国会通信 No.709

【小さい中央政府・大きな地方政府】

2006/6/26 (マンデーレポート709の要旨)


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】「小さい中央政府・大きい地方政府」 【2】質問主意書への回答来る(詳細は来週)。 【3】石橋事件についての控訴取り下げ要請。 【4】先週の主な出来事 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】 「小さい中央政府・大きい地方政府」 ●「小さな政府 vs 大きな政府」研究会は、6月12日  千葉大学教授の新藤宗幸先生をお招きし、   ――「小さい中央政府・大きい地方政府」への制度設計――  というテーマの話をしていただいた。当日は第707回で触れた  共謀罪についての法務大臣申し入れと時間が重なってしまい、  冒頭のご挨拶しか出来なかったが、大変示唆に富む内容であった。  以下に、その要点を整理した。 ● 1 小泉「骨太方針」の欺瞞性    小泉政権の「骨太の方針・2006」によれば、「小さい政府」を目指すとされている。   しかし、実際には「大きな中央政府・小さな地方政府」に変えようとするものである。   目指すべきは「小さい中央政府・大きい地方政府」に、その逆をやっている。 2 地方の政策裁量はそれほど拡大していない。   第1期「三位一体改革」(「骨太方針03」)では、4兆円の国庫補助負担金が廃止さ   れ。うち1・2兆円分は地方の政策裁量につながってるが、2・8兆円は単なる補助負   担率の引き下げにすぎず、地方の政策裁量の拡大にはなんの寄与もしていない。 3 不交付団体の「人口」を持ち出したのはすり替えである。     「骨太03」の地方交付税改革では、不交付団体の数ではなくて、不交付団体の   人口比率を高めるとしているが、これは問題の本質をすり替えている。   住民税を10%でフラット化した上で、3兆円規模を税源移譲するとのふれこみだが、   国土の5%にすぎない1都3県が、日本の総人口の25%以上を占めている現状では、   不交付団体で暮らす人口の比率が高まるのは当たり前である。結果として、   地域間の税収格差は余計拡大することが問題である。 4 見かけ上の「小さな政府」   このように、政府の進める歳出・歳入一体改革は、見かけ上は「小さな政府」を   目指すかのようだが、実際は「大きな中央政府・小さな地方政府」に向けた改革   としか言いようがない。 5 独立法人は「表紙」の付け替えでしかない。   霞が関は独立行政法人を受け皿に人員を減らしているが、これは表紙の   付け替えだけで、実質は変わらない。独立法人を活用した対応が出来ない   地方は結果として国以上の給与・人員削減を要求されることにつながる。 6 機関委任事務は全廃されたものの実質は変わらず。      2000年4月の、第1次分権改革で機関委任事務制度は全廃されたが、   政令、省令、告示、通知、補助負担金の交付要綱等で縛っている規律密度は   全く変わっていない。悪名高かった機関委任事務はなくなったものの、   中央の地方に対する縛りの実態、そしてその密度(すなわち規律密度)は   ほとんど変化なし。地方はスリムになっていくだけで、「大きな中央政府」の実質に   変わりはないのである。 7 新型交付税の評価は低い。   竹中プランにおける新型交付税では、面積と人口のみに基づいて決定   されることが喧伝されている。しかし、これは、地方の実態を無視するものである。   大事なことは規律密度を緩和することである。   地方交付税は第2補助金となっている。事業義務付けなどを見直すべきである。   機関委任事務がなくなって、法定受託事務となったが、何の変化があったの   だろうか。権限の委譲がなければ無意味である。 8 地方の新たな努力も必要   3桁国道や一級河川水系を都道府県に移管するとなると、県境で切れている   ので難しいといった意見が地方の側から出てくる。もしそのような困難がある   ならば、広域連合制度を利用するといった方法も地方にはある。地方も努力   すべきであって、総論賛成、各論反対ではいけない。 9 税収の自治体格差の現状     地方に身の丈に合わせろ、つまり税収に応じた行政を行えとするのではなく、   基盤の整備が大事である。   税収の自治体格差は全体の平均を100とすると、   所得課税で東京は176、沖縄は72である。   消費税では東京が120、沖縄が80となる。   所得課税は税源偏在が大きいのでこのようになる。 10 あるべき地方の税財源   身近な地方の税源は経済変動や、税源偏在の小さい安定した税源であるべき。   消費税をきちんとした付加価値税とした上で、委譲税源とすべきである。   調整税源は税源偏在の高いものであるべきである。   調整する必要のないものを調整税源の中に持ってくるのは本末転倒である。   所得課税を調整税源とし、消費税を地方の税源にするように法的に位置づける   べきである。   地方財政調整基金をつくり、地方の代表者を入れた財政調整委員会を   つくるべきである。それを欠いた新型交付税では「大きい地方政府」には   つながらない。 11 地方への縛りの緩和のためには   2000年改革の機関委任事務全廃はよいことだが、あまり高く評価してはならない。   実態を見る必要がある。内閣法制局という既存法令との整合性や政策内容の吟味も行   っている機関があるが、これとは別に、地方分権という観点から法令審査委員会(仮称   )といった機関を内閣につくるべきである。規律密度が強化され、実質的な集権化が行   われている現実があり、この機関なしには歯止めをかけられないだろう。 12 機関委任事務復活の動きに要注意   第28次地方制度調査会が道州制のあり方について答申しているが、   危惧されるのは機関委任事務を復活させる動きが一部にあることである。   例えば、東北地域局みたいな形で統合し、そこに権限を下ろすと、   戦前期の普通地方行政機関における知事に似たようなものになりかねない。 13 霞ヶ関の公務員制度改革の本質はここにある。   独立行政法人のような周辺ではなく、霞が関の公務員制度本体の改革が   重要である。それは何かといえば採用の方法である。   定数削減が問題なのではなく、「1種、2種、3種別、省別採用」をやめること   のほうがより大事である。   2種の99%は大卒。したがって、1種、2種、3種はかつて学歴区分だったが、   現状では実質的に「昇進可能性」の区分となってしまっている。   年功序列が維持されており、早期退職が勧められていて、独立行政法人を   やたらとつくることにつながっている。   局長級の最高幹部ポストは政治的任命、または自由任用制に変えるべきである。   だが、行政の継続性を理由になかなか変わらない。   事務次官そのものは法的根拠があるが、事務次官会議には法的根拠がなく、   因習として残されているにすぎない。副大臣がいる以上、事務次官も廃止し、   副大臣会議によって取って代わるべきである。 14 質疑応答における新藤先生の発言要旨  (A)中央政府の税源は累進性を高くした直接税を中心とし、府県税として付加価値    税を導入するとした1949年のシャープ勧告の原点に帰るべきである。 (A) 道州制では二層制ではなく、三層制でもよいのではないか。    フランスには道があるが、県を廃止したわけではない。 (A) 分権は垂直的に権限を下ろすことだけを言うのではない。リアラインメント(    realignment、再編成)である。市はフル装備である必要はなく、県に上げるべきは上    げてもよい。県に権限を上げるべきは上げよと言うと、市を二級自治体扱いすると文句    を言う人がいるが、それではいけない。 【2】質問主意書への回答来る(詳細は来週)。 ●6月13日付けの国会通信第708号で、アクセンチュア社関係の質問主意書を  提出したこと、およびその質問内容の全文を掲載しました。先週の金曜日、これに  対する内閣総理大臣名の6月22日付答弁書が送られてきました。 ●6ページに及ぶ答弁書の内容については次回に掲載いたします。 ●ただ、第1の質問で政府とアクセンチュア社との委託契約にはどんなものがあるかと  全般的な質問をいたしました。それに対しては「膨大な作業が必要であるため、網羅的  にお答えするのは困難であるが」としながらも、たとえば、宮内庁、公正取引委員会、  法務省、国税庁において」アクセンチュア社と委託契約が存在することを認めています。 ●この法務省のみならず、宮内庁、国税庁、公取、、、さまざまな秘密情報が存在する  省庁の名称がさらっと出てくるのには驚きを禁じえません。 ●質問項目と回答の対比したものは次週以降に明らかにしたいと思います。 【3】石橋事件についての控訴取り下げ要請。 ●来週月曜日のマンデーレポート実施後、知事に対して須藤正明君のご遺族から  出された損害賠償事件(第1審 原告勝訴)について県側が控訴しましたが、  控訴取り下げの申し入れを行うことになっています。 ●第1審の判決は、警察の市民に対する救護義務を法的レベルで認めた画期的  内容のものと私は評価しています。県側はこの判決の意義を、むしろ率直に  受け入れ、全国に先駆けて「市民のための警察づくり」に取り組む絶好のチャンス  だったはず。控訴はきわめて残念です。そんな趣旨を福田知事に訴えたいと  考えています。 ●申し入れ書の全文は次週以降に掲載いたします。 【4】先週の主な出来事 ■6月19日(月) 08:00 第708回マンデーレポート 09:30 民主党県連「連合栃木との定期協議」 11:00 法律相談 ■6月20日(火) 10:00 民主党法務部門会議 13:00 栃木県職員労働組合第82回定期大会 ■6月24日(土) 13:00 鹿沼市トランポリン協会第4回鹿沼市トランポリン大会 14:00 故矢島ナカ様告別式 18:30 宇都宮中央ライオンズクラブ最終移動(LL同伴)例会 ■6月25日(日) 09:00 立正佼成会宇都宮教会「新道場入仏落慶式」式典・祝賀会 13:30 民主党県連「新交通システムを考えるシンポジウム」 16:00 (社)宇都宮青年会議所40周年記念式典・懇親会 18:30 民主党県連「国会議員・県議会議員・連合役員との懇親会」