国会通信 No.705

  【入管法改正案の問題点】

2006/5/29 (マンデーレポート705の要旨)


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】入管法改正案はかなり問題である。 【2】具体的な問題点。 【3】付帯決議。 【4】アクセンチュア社の影 【5】先週の主な出来事 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】成立した入管法改正案はかなり問題である。 ●5月16日(火)、参議院法務委員会で入管法改正案についての採決  が行われた。民主党提出の修正案は、共産・国民新党が賛成してくれたが、  自民公明の反対で否決。そして、民主・共産は反対したが、賛成多数で  原案が可決された。この改正案は多くの問題点を含んでいる。そこで、  少しでも弊害を防ごうと、私が全会派を代表して付帯決議案を提案。  これは全会一致で可決された。 ●問題点の多くは、日本に入国してくる毎年700万人をこえる、外国人に対して  指紋採取を要求する点である。現在、入国外国人に対し、指紋の採取を要求しているの  は世界中でアメリカだけ。今回の入管法改正によって、日本は指紋採取を要求する世界  で2番目の国になったことになる。 ●在日朝鮮人への指紋採取の手続きを廃止したばかりなのに、突然の逆行。  しかも指紋情報の保存期間や、事後的な消去の有無、目的外への利用制限など、  肝心なことについては、明確な規定が置かれていないのである。テロ対策の  優等生になるために、そこまでアメリカ追随をする必要があるのかと疑問を感じる。 ●しかも、アメリカの指紋採取・管理手続きのシステムと、今回採用する新たな  日本に入国する外国人の指紋採取管理システムの設計者(したがって  事実上のシステム運営者)が同一の「アクセンチュア」という会社なのも、  非常に気になる点である。(後述) ●すでにわれわれのパスポートをとる際には「顔」情報が採取され、  パスポートのICチップに埋め込まれることになっている。すなわち、出国する  日本人の生体情報のうち「顔」は国家に管理されることになった。 ●他方、私たちの指紋情報は、犯罪でも犯さない限りは政府の管理下には、  まだなってはいない。しかし、これは時間の問題かも知れないのだ。なぜか?  たとえば、アメリカに入国する際に必ずとられた日本人の指紋は、アメリカ  政府から日本政府に還流する可能性は大いにありうるのである。  ちなみに、先ほど触れたように、両国の管理システムいずれもアクセンチュア作成  のシステムだから、還流する際のシステム障害は当然ゼロである。 ●入管法改正、共謀罪、アクセンチュアなどを通して、「監視社会日本」の完成、  そして、同時並行的に、日本人や日本国の基礎的なデータに対する、  米国支配の貫徹といった悪夢を見る思いがする。 【2】 入管法改正の問題点 1 すべての外国人(特別永住者等を除く)の入国時の指紋等の   生体情報の提供義務を課している点は問題。   外国人登録での指紋押捺制度を廃止(1992年特別永住・永住、2000年その他)   した流れにまったく逆行している。 2 現在指紋採取も行っているのはアメリカ合衆国のみ。   今のところアメリカに追随する国は、世界の中で日本のみ。   さらにブラジルなどは、アメリカの措置に強く反発、報復的に入国アメリカ人に   のみ指紋徴求しているほど。度はずれたアメリカ追随主義には反吐を催す。 3 指紋要求の範囲は、アメリカよりも広い。これには驚いた。   アメリカ合衆国(US-VISIT)すら、永住者を除いている。しかし、日本は   永住許可を与えたものにまで、入国の際に指紋を採る。やりすぎではないか。   極端な排外国家になりそう。 4 入管政策以外の利用について、最後まで政府は明確にしなかった。   入国手続き完了後の即時廃棄、一定期間経過後の消去も明言しない。   取得した生体情報をデータベースとして保管し犯罪捜査などに利用する   余地もありうるのである。 5 データの保管・利用に関する規定がない。   これについては、省令すらなく「内部の運用基準」でしかない。   →情報の流出の危険とその被害の甚大性 6 外国政府(特に指紋情報をとっているアメリカ)との連携の可能性。   外国政府への情報提供(入管法61条の9第1項)、   外国政府から日本国民のデータ受領(同条3項3号参照)   →日米一体となった、監視社会化の方向性がとても心配。 7 法務大臣の退去強制手続きの乱用の恐れあり。   テロリストの定義が極めて曖昧であり、「恐れがあると認めるに足る相当な理由」   があれば、外国人に対する退去強制が恣意的に行われてしまう。日本政府の   政策や方針と異なる言動をとしただけで、「おそれ」がありと認定される   危険がある。 【3】入管法改正案につけた付帯決議。 ●以上のような多くの問題点が委員会の審議で指摘された。  自民・公明の委員もわれわれの指摘には大いに賛同する雰囲気もあったが、  さすがわが党の修正案に賛成するまでには至らなかった。しかし、付帯決議に  ついてはかなり前向きに対応してくれた。結果として、衆議院の委員会審議では  触れられなかった、今後の再検討、消去の可能性、適正手続についての言及  などかなり踏み込んだ付帯決議となったのは良かったと思う。   ● 全会一致で可決した付帯決議は以下の通りである。 一 個人識別情報として外国人に求める指紋情報の提供については、   指紋の利用に係る国際的動向を勘案するなど、その実施時期を慎重に定めること。 二 提供された個人識別情報については、その保護に万全を図るとともに、   保有期間は、本法の施行後の運用状況及びプライバシー保護の必要性を勘案しつつ、出   入国の公正な管理に真に必要かつ合理的な期間とし、   期間経過後は直ちに適切な方法で消去すること。   また、自動化ゲートの利用のために提供された個人識別情報については、   その措置に係る登録が効力を失ったときは、直ちに当該個人識別情報を消去すること。 三 提供された個人識別情報の出入国管理の目的以外の利用については、   慎重に判断し、必要最小限なものとすること。   四 個人識別情報のうち指紋情報については、科学技術の進展、国際的動向等を   勘案して、その提供義務化の要否、提供を義務付けられる外国人の範囲などを   必要に応じ再検討すること。 五 新たに退去強制の対象とする「テロリスト」の認定に当たっては、恣意的にならな   いよう厳格に行うとともに、退去強制手続を行うに当たっては、適正手続の保障の理念   に照らし、「テロリスト」と認定するに至った事実関係等を明確かつ具体的に示し、   退去強制を受けようとする者が十分に反論を行う機会を与えること。 六 自動化ゲートの導入後においても、同ゲートを利用しない者に不便を来さないよう   、出入国手続の一層の迅速化に努めること。 七 個人識別情報提供の義務化については、特に近隣諸国等に対する十分な説明と広報   を行うなど、観光立国行動計画の推進を阻害することのないように努めること。 八 国民の安全・安心を図るため、テロの根源的解決に向けた諸施策も   積極的に推し進めていくこと。また、テロ対策を進めるに当たっては、難民条約や   拷問等禁止条約の趣旨に反することのないように留意すること。   右決議する。 【4】 アクセンチュア社の影 ●入管法改正案の審議の際、多くの議員に、「アクセンチュア」社の名前が  テイクノートされたと思う。アクセンチュア社の存在を、国会で始めて取り上げたのは  社民党の保坂衆議院議員。彼のホームページもぜひ参照してほしい。   ● さらに同社に対する懸念を、私にしっかりと伝えてくれたのは、共謀罪対策でも  中心的に活動している海渡雄一弁護士であった。両氏の指摘や、委員会での  松岡議員の質疑などを総合すると、アクセンチュア社と指紋管理システムの関連につい  ては以下のような事実関係が浮かび上がってくる。 1 日本の入管システムの開発を受注したアクセンチュア社は、   US-VISIT(アメリカの指紋管理システム)を100億ドルで落札した会社である。 2 同社は、かつて日立が扱っていたわが国の入管システムの刷新可能性の   調査を行った。 (平成17年1月 報告書提出 受注額:5880万円) 3 2を具体化するための最適化計画を受注し膨大な仕様書を作成した。   (平成17年6月         受注額:9492万円) 4 最適化計画仕様書に基づく、認証システムおよび自動化ゲートシステムの   試行・運用・および実証実験業務を落札した。   (平成17年9月         落札額:10万円) ● 今回の入管法改正がらみでのアクセンチュア社の関連は以上の通りである。   自分でシステムを設計し、システムの実験業務を自分で落札するといった、   自作自演や、膨大なシステムの試行・運用・実験がたった10万円というのも   おかしな話ではある。さらに、成田の実験施設を視察したが、自動ゲートや   自動認証システムの機器がすでにおかれてあったが、その機器には   必ずメーカー名とアクセンチュア社の名前が目立つように表示してある。   当然、機材メーカーとアクセンチュア社の間には、ロイヤリティーやコンサルタント   の支払い契約が行われていることが推測される。 ● いづれにしても、日米の入管情報の相互流用、そこに関与するアクセンチュア社の   関連、アクセンチュア社と日本の聞き納入業者との関係など奥深い問題がありそうである。 ● さらに保坂氏、海渡氏の調査によれば、入管がらみ以外の分野にもアクセンチュア   の関与があるらしいとのこと。たとえば、「次期登記情報システム」や、「検察総合情   報管理システム」などなど、バミューダに本社を置くアクセンチュア社は、「登記」「   検察」「入管」のデータベースに深く関与し始めているとのことである。 ● 確かに、巨大データベースの統合的な運用などといった分野は、わが国にとっては   決して得意な分野ではない。しかし、だからといって、国家の存立にかかわるような   基礎的なデータの管理を全面的に外資系会社に依存してしまってよいはずがない。   法務部門会議でも、アクセンチュア関連の集中ヒアリングを行うべきであるとすでに   提起してある。私としては、今国会中に、各省庁宛に対して、アクセンチュア社との   関連を総合的に明らかにするよう質問趣意書をぶつけてみるつもりである。 ● 読者の皆様にも、アクセンチュア社関連の情報があればぜひとも教えていただきたい。 【5】 先週の主な出来事 ■5月22日(月) 08:00 第704回マンデーレポート 12:30 民主党議員総会 13:00 参議院本会議 18:30 民主党地方自治体フォーラム懇親会  19:30 民主党地方自治体フォーラム栃木県関係議員懇親会 ■5月23日(火) 09:50 参議院法務委員会理事会 10:00 参議院法務委員会 ★刑事施設法改正法案(いわゆる代用監獄法案)について  質疑。民主党からは前川・松岡両議員が質問に立つ。 17:00 民主党憲法調査会衆参合同会議 ★国民投票法案についての民主党案について決定。 ■5月24日(水) 08:00 民主党法務・財金合同部門会議 08:30 民主党法務部門会議 ★共謀罪法案についての対応を協議。  与党の強行策はかなり後退したようである。  ただし、与党の再修正案でも、対象となる刑罰の膨大さは  相変わらず。引き続き、越境規定と「5年を超える」犯罪に  限定していく修正を勝ち取ることに全精力を傾けることを  確認。 09:30 民主党議員総会 10:00 参議院本会議 10:30 全建総連栃木県建設労働組合横田様陳情来室 ■5月25日(木) 08:00 英米における共謀罪の実態についての院内学習会     講師:亀井源太郎(首都大学東京 法科大学院准教授)     山口響(一橋大学大学院博士課程) 09:50 参議院法務委員会理事会 10:00 参議院法務委員会 13:15 参議院法務委員会視察(東京拘置所・警視庁本部留置場品川分室) ■5月26日(金) 08:00 日米欧総合安全保障議員協議会平成18年度定期総会及び勉強会 09:30 民主党議員総会 10:00 参議院本会議 ■5月27日(土) 10:00 栃木県高等学校教職員組合第56回定期大会 10:00 栃木県司法書士会平成18年度定時総会 13:00 宇都宮市制110周年記念式典 15:30 熊谷宏様ご子息結婚披露宴 18:00 故小池繁様弔問 19:00 民主党栃木県第2区総支部国政報告会 ■5月28日(日) 09:30 ねんりんピックとちぎ「太極拳交流大会」 11:00 故黒崎弥重様告別式 13:00 故松島チヨ様告別式