとの与党側の主張が   あり、付帯決議で「排除の論理」はとらないことを明記するという   ことで、最終的にはこの内容で同意しました。 ●以上の論議を経ながらまとめられた法案の構成は以下の通りです。 第1条(目的) 第2条(基本理念) 第3条(国の責務) 第4条(地方公共団体の責務) 第7条(基本計画の策定) 第8条(芸術創造活動の推進) 第9条 (メディア芸術の振興) 第10条(伝統芸能の継承及び発展) 第11条(芸能の振興) 第12条(生活文化、国民娯楽及び出版物等の普及) 第13条 文化財等の保存及び活動 第14条 地域における文化芸術の振興 第15条 国際交流等の推進 第16条 芸術家等の養成及び確保 第17条 芸術家等の養成機関の整備 第18条 国語の改善及び普及についての理解 第19条 日本語教育の推進充実 第20条 著作権等の保護及び利用 第22条 高齢者、障害者等の文化芸術活動の充実 第23条 青少年の文化芸術活動の充実 第24条 学校教育における文化芸術活動の充実 第25条 劇場、音楽堂等の充実 第26条 美術館、博物館、図書館等の充実 第27条 地域の文化芸術活動の場の充実 第28条 公共施設の建築に当っての配慮外観等についての調和 第29条 情報通信技術の活用の推進 第30条 地方公共団体及び民間団体等への情報提供等 第31条 民間の支援活動の活性化等 第32条 政策形成への民意の反映等 第33条 顕彰 第34条 関係機関等の連携等 第35条 地方公共団体の施策 【先週の主な活動記録】 ■ 11月12日(月) 8:00AM 509回マンデーレポート 9:30AM 読売新聞・高橋記者 取材 ■ 11月13日(火) 0:00PM 常任役員会 1:00PM 議運理事会 1:20PM 侵害保険協会・吉川様来訪 1:30PM 総務省選挙管理課・厚地課長 電子投票レク 2:00PM 訪日ヴァカロイウ・ルーマニア上院議長一行の参議院訪問 ■ 11月14日(水) 11:20AM 国対委員長と打合せ 11:30AM 議運理事会 11:40AM 議運委員会 0:00PM 本会議      ★証券税制改正関連二法案について趣旨説明。質疑。 2:00PM 下野新聞・川又記者 取材 2:30PM 議運理事会     ★与党側は明日予算委員会の採決後 緊急上程して     深夜になってもかまわないから、同日の本会議採決を要求。     民主党としては、参議院の独自性を発揮して定例日の16日     採決を主張。平行線。 5:10PM 議運理事会     ★上記の本会議立てについて最終的に委員長が判断。      わが会派主張の16日採決で決定。      マスコミ各社の大方の予想(→15日の即日上程・採決)は      はずれ。      補正予算について民主党は反対。      反対討論を谷ひろゆき参議院議員が行うことを決定。 ■ 11月15日(木) 9:00AM 音楽議員連盟特別委員会 芸術文化基本法について     ★昨日行われた総会で緊急事態発生。      橋本龍太郎会長が「大相撲」「まつり」の位置付けが      条文上不明であると指摘。そのための最終調整を行った。 10:00AM 民主党知的財産制度改革推進議員連盟 役員会 10:30AM  〃      日本弁理士会からヒアリング 11:30AM 総務省行政管理局 藤井審議官レク  0:30PM 北関東・北陸信越ブロック議員団会議 5:30PM 全国ガス友好議員懇談会 ■ 11月16日(金) 9:20AM 国対委員長と打合せ 9:30AM 議運理事会     ★冒頭、上野官房副長官からPKO法の改正案の国会提出、     そしてテロ特措法による自衛隊派遣の基本計画を本日午後の     閣議で決定する旨の報告があった。予算後の焦点はここに     移る。 9:40AM 議運委員会 10:00AM 本会議     ★補正予算及び同関連二法の採決。民主は反対。 ■ 11月17日(土) 7:00PM 県政記者との懇談会 ■ 11月18日(日) 11:00AM 民主党県連アフガニスタン難民等支援募金活動     ★宇都宮二荒山神社前で実施。      市民の大きな反応があった。