国会通信 No.547

  【ベトナム・インドネシア・東チモール本文】

2002/9/9 (マンデーレポート547の要旨)


●8月26日から9月3日まで、ベトナム インドネシア  そして東チモールの3カ国を参議院議運委員会として訪問し  てきました。今回はそのレポートです。 ●訪問の主な目的は、参議院として熱心に取り組んでいる  アジア各国との議員交流の促進です。今年5月、AIPO  (後述)の議員団が訪日し参議院を訪問。そして6月には  超党派の「AIPO推進議員連盟」が誕生しました。  「AIPO」とはASEAN議員機構のこと。  ASEAN加入国の議員外交を促進し、アジア地域の平和と  繁栄に議員の立場で積極的に貢献するのがAIPOの使命です。  そのことを各国の国会議長と確認しあうのが今回の訪問の  主な目的でした。またODAの様々な案件も同時に視察、  また現地邦人との意見交換も行なってきました。 ●インドネシアは4年ぶり2回目です。他の2国は初訪問。  東チモールは、今年5月の独立したばかりの国。ベトナムは  最近目覚しい経済発展を遂げている国。いづれもぜひ訪問  していたいと思っていた国です。 ●ベトナムからインドネシアへ、そして東チモールへという  順番で訪問したせいか、今回は独立国家のアイデンティティー  とはなにかということに深く考えさせられました。  私の言うアイデンティティーとは、その国の同一性を保たせている  何者かを指しています。 ●ベトナムは、ホーチミンという卓越した指導者の人格を、  国家のアイデンティティーの中心において国づくりをしています。  アメリカとの戦いに勝利を導いたホーチミン、  清貧な一生を貫いたホーチミンに国民の尊敬を集中させ  そこから国づくりのエネルギーを引き出していく。そんな  考え方が「ホーチミン廟」を見学したときにひしひしと  伝わってきました。 ●一方インドネシアは人口が2億2000万人。島の数は1万7000。  ほっておけばどんどん遠心力が働くのがインドネシアの宿命。  それを統一して独立させたスカルノ、さらにそれなりの経済的  発展の道をつけたスカルノ、この二人の政治家の指導力は  言うまでもありません。 ●しかし、ホーチミンと違うのは、政治家の個人資産作りに  寛容すぎる政治風土。両者の人格にアイデンティティーの  根源を求めることは困難です。それでは何をもって  インドネシアのアイデンティティーにしたら良いのか。  そこが見出せずに今後も迷走する可能性が強いのが  インドネシアのようです。 ●東チモール。独立のエネルギーは、今のところこの国の  アイデンティティーの根本です。しかしこれがいつまで  持続するのか。 ●超大国アメリカ。アイデンティティーを常に求め続けなければ  空中分解する国です。ブッシュ大統領は、テロリストとの  戦いをこのアイデンティティーの中心に置き、さらに当然のように  イラク攻撃を提案しようとしています。あまりにも短絡した  考え方で賛成できませんでした。 ●以下は今回の視察の記録です。 【ハノイの記録】 ■ホーチミン廟  ハノイの中心にある広大なホーチミン廟。  ベトナム戦争を勝利に導いた「ホーおじさん」が  思索をめぐらしそして息を引き取るまですんでいた質素な家  や庭園を見学。  (8/27 9:30)  ・廟には長蛇の列 国民の尊崇の強さを感じる。  ・ホーチミン主席の遺体は そのまま保存   微動だにしない4人の若い兵土に見守られ眠っている。   保存のためなのか廟内に強い冷気。   無言 静寂  ・ホーチミンは旧フランス総督府の豪華な建物への入居を拒否。   晩年をすごしたそまつな清貧の建物がそのまま保存。  ・無私無欲のアジア的リーダー。といった印象。 ■バクマイ病院 訪問 (〃 14:10) ・ 北部べトナムの中心的医療桟関 (北部31省を担当。南部30省はチョーライ病院) ・教育・医療訓練施設も併設。 ・施設機材の老朽化 ・98~病棟 機器の無償資金協力開始 ・01~プロジェクト方式の技術協力開始  べツド数 1400  常勤職員2019 医師391 看護婦590 助産婦18  検査技師薬剤士149 その他  べトナム最大 ・年間外来患者数 24万人 ・無償資金協力  建物 50億 医療桟器6億  (480床 手術室6室 分娩室3室)  ・技術協力 ・生命維持装置 4万時間使用 ・患者たちも日本の支援をよく理解している様子。  私たちに合掌して感謝する患者も。 ・高度な医療機器も、その後の技術支援でしっかりと  稼動している。 ・支援のあとのケアまで考慮に入れた計画が重要。   ■グェン ヴアン アン国会議長表敬 (〃 17:00)  べ卜ナムN04の実力者  (書記長→国家主席→首相→議長)  議長はAIPOの今年度の議長でもある。  参議院議長からの親書を届ける。 ■国会議事堂見学(〃 17:45)  国会議車堂入ロの壁に刻まれたホーチミン主席の言葉が印象的。  『我が党は政権党として、各党員及び幹部は革命道徳を持ち、  勤勉、かつ節約、清廉、公平、無私でなければならない。  我が党は清潔さを守り、指導者としてふさわしく、また  人民に対ちる忠実な下僕でなければならない。』  この言葉を聞いての感想。  ホー主席の思想の根本はマルクスレーニン主義というよりも  アジア的などこかに儒教思想のようなものを感じる。 ■ブー マオ国会対外委員長主催の夕食懇談会(〃19:00) ■文廟             (8/28 9:40)  11世紀に創建されたべトナム最古の大学を見学。  王族の師弟が学んだ。  15世紀以来の科挙合格者の氏名を列挙した82本の石碑は壮観  孔子廟が建物の中心。  ベトナムに深い需教の影響を感じる。  昨日の国会正面にあるホーチミンの言葉との関連性を感じる。          【ホーチミン市(サイゴン)の記録】 ■統一会堂見学(8/29 10:00)  南べトナム時代の  大統領官廷  1975 4/30解放軍の戦車が正面の鉄柵を破り無血入城  現在は上記の名前で一般公開 ■戦争証跡記念館(〃 11:00)  生々しい記録  実際に使われたギロチン台  ホルマリンにつけられた胎児  桔葉剤ダイオキシン  兵器の実験場    ★地震爆弾   直径100m以内破壊 3.2Km以内に振動  ★CBU-55B爆弾   半径500m以内の酸素を消滅  一人よがりの使命感  戦揚で主命を失なったカメラマンの使命が列挙。 【ジャカルタ記】 ■ギナンジャール国民協議会副議長と会見(8/30 9:00)  於インドネシア国会  アミンライス議長欠席 おわび  他3名の議員 同席  ギ氏は 経済企画閣僚を歴任 空軍少将。  バンドンエ科大卒。東京農工大にも1960-65 留学  日) AIPOぎれん結成の報吉  2003アセアン交流年 議員交流の活性化  国民協議会は、議員 職能代表 軍警察代表から構成。  8月示に憲法改正。  正・副大統領の決戦投票も国民投票に  国会議員は全て民選議員に  〔国軍・警察の任命議員は廃止〕  今までは大統領解任権まで有する強大な権限それが若干緩和。 ■アクバルタンジュン国会議長と会見(〃10:00)  於国会  AIPO=アセアン議員桟構  ★ア氏 57オ  イスラム系学生運動の闘士  ゴルカル党総栽  穏健イスラム主義者  2003年のAIPO議長予定。  同席 第一委員会委員長     議会交流委員長      国会500名  38名国軍警察は推薦  462名は選挙   第1党 闘争民主党   弟2党 ゴルカル党 ほか ■在留訪人等との意見交換会 (〃19:00)  30名の日本人の皆さんと意見交換。 ■Y君 来訪(〃22:00)  大学同期。日本現地法人役員。  彼はジャカルタ勤務は2度目。しばし  生真面目なインドネシア論を交す。  以下のとおり。 、、、、インドネシアのアイデンティティは何か。  1万7000の島に2億2000万人の人口。  9割はイスラム教だが、例えばバリ島はヒンヅー教、  東チモールはカトリックなど宗教も様々。  言語も様々。  ほおっておけば常に遠心力が働く国。  常にばらけそうになるこの国をまとめる為には  どうしたらよいのか。  求心力の中心になにを据えたらよいのか。  300 年のオランダ植民地であったという  「マイナス」の「アイデンテイティー」しかないのか。  飢餓の経験を味わったことのないこの国の国民にある  一種の甘えと怠惰。そして優しさ。  Y氏曰く。「この国に来た人の7割は、この国の人たちを  大好きになって帰る。しかし3割の人は、もう2度とこの国に  来たくないと思うだろう。」    ベトナムのホーチミン主席にあった「清貧の思想」は  この国のリーダーには求めようもない。  憲法改正の際にイスラム国教化の論議もあったと聞く。  しかし、結果としてそれを採用しなかったのは、  賢明な選択。奥深い智恵はもっている。 【バリ記】 ■インドネシア マングローブ惰報セン夕一(8/31 15:00)  ODA技術協力   専問指導員 井出さん 案内  マングローブは「海のゆりかご」と言われる。  地球の生態系を守るためにきわめて重要。  川に流される生活ゴミがマングローブの生えている海岸線に殺到。  さらに海に流れ込んだゴミが満潮時に海からマングローブの林に  逆流。後ろからも前からもマングローブはゴミの脅威に曝されている。  ペットボトルや、ビニール等の不滅の石油製品がマングローブの根に  張り付く。呼吸困難におちいったマングローブは徐々に枯死しつつある。  マングローブの保存のためには、インドネシア住民の生活ゴミ対策が  重要と言った結論。  東チモールでも市場とゴミの関係がクローズアップ。    インドネシアの人々も自宅の内外は清潔にする。しかし、そのゴミは  川に流せば、自然に海に運んでくれると考えているらしい。    不滅の石油製品は自然に帰らない。昔なら川に捨てれば、自然が  浄化してくれたものがそうはいかなくなってしまった。    またかつての宗主国、  オランダ(→インドネシア)、  ポルトガル(→東チモール)、  フランス(→ベトナム)、のいづれもが、住民の生活インフラ整備には  まるで無関心。    農業、商業、観光などの経済分野でも、環境分野でも、ゴミの問題は  深刻である。    「ゴミ処理よりも、食うことのほうが先さ」という論理を  どう乗り越えられるのか、辛抱強い対応が必要と感じた。   ■タナロット寺院 防波・護岸工事の有償支援 視察 (〃17:30)  ★海上に突きでた岩石の上にあるインドネシアでもっとも有名な  ヒンヅー寺院。  (※イ国民の9割はイスラム)  (※バリ島は例外的にヒンズー)  ★支援総額は95億。現在までの進捗率47パーセント。  ★夕月を背景とした同寺院の風景は有名。内外の観光客が集まっていた  但し天候は曇り 夕日は見えず残念。  ★寺院崩落の危機 インド洋の荒波の直撃。侵食  ★政府の依頼  ★日本エ営 コンサル夕ント    エ事会社 大成建設 五洋建設    ★たまたまマングローブ林のゴミの話が契機となって、ODAの対象を   もっと環境や生活関連のインフラ等に向けるべきだと話してると、   こんな話が飛び出した。    ★かつてODAとしてゴミ処理システムの提案を日本側がしたことが   あったそうだ。しかし、その提案は、該当地域の猛烈な反対に   あって立ち消えになったとか。  ★住民の反対の理由とは、ゴミ処理を生業にして生きている人々の   生活の手段を奪うことになるから。なるほど、ゴミを処理するために   様々な人々が関与し、それによって食べている実態があるのだろ。   ODAの難しさの一端を思い知らされたような感じがする。 【ディリ(東チモールの首都)記】 ■自衛隊ディリ宿営地 視察 (9/1 15:00)  02/2/15 自衛隊派遣の実施計画 閣議決定。3月から派遣開始。  02/5/20 チモ一ル民主主義共和国独立。  国連東チモール暫定行政機構(UNTAET)は国連東チモール支援団  (UNMISET)に改組。  現在、自衛隊派遣人員680名。(北海道から選抜)  ディリ スアイ マクアイ マリアナの4つの宿営地に分かれて活動。  ディリ宿営地の冷房の効くプレハブの宿舎が完成したのは1ヶ月前。  半年以上も昼間は40℃を越え夜でも30℃を下らないテントで生活。  業ム=UN支援団の活動に必要な幹線道路橋の整備にあたっている ★感想  国連のPK0活動は週6日勤務  朝7時から夕方5時までのハードな勤務によく耐えているのには感心。  その上北海名物の太鼓を住民に披露したり  韓国のPK0部隊と協力、住民とのサツカ−大会を開催するなど活躍。  東チモール国民の信頼と親しみを集めている。  努力は高く評価。 ■デイリ市内のコモロ市場  (〃16:30)  99/8 独立を巡る国民投票に際し  インドネシア国軍や民兵によってディリ市内の8割が焼失  市場を含む公共施設のほとんどが機能停止。  その復旧にJICAが技術協力  またNGOのADRAも協力。  ADRAの宮澤所長と環境開発担当の中里さんが  市場内を案内してくれた。  ADRAは Adventist Development and Relief Agencyのこと。  2000年度末から、ディリ市内の市場の回復や市場の運営等について  活動。    破壊された市場の再建築から始まって、市場のゴミ処理や  トイレの修理まで、実に多彩な活動をしている。  立派なものだ。 ■「焼けた家」で夕食。         (〃19:00)  焼き討ちにあった状態をそのまま残したレストランで食事。  ろうそくの光に照らされた野菜サラダは新鮮に見えつい手を出す。  ホテルに戻ってから腹痛そして強い下痢状態。  しまった。時すでに遅し。30分おきにトイレ。  ただ熱や悪寒等はない。単なる食あたり水あたりのたぐい。  それにしてもつらい。食欲も完全に喪失。 ■東チモール国会訪問        (9/2 10:00) ★全体会議  88名の議員  アジエンダについて  オーストラリアの作った建物  全員の席にマイク。挙手したものが順次発言。  発言中の議員はテレビ画面に大写しに。 10:35 ■ル、オロ議長と懇談  5月までは憲法制定会議  独立後は立法機関。  自由と民主々義に立脚。  多党制を保障。  12の政党が存在。  フレテリンが最大の与党。  オロ氏はフレテリン所属。  かつてはゲリラ戦の指導者。  小柄ながら精悍な面がまえ。    政府はフレテリンだけではなく有能な人も採用。  7つの委員会が議会にある。  月火は全体会議の日。  必要な法律を作るために来年まで開会  UNとポルトガルからの顧問が活躍中。 ★21世紀初の独立国家  400年の外国支配をはねかえした。  独立後3ケ月  1 基本的なインフラ フイジカル   財政  2 人々が経験を持つていない   人的ス夕ッフ 9/2 13:15 移動 ディリ→デンパサール 19:00 ■日本人会代表者や海外協力隊員、JICA関係者との意見交換会  JALの支店長有泉さんや、日本工営の大須賀さん、現地の方と  結婚して30年余がんばっている須戸さんなどと、率直な意見交換。  宗教のこと、歴史のこと、経済のことなど、インドネシアの  かかえるいろんな問題を話し合いました。