国会通信 No.711

【政府回答の全文掲載】

2006/7/10 (マンデーレポート711の要旨)


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ アクセンチュア社関係の質問と回答について 【1】私の質問の意図。 【2】質問とこれに対する回答。 【3】簡単なコメント 【4】二の矢、三の矢 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】私の質問の意図。 ●私は、前国会の閉会の前日(6月17日)に、政府宛に質問主意書を提出し(その全文  は6月19日付 国会通信708号に掲載中。  http://www.s-yanase.com)、わが国の情報管理とアクセンチュア社の関連について、政  府を正しました。 ●私の関心の主なポイントは、以下の通りでした。 1 外国人の毎年の入国者数は600万人超。これら巨大な指紋情報を管理する巨大なデ   ータベースの管理システムの構築を外国資本に任せてしまってよいのか。すなわち情報   管理面での安全保障の観点。 2 入国外国人への指紋徴求を義務付ける国は現在世界で2カ国。      最初がアメリカ。そして2番目がこのたびの国会で入管法を改正した   日本。その両国が、期せずして、同じアクセンチュアという会社が開発したシステムを   採用。こうなると当然、指紋情報についての日米協働が   懸念されやしないか。 3 アクセンチュア社は10万円!!という超定額で新システムの実験業務を落札。ちな   みに新システムの設計費用は1億円程度。(これも   超安値)。超低額落札でも十分利益が確保できる裏があるのではないか。 4 アクセンチュア社が開発したシステムが、どの程度わが国の情報システムに参入し   ているのか。 5 生態情報の管理対象は、顔情報、指紋情報、声紋情報、虹彩情報など多岐にわたる   。今後どの程度の管理社会が実現されるのだろうか。      などである。 【2】質問とこれに対する回答。 ●質問とそれに対しての回答が届きましたので、回答についてはそのまま全文を掲載  します。 一 アクセンチュア社に関係するすべての政府契約について   日本国政府がアクセンチュア社との間で締結したすべての契約について、その契約年   月日、契約当事者となった行政部局、契約内容、契約条項中守秘義務の内容。  (回答)   お尋ねについては、膨大な作業が必要であるため、網羅的にお答えすることは困難であ   るが、例えば、宮内庁、公正取引委員会、法務省、国税庁において、アクセンチュア株   式会社と委託契約を締結している。   なお、一般に、守秘義務については、契約上知り得た秘密を他に漏らし、又は他の目   的に使用してはならない旨が契約で定められている。 二 アクセンチュア社が関係する将来の政府契約について   政府部内の今後の事業であって、現在アクセンチュア社が応札中のものを含め、アク   センチュア社が受注する可能性があるものがあれば、その事業名及び具体的な事業内容   を示されたい。  (回答)    お尋ねについては、公正な競争を損なうおそれがあるため、お答えすること   は差し控えたい。 三 法務省新入管システムとアクセンチュア社について 1 法務省は「認証装置及び自動化ゲート」のソフトウェア開発と実験の業務を、わず   か  十万円(運営業務費用九万円・成果物作成費用一万円)でアクセンチュア社に落   札(平成一七年九月一二日)させたと聞いているが、このような低額入札の目的と政府   がこれを認めた理由を説明されたい。  (回答)   法務省においては、アクセンチュア株式会社から、生体情報認証技術を利   用したシステムに関する知識及び経験を有し、同社の経営戦略の一環として応札したも   のである旨の説明を受け、契約の内容に適合した履行が可能であると判断したものであ   る。 2 現在、成田空港では、指紋認証装置及び自動化ゲートの実証実験が行われているが   、今国会で参議院法務委員会として現地を視察した際、機器の納入業者が沖電気株式会   社であることを現認した。沖電気株式会社以外に機器の納入業者があるか。さらに、実   験後に正式にスタートする指紋認証・自動化ゲートに関連する各機器の納入業者名並び   に機器納入に関する契約内容及び契約金額、契約前ならおおよその見積り額を明らかに   されたい。  (回答)   現在、成田空国において行っている出入国審査プロトタイプシステムの実証実   験及び試行運用で使用されている機器の納入業者は、沖電気株式会社のほか、日本電気   株式会社である。   また、当該実証実験及び試行運用の後に導入する予定である生体情報認証技術を利用し   た出入国審査システム(以下「生体情報システム」という。)に関する機器の納入業者   は未定である。   法務省としては、生体情報システムに要する経費については、詳細なシステム構成が   定まっていないため、確定的なことは申し上げられないが、一定の条件の下でシステム   構成を仮定して試算したところ、年間に約四十五億円から約七十億円の経費が必要とな   ると考えている。 3 2に関連して、各機器の納入業者は、アクセンチュア社の持つ独自のノウハウや特   許に対し、パテント使用料やコンサルタント料等を支払う契約を行っていると推測する   のが自然である。   さらに1の低額入札との関連もある。そこで、法務省は発注官庁として、アクセンチュ   ア社と機器納入業者の費用負担関係を詳細に把握しておくべき必要があると考えるが、   これらを調査した   事実はあるか。さらに、法務省として把握している機器納入業者のアクセンチュア社に   対する費用の負担関係を明らかにされたい。  (回答)   法務省においては、御指摘の費用負担関係について調査した事実はなく、ま   た、その内容は把握していない。 4 アクセンチュア社は合衆国政府からUS―VISIT制度に伴うシステム開発・運   用などの業務の委託を受けていると聞くが、その契約の年月日と契約内容、契約金額に   ついて日本国政府として認識しているところを説明されたい。   (回答)   お尋ねについては、政府として承知する立場にはないが、米国政府とアクセ   ンチュア社米国法人とがUS−VISITプログラムのシステムに係る業務委託契約を締結し   た事実は承知している。 5 我が国の入管当局が採用しようとしているシステムはその基本OS、ソフトウェア   、データ形式などにおいて、US―VISITと同様のものとされていると聞くが、そ   のとおりか。   また、我が国の入管当局の採用しようとしているシステムとUS―VISITとは技術   的にデータ共有が可能なシステムとなっていると理解してよろしいか。  (回答)   我が国において構築することを予定している生体情報システムの構築のた   めのオペレーティング・システム、ソフトウェア及びデータ形式については、今後のシ   ステムの設計開発において具体的に決定されるものであるが、US−VISITプログラムの   システムと同じシステムの構築を目指している、又はUS−VISITプログラムのシステム   と技術的にデータの共有を可能にすることを目指しているということはない。 6 我が国が生体認証情報システムを通じて得た情報は、合衆国政府に提供可能である   が、他方、同国政府がUS―VISITシステムで得た情報は我が国に提供されるのか   、明らかにされたい。 (回答)   現在のところ、米国政府が我が国政府にUS−VISITプログラムのシステムの   運用を通じて得た情報を提供するか否かについては確認していない。 7 法務省ホームページに掲載されている「業務環境分析図」(出入国管理業務)の「   出入国管理業務の主要課題分析図」の「システムの見直し」の項目中に「国内外の関係   機関との相互運用性の確保」という記載がある。アクセンチュア社への発注はUS―V   ISITとのシステムの相互運用を念頭に置いているのではないか。   (回答)   平成十八年三月三十一日に法務省情報化統括責任者が決定した「出入国管理   業務の業務・システム最適化計画」の策定支援業務に係るアクセンチュア株式会社との   契約に当たり、法務省として、US−VISITプログラムのシステムとの相互運用について   念頭に置いたことはない。 8 合衆国議会では、US―VISITシステムの導入の際に、この事業を落札したア   クセンチュア社がバミューダに本社を置く節税企業であることから、強い反対意見も出   され、二〇〇四年六月九日には、連邦議会下院歳出委員会で、外国企業と国土安全保障   に関する契約を禁止するための措置が可決されたと聞いている。政府として把握してい   る事実を明らかにされたい。また、国の安全保障の根幹となるシステム開発を外国企業   に委ねることについて、政府はどのように考えているのか、明らかにされたい。   (回答)   米国連邦議会においては、国土安全保障省関連予算案の審議に際し、二千四   年六月九日に、下院歳出委員会で、御指摘のような措置に係る予算修正案が可決された   が、同月十八日に、下院本会議で、当該予算修正案が否決されたと承知している。   「日本の公共部門のコンピューター製品及びサービスの調達に関する措置について」   (平成四年一月二十日アクション・プログラム実行推進委員会決定)では、「公共部門   におけるコンピューター製品・・・及びコンピューターサービス・・・の調達において   、無差別待遇、透明性及び公正でかつ開かれた競争という原則に立脚した取引機会を拡   大するために、日本政府・・・は、公共部門の調達手続の一層の改善に積極的に努める   。そのために、政府は、競争力のある外国系コンピューター製品及びサービスの調達拡   大という目的を持ちつつ・・・日本の公共部門のコンピューター製品及びサービスの調   達に関する措置・・・を実施する。」とされており、今般の法務省入国管理局における   アクセンチュア株式会社との契約に係る調達もこれに従って実施したものである。 四 政府間関係について 1 合衆国政府との間で、我が国の入管情報システムとUS―VISITとのデータ共   有、システムの相互運用のための取り決めが存在しているのか。存在しているとすれば   、その内容を開示されたい。 2 1で指摘した取り決めがまだ存在しないとすれば、現在我が国の如何なる機関と合   衆国政府の如何なる機関の間で、この問題についての協議がなされているのか、その進   捗状況について説明されたい。 (1および2について回答) 御指摘の「取り決め」はなく、協議も行われていない。 3 合衆国政府と日本国政府との間で、入管システムを統合し、データを共有する場合   、そのための法律制度として国内においてどのような法整備が必要であるないし必要で   ないと考えているのか。 (回答) お尋ねの点については検討しておらず、お答えすることは困難である。 五 法務省作成文書とアクセンチュア社の関与について   法務省のホームページ上に掲載されている別表の文書(省略)について、アクセン   チュア社がその作成に関与したものはどれか。また、原案の作成にのみ関わったものと   作成の責任者として名前が表示されているもの(例「刷新可能性調査結果報告」)とが   あるが、関与の方法にどのような違いがあるのか。    (回答)   御指摘の文書は、いずれも法務省が作成したものである。なお、法務省にお   いては、御指摘の文書に係るシステムの刷新可能性調査を実施したり、見直し方針や最   適化計画を策定するに当たり、これに必要な事務の一部を民間業者に委託している例が   あり、アクセンチュア株式会社に対しては、「出入国管理業務の業務・システム最適化   について」、「外国人登録証明書調製業務の業務・システム最適化について」及び「出   入国管理業務の業務・システム最適化について(出入国管理業務の業務・システム見直   し方針及び外国人登録証明書調製業務の業務・システム見直し方針を最適化計画におい   て統合)」に係るシステムの刷新可能性調査の実施並びに見直し方針及び最適化計画の   案の作成を委託しており、また、「刷新可能性調査報告書」で同社について言及されて   いるのは、同報告書に係る調査が、いわゆるレガシーシステムについて、同システムと   関係がない第三者に調査をさせて、同システムの刷新の可能性の有無、その程度等を明   らかにすることを目的とするものであることから、当該第三者である同社の調査結果を   同報告書にそのまま記載することとしたためである。 六 IC旅券の仕様について 1 IC旅券について、顔写真だけでなく指紋や指静脈をデータとして盛り込むことは   仕様上可能か。 2 日本国政府の発行するIC旅券について、指紋データを盛り込むことにより、合衆   国の入管ゲートにおいて指紋採取を省略することは可能か。また、これを可能にするた   めの協議がなされているのではないか。右質問する。  (回答)   政府が平成十八年三月に導入したIC旅券については、国際民間航空機関にお   いて定められたIC旅券に関する国際標準で、必ず記録することとされ記録に係る技術仕   様が確定されている顔写真のみを記録することを前提として、記録媒体の容量や旅券発   給システムの設計が行われており、現行の我が国のIC旅券に指紋や手指の静脈のデータ   を記録することはできない。また、御指摘のような協議がされているとの事実はない。 【3】 政府回答に対する簡単なコメント 1 政府はその全貌の詳細までは明らかにしなかったが、アクセンチュア株式会社と委   託契約を締結している行政部署として、   法務省以外に、宮内庁、公正取引委員会、国税庁を明らかにした。   国税庁にしても、公取にしても、さらに宮内庁にしても、国家、国民の機微に触れる情   報の多くがアクセンチュア社に絡んでいることが明らかとなった。(回答1) 2 なお質問後に知ったことだが、アクセンチュア社の旧名称は   「アンダーセン・コンサルティング」であったとのこと。この旧名称による   新たな質問をすることが必要となってきた。ちなみに、「アンダーセン」   で気づかれる人もあるだろう。エンロン等の破綻の関連で解散に追い込まれたアメリカ   の5大コンサルのひとつが「アーサー・アンダーセン・   コンサルティング」。アクセンチュア社の前身である。 3 成田で試験中の機器の納入業者は、沖電気とNEC。将来どこを   採用するかまだ決定していないが、システム運用経費の見積もりは   年間45億円から70億円。どこが採用されるか興味津々だが、   システム設計者・テスト実行者の超低額入札の疑問を、   「同社の経営戦略の一環として応札したものである」とするのみで   常識はずれの低額入札になんの問題意識も持っていないことが   明らかである。納入業者とシステム設計者の内部的契約関係について明らかにされなけ   れば公正な入札制度は担保できない。   (回答三の1、2、3) 4 情報管理面での国益や国民益の確保の質問に対し、政府の回答は、平成4年のアク   ションプログラムで 「公共部門におけるコンピューター製品・・・及びコンピュータ   ーサービス・・・の調達において、、、、政府は、競争力のある外国系コンピューター   製品及びサービスの調達拡大という目的を持ちつつ、その調達に関する措置を実施する   。」との部分を引用して回答としている。   この回答の意味するものは何か。それは、情報の管理面での国益の観点の欠如である。   それどころか、積極的に競争力のあるコンピューター製品を買い、サービスの調達拡大   を図ることこそ、   国益にかなうといわんばかりの有様である。本末転倒もはなはだしい。 5 指紋情報についての日米協働はいちおう現時点では予定されていないようである。   しかし、これについても質問への回答という限界があることだから、角度を変えて質問   する必要がありそうだ。 【4】 二の矢、三の矢を   いずれにしても今回は「一の矢」としての質問主意書であった。   ・ 旧名称の「アンダーセン・コンサルティング」としての追求。   ・ 宮内庁、公正取引委員会、国税庁に対する個別的かつ詳細な質問。   など、今回の質問の不十分な点を補う二の矢、三の矢の質問を準備したい。