国会通信 No.552

  【やる気のみえない小泉首相】

2002/10/21 (マンデーレポート552の要旨)


●先週の18日 第155臨時国会が開会、12月13日までの  57日間の会期が決まり、その後小泉首相の所信表明演説が  行なわれた。その印象を一言で言えば、経済危機に取り組む  必死の決意が伝わってこない、気の抜けた印象であった。 ●所信表明演説の全文は、総理官邸のホームページで参照できるが  総理はそれをそのまま小声と早口で読み飛ばしたと言う感じ。  字数にするとしてほしいが  演説の字数は4500字あまり、時間にしても14分程度と、  調べたわけではないが、私の聞いた総理の所信表明演説の中  では最短の印象。通常は少なくとも20分くらいはやるのに  きわめてお手軽な印象を受けた。 ■外交問題について ●そのなかで比較的力が入ったのは北朝鮮問題にていての  以下のくだりであった。  そのまま引用すると  『 「他策なかりしを信ぜむと欲す。」これは、内閣制度草創期、  第二次伊藤博文内閣において外務大臣を務めた陸奥宗光の言葉です。  「他の誰であっても、これ以外の策はなかったに違いない。」  真の国益とは何か、考えに考え抜いた末の結論であるとの確信を  込めたこの言葉は、私自身の思いでもあります。   』 ●しかし、「これ以外の策はない」と確信できるほど、  「考えに考え抜いた結論である」と強調するのは、かなり強引な  身勝手な言い方だと思う。 ●特に、先週米側から流された北朝鮮核開発継続の事実は驚愕に値する。 1 北朝鮮はかつて日米に核開発中止の約束をした。 2 その代わりに日、米、EUは核開発につながるおそれの低い   軽水炉原発の建設と、エネルギー対策としての毎年50万トンの   重油の供与を約束。これは着実に実施され、軽水炉については   すでに基礎工事も完了する段階まで来ている。 3 この約束を明瞭に破っていることを北朝鮮から米国に明らかにした。 4 米側はこの事実を訪朝前の小泉首相にも伝えた。 5 小泉首相は、北朝鮮の重大な約束違背の事実をを知りながら、   国民にこのことを伝えず、平壌宣言に署名した。 ●このような推移を見ると、今回、米側から、北朝鮮の核開発継続  の事実がリークされたことは、日米の足並みの乱れ、北朝鮮ペースで  日朝関係がリードされることへの米国の懸念が現れている。 ●拉致問題ももちろん重要である。しかし、それと同様に重要なのは  すべての問題の背景をなす、東アジア全体の安全保障の枠組み作りで  ある。国内に配備済みのノドンを北朝鮮の1000発といわれるノドン。  その照準の一部は日本に向けられている。そしてその弾頭に核が装着さ  れるようになったら日本の安全保障の根底が崩壊する。そうならないように  全力をあげるのが北朝鮮問題の核心である。   ●この点で、今回の小泉首相の訪朝。確かに機を見るに敏であったことは  否定しない。しかし、日中の国交回復の際に行なわれた、重層的かつ  周到な準備と比較すると、総理、官房長官、外務事務次官、アジア局長と  実に少数の関係者だけで極秘のうちに進められたことの危うさ、そして  絶対に決裂させられないような状況を自ら作って北に出かけていくという  危険な冒険主義に私は大変な危惧を持つ。 ●今回の米側からの北朝鮮核開発継続のリークは、この小泉外交に対し  米側がかなりの不快感と警戒感を持っていることを明らかにした。 ●それにしても際は投げられた。もう後戻りすることは出来ない。  29日から始まる北との交渉については、アジアの安全保障をどうするのか  という基本にたって北の約束違反を厳しく追求すべきである。 ■経済問題について ●世間の耳目はどうしても北朝鮮問題に集中するのが昨今である。  しかし、もっと重要なのは経済問題である。特に不良債権問題の処理と  デフレ対策の二つの政策課題をどう位置づけるのか。これが  最大の問題である。この問題への小泉総理の方針がどうなっているのか  このことに私は最大の関心を払っている。 ●小泉政権が誕生して以来、株式市場は1年以上低迷を続けている。  結果として発行済みの株式総額はトータルで100兆円以上落ちた。  それはとりもなおさず、銀行保有株の劣化を意味し、また不良債権の  新しい発生をも意味している。 ●また、最近の地域経済の落ち込みは著しい。信金信組の50行以上の  破綻は、地域経済の活力を完全に奪っている。 ●自己資本比率に基づく査定を、大銀行から信金信組まで貫徹する  現在の金融システムは、金融機関を2極化し、金融庁の査定対象の  金融機関(大銀行から信金信組まで)と査定対象外の金融機関=サラ金  の二つに二分化している。 ●こんな硬直した金融システムのなかで、経済が元気になるはずはない。  そして不良債権を処理するだけでは、絶対に経済の活力は戻らない。 ●バブル崩壊を理由とする不良債権の処理はすでに終った。  今問題なのは、実体経済の活力のなさなのである。デフレによる  資産の劣化の中で、デフレを原因とする新たな不良債権が発生している  ことなのである。したがって、不良債権の処理問題に取り組みつつも  現在真っ先にやらなければならないことは、実体経済を如何に刺激し、  デフレ対策を先行させることなのである。 ●こんな考え方で所信表明演説を聞いてみると実にがっかりする。  経済問題にふれた小泉所信を以下にそのまま引用する。 『(1)デフレ克服に向け、政府・日本銀行は、一体となって総合的に 取り組みます。経済情勢に応じては、大胆かつ柔軟な措置を講じ、金融 システムと経済の安定を確保します。 『(2) 不良債権処理を本格的に加速し、平成16年度には不良債権 問題を終結させます。 『(3) ペイオフについては、決済機能の安定を確保するための制度 面での手当てを行い、解禁の準備を整えます。金融システム改革を進め る中、預金者の不安や混乱を避けるため、実施は、不良債権問題終結後 の平成17年4月とします。金融機関等の経営基盤を強化するため、組 織再編を促進する措置を講じます。 『(4) 不良債権処理の加速に伴う雇用や中小企業経営への影響に対 しては細心の注意を払い、セーフティネットには万全を期します。 『(5)産業再編、企業の早期再生や新規開業支援のための施策を強化 します。 『(6)税制については、持続的な経済社会の活性化を実現するための 「あるべき税制」の構築に向けて、抜本的な改革に取り組みます。現下 の経済情勢を踏まえ、1兆円を超える、出来る限りの規模を目指した減 税を先行させます。公正かつ簡素で分かりやすい税制を目指し、多年度 税収中立の枠組みの下で、全体を一括の法律案として次期通常国会に提 出すべく検討を進めます。 『(7)不動産や証券など資産市場活性化のため、税制を含め必要な措 置を講じてまいります。 『(8)日本経済を活性化させる大きな柱として、構造改革特区を実現 します。「規制は全国一律」という発想を、「地方の特性に応じた規制」 に転換します。400を超える提案に示された知恵と意欲をしっかり 受け止めて、教育、農業、福祉などの分野で、思い切った規制改革を 実行します。 ●読んですぐわかるように、まず具体策への言及がまったくない。 本会議での所信表明演説という制約はあるにしても、総理の演説の アナウンスメント効果は甚大なものがあるはずだ。にもかかわらず いかにも不充分である。 ★デフレ対策は「政府日銀の一体的取り組み」というのみで、 取り組みの具体的な言及はない。→(1) ★金融システムと経済安定のための「大胆かつ柔軟な措置」というの みでこれまた具体的な言及はない。→(2) ★雇用や中小企業のための「セーフティーネット」という発言はあるが、 言葉だけでそれがなにを意味するか具体的な発言はない。→(4) ★税制については、1兆円をこえる減税の先行を言いつつ、その法律案の 提出は次期「通常国会に提出すべく検討」しているそうである。 来年法律、実施は再来年、これでは遅すぎる。しかも 「検討」ということなので、次期通常国会に間に合わないことだって ありそうだ。 ★資産市場活性化、これこそデフレ対策の一丁目一番地のはずなのに、 「税制を含め必要な措置」と述べるのみで、ここでも具体策の言及がない。 肝心なことはまったくふれていない。こんなことでは臨時国会など開く 必要などまるでない。経済危機に悩み苦しむ国民を愚弄する態度である。 国民は、このような総理をもっと怒るべきではないか。 ■これが国家戦略か。 ●日本の21世紀戦略として、私が主張してきた知財戦略については若干の言及が あった。これに関する部分は以下の通りである。 『知的財産の創造、保護及び活用を国家戦略として進めます。』 ●国家戦略としての位置づけが与えられたことについては評価しないではない。 しかし、後にも先にもこの1行のみである。これが「国家戦略」についての 小泉総理の認識なのである。すなわち、彼は国家戦略の意味がまったく分かっていない 。 ●ケネディーが「月へ人を送る」ことをニューフロンティア戦略の象徴的 スローガンとしたことを思い起こすべきである。国家戦略とは、別の 言い方をすればナショナルゴールすなわち国家目標の設定である。 一言で済まされるようなお手軽なものではない。総理が総力をあげて 取り組むべきテーマが国家戦略である。立法・行政・司法の全分野で 国家の総力をあげて取り組むべきテーマが国家戦略でなければならない。 小泉総理はこのことをまったく理解せずに安易にこの言葉を使っている。 ●国家戦略の深い意味も、知的財産戦略を国家戦略とすべき理由の 双方の理解を欠いた首相に知財の問題が扱われることは、日本にとっての 大変な不幸である。 ●小泉さんの前任者、森総理は、ITのもたらす革命的な意味を解さずに IT政策を推進し、結果としてIT政策を手垢にまみれさせた。 そして、今回は、知財の意味を解さずにこれを軽軽しく国家戦略と うそぶく小泉総理。これ以上不幸な歴史を日本に繰り返してはならない。 【先週の主な活動】 ■10月15日(火) 14:30 議運委員部と打合せ、国対委員長と打合せ 15:00 議運理事会 18:00 安中俊夫様ご令室 通夜 18:00 イギリス大使館レセプション ■10月16日(水) 08:00 第551回マンデーレポート 11:00 安中俊夫様ご令室 告別式 13:00 日弁連 知的財産政策推進本部第3回会議 15:00 常任役員会 ■10月17日(木) 08:00 翔進会朝食会 11:30 連合「民主的な公務員制度の確率を目指して」参議院議長への要請 12:30 議運委員部と打合せ、国対委員長と打合せ 13:00 議運理事会 ■10月18日(金) 09:00 議運委員部と打合せ、国対委員長と打合せ 09:20 議員総会 09:30 議運理事会 09:40 議運委員会 10:00 本会議 ★議席指定、新議員の紹介(信田邦雄議員)。 今井澄議員逝去につき哀悼演説(自民党・阿部正俊議員)。 6常任委員長の辞任、選挙を省略して議長指名。 特別委員会設置。 10:25 倫理選挙特別委員会 10:30 経済産業部門役員会議 ★経済産業関係の各種プロジェクトチームの存廃につき 議論。私が座長の知財PTについては、もちろん存続を主張。 存続についての意見書を提出。 11:00 両院議員総会 11:05 議運理事会 11:15 議運理事会 13:00 開会式 15:00 本会議 15:30 参議院民主党・新緑風会参議院改革PT 18:30 面会1件。 ■10月19日(土) 14:00 民主党政策演説会 ★市内二荒山神社前で地元4国会議員で実施。 15:00 UIゼンセン同盟栃木県支部総決起総会 15:30 県連リーダー養成塾 ★民主塾の塾生の皆さんの気合いの入った模擬立候補演説を 聞きました。 17:00 来客 20:00 会合 ■10月20日(日) 10:00 藤井弘一後援会定期総会 13:30 第49回宇都宮地区労定期大会 13:30 第15回栃木県アームレスリング選手権大会