国会通信 No.710

【LRTと高層マンション】

2006/7/5 (マンデーレポート710の要旨)


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】 県執行部との懇談会開催 【2】 県都のLRT構想にかけている街づくりの視点。 【3】 高層マンションで賑わいは戻るのだろうか。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】県執行部との懇談会開催 ●7月3日(月)午前11時から、都内の都道府県会館で、  国会議員と県執行部の懇談会が開催された。国会閉会中ということ  もあって、出席の国会議員からは、各自かなり長めの問題提起や  意見開陳があった。聞くべきものも多々あったが、結果として2時間を  越える長時間のやり取りとなった。その結果、多くは国会議員の発言で  費やされ、県側の十分とは言いかねる応答に対しての再質問も自粛  せざるを得ず、結果として相変わらずの消化不良で終わってしまった。 ●私は、発言者の最後になったが、以下の6点について発言した。  1.県の知財戦略について    栃木県の優れた農業資源を背景に、イチゴの「女峰」をはじめとする    種苗やノウハウなどの農業面での知的財産権が蓄積している。    知的財産権の創造、活用、保護の全体にわたった県としての知財戦略    を確立すべきである。また農業試験場の研究員などの研究に対する    報奨制度などの基本的なルールはどうなっているか。     2.情報戦略    予算要望の中に情報格差の解消策があるが、情報戦略についての    栃木らしい独自性を打ち出すべきである。県内の養護学校には、    障害者のためのコンピューター活用策について先進的に取り組んできた    教師もいると聞いている。 高齢者や弱者に対して優しいコンピューター社会    を作るといった目標を掲げてすすむべきである。  3.国際外交の舞台としてのキャンプ○○構想    「キャンプ那須」も良いと思うが、日光も明治以来、海外から多くの     要人が訪問している。今も英国大使館の別荘がある。「キャンプ日光」も     ぜひ考えるべきであろう。  4.警察官の意識改革    先週、いわゆる石橋署問題で控訴取り下げの要請をした。    事実誤認を看過できないという知事の説明であったが。    市民、県民を積極的に守る新しい警察作りという点では    認識は一致したと思う。須藤さんのみならず、宇都宮の散弾銃発砲    事件でも、警察の住民の窓口とも言うべき「生活安全課」の対応が    問題となった。同課の強化を含めて、警察官の意識改革に全力を    挙げるべきだと思う。           5.LRT問題(後述)  6 宇都宮の二荒山神社前の高層マンション問題(後述) 【2】 県都のLRT構想に欠けている「街づくりの」視点。 ●LRTとは ライト・レールウエィ・トランジットの略。  直訳すると「軽・軌道・交通」、すなわちヨーロッパを中心に見直され  つつある路面電車のことである。 ●知事は、予算重点要望の文書には記載されていなかったが、  あえてLRT構想について言及し、推進の方向を強くにじませた。 ●宇都宮市の同構想については、大きな政治的争点になっているが、  私はその導入については慎重である。 その理由は 1 LRT導入に不可欠の街づくりの視点が欠けている。 2 ヨーロッパのLRTは、町の中心部に人を集めてくる機能が中心。   渋滞解消や、東西移動のためのLRTなどといった単線路線では   意味がない。 3 損益分岐点を1日4万人前後の利用者としているようだが、   見通しが甘すぎる。仙台市の地下鉄ですら利用者を1日2万5千人で   計画。しかも現状は1日1万6千人程度で赤字が累積している。 ●車の普及率が全国で常に1、2位のわが県民の車依存指向の  発想を変えない限り、巨額の赤字の累積が予想される。 ●LRT沿線に、病院や文化施設そしてアミューズメント施設などの  人が集まってくる施設を作るなど、総合的な街づくりとセットでやらなければ  意味がないと思う。その肝心な「街づくり」の視点が見えない。だから  慎重にならざるを得ないのである。 ●そんな指摘をしながら知事の考えをただした。しかし、国会議員の議連の言及や  新たな補助金の話しなどに触れただけで、肝心な損益分岐点の質問には  答えなかった。 ●補助金といっても天から降ってくるのではない。結局国民・県民の税金。  そんな安易な考え方では財政再建など最初からあきらめたほうが良い。  知事の安易な姿勢がほのかに見えたようで伺えたようで、たまらず安易な  補助金頼み行政では困りますよと苦言を呈した。 【3】 高層マンションで賑わいは戻るのだろうか。 ●懇談会では、宇都宮の中心部で建設予定の高層マンション問題も  取り上げられた。この問題も、実はLRTの問題と関連している。 ●宇都宮市は、二荒山神社の門前町として発展してきた歴史的経緯があるが、  先年、参道の東西にあった老舗の百貨店が倒産した。以後、その跡地の  活用をどうするかで、市も県頭を悩ましてきた。その苦労はよく理解できるものの、  結果として、市街地再開発事業として、東側に8階建て、西側に24階建ての  高層ビルを作ることになったのだが、果たしてそれでよいのだろうか。 ●宇都宮中心部の地盤沈下が叫ばれてから久しい。そんなかで、宇都宮市は  再開発のビジョンを作った。それは、二荒山神社と宇都宮城跡の南北を結ぶ  中心軸を設定し、「にぎわいのまち宇都宮」を作るといったビジョンを策定した。 ●今回の高層ビルは、このビジョンとどうも矛盾しているような気がしてならない。  いくつか指摘すれば 1 東側は8階だからまだしも、西側は24階建て。これでは、二荒山神社を   中心とした町のシンボルとなるべき風情や景観は完全に損なわれてしまう。 2 24階建てのうち1、2階のフロアーは地権者である二つの金融機関。   そして3階以上はマンションにするとの計画のようだが、まず金融機関は   あまり「にぎわい」にはプラスにならない。休日は、その空間は死んでしまう。   マンションもそこに住む住民だけの話。ほかから人が集まってくる施設ではない。 3 県土木部長の答えによれば、   西側のマンションの総事業費は62億円。   それについて、国16億円、県8億円、市8億円の補助が見込まれるとのこと。   しかし、それにしてもかなりの高額マンション。補助金を除くと、再開発の事業組   合の負担は30億円。この投資額に見合った、賃料なり分譲収入を想定すると、   かなり高くならざるを得ない。そんな高額マンションに入居希望者が殺到するだろうか。 ●宇都宮にはかつて人が集まる魅力的な空間が存在した。  それが「バンバ(馬場)」であり、「仲見世」だった。  しかし、現在は市民が集まる「広場」は、郊外の巨大店舗の  人為的な空間が取って代わり、町の中心部には失われた。 ●行政当局は、二荒山神社の参道の両脇が広がり、面積は  3倍になると説明して、新たな「広場」になりうると、市民の理解を  求める。しかし、それは疑問である。 ●巨大なコンクリートの壁に東西を遮蔽された空間は、  決して市民の憩いの広場にはなり得ない。  さらに、西側の建物は住居と金融だとする。この二つに共通するのは、  なんだろう。それは、セキュリティーのために第三者を拒絶することである。  むやみに他人を入れてはならない巨大な結界だとすれば、やはりそこには  人がより集ってくる広場にはなりえない。  ●中心市街地のジリ貧を避けるためには、何でも良いからやってほしい。  そんな危機的な心情も理解できる。しかし、小手先の対応に終始した結果、  すべてにチグハグな街づくりをしてきてしまった失敗を、またも繰り返しては  ならないと考えるべきである。明確なイメージによって統一された長期的な  ビジョンに従い、総合的にこの町を再生させるべきである。そして、そのビジョンは  すでに存在するではないか。にぎ(賑)わいの町宇都宮。人が集まってくる  空間の総合的な創出。人が集まってくる要素の集約、福祉であれ、医療であれ、  消費であれ、文化であれ、アミューズメントであれ、それらが総合的に連携して  配置された街づくりを、丹念に長期的に繰り返すしかないのである。