国会通信 No.855

 【榊原英資氏の公述内容】

2010/4/5 (マンデーレポート855回の要旨)


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】榊原英資(早稲田大学教授)氏の公述に共感。 【2】その要旨。 【3】『政治とカネ』と日本の政治改革 【4】先週の主な活動。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 【1】予算委員会における榊原英資公述人(早稲田大学教授)の公述 ●参議院の予算委員会で3月16日に行われた公聴会、そのトップバッターは、  かつて大蔵省事務次官時代に「ミスター円」と称された国際的なエコノミスト  榊原英資さんでした。大変的確な指摘が行われ、とても参考になりました。 ●特に現在のデフレの原因を、財政的な要因からとらえるのではなく、  世界的な経済構造の変革の結果としてとらえている点に、私は共感を  覚えました。 ●デフレに対処する基本的な政策手段を金融緩和(インフレターゲット論などに代表さ  れる考え方)にもとめる考え方があります。榊原さんは、現在の日本のデフレの原因が  大きな経済構造変動にある以上、このような伝統的な手法には限界があることを強く示  唆していました。 ●そしてその上で、日本にはまだ国債発行の余力があること、そしてそのうえで社会保  障にウエートを置いて予算を作った民主党の今回の予算を評価すると結論付けていました。 ●委員会の審議では、野党からこの榊原さんの立論に真っ向から異を唱える人がいなか  ったのが印象的でした。以下に、その要旨を掲載します。 【2】榊原英資公述人(早稲田大学教授) 公述要旨 1 リーマン・ショック以降の経済状況   リーマン・ショックで2008年10-12月期、2009年1-3月期は年率2けたのマイナス成長だ   ったが、4-6月期からプラス成長に転じ、10-12月期は年率3.8%成長となり、数字の上   では、かなり景気回復は順調。民間シンクタンクの平均見通しでは、来年度も   実質約1.6%成長。   もっとも、実感に近い名目成長率は、10-12月期でわずか0.1%成長。実質GDPは   伸びているが、デフレの進行で景気回復感がないのが現状。   通常、インフレの際は金融引締め、デフレの際は金融緩和をすれば、   ある程度物価上昇率はコントロール可能とされるが、   現在のデフレは貨幣的現象でない部分が極めて大きく、むしろ構造的現象。   アメリカやヨーロッパはデフレではないが、ディスインフレーションであり、   過去4〜5%だった消費者物価上昇率は現在1〜2%。 2 デフレの要因   先進国で日本だけがデフレなのは、東アジアとの経済統合が進んだのが理由。制度的、   政治的に経済統合が進んだヨーロッパと異なり、市場主導、企業先導の経済統合で、   中国などと非常に密接化。1990年に40%だった東アジアの域内貿易比率は、現在58〜59%   と非常に増加し、今後5〜10年で60%に達する見込み。EUの域内貿易比率は65%で、   これに近いレベルまで東アジアの経済統合が市場主導で進行。   GDPで見た東アジアの大国は中国と日本。両国間にある程度裁定が働くため、中国で   製造し日本へ輸入すると、ユニクロ現象のように価格が低下。グローバリゼーション、   特に東アジアとの経済統合により日本でデフレが進行し、物価も賃金も上昇せず。   デフレ、賃金の下落、雇用問題等への政治的対応は必要だが、政策によるコントロール   余地は大きくない。構造的に中国と統合が進んでおり、仮に国内で雇用に厳しい条件を   付けると、中国へ雇用移転が生じる困難な状況。既に、東アジアには国境を越えた生産   のネットワークが存在。タイで自動車部品を作り、中国に輸出して組み立て、それを   欧米や日本に輸出するなど、日本と中国を中心とした東アジア全体が世界の工場と   なっている状況。 3 22年度予算について   22年度予算では、税収が8.7兆円減少し、国債発行は11兆円増加。また、子ども手当や   高校無償化などで、社会保障予算が9.8%、文教予算が5.2%増加した一方、公共事業は   18.3%減少したが、これは適切な方向感。   経済がグローバル化し、デフレで賃金が上昇しない状況では、従来のように企業が福祉   を担うことは不可能。従来、社会保障は年金と医療が中心だったが、雇用や育児を含めた   政府による福祉拡大が必要。現政権は福祉拡大という方向で、ヨーロッパ型福祉社会   への道を採っている。フランスは育児手当の種類が10〜11ぐらい存在し、女性が育児を   しながら働くということが容易だが、これは、社会保障が育児にまで拡大されているため。   自民党政権は、アメリカ型で小さな政府を目指したが、現政権はヨーロッパ型福祉社会   を目指すべき。どちらが良いかは議論があるが、企業福祉が後退しており、フランス、   ドイツのように、そこを国がカバーすることは必要。 4 財政悪化に対する考え方   国・地方を合わせた債務残高862兆円(対GDP比181%)は、アメリカやイギリス(80   〜90%)の倍で、財源がないというのが財務省の主張だが、これはバランスシートの   負債側のみを見た議論。   日本の個人金融資産は1,500兆円近くあり、借金を引いたネットでも110兆円。   これは、個人金融資産のかなりの部分が国債の購入に向かっていることを意味し、   現に日本の国債の94%は日本国民が保有。政府は国民の総体であり、政府の借金を   国民がカバーしている訳で、国全体としては無借金。   先進国中、日本は一番の債権大国で、対外的に多額の債権を保有。国債金利も先進国中   最低で、10年債は1.3〜1.4%と非常に低い水準のため、当面国債の消化は問題なく、22   年度予算で子ども手当の全額支給も可能。   国債発行44兆円は過大との批判もあるが、60兆円出しても国民が買うので消化可能。個人が   直接買わなくても、個人の預金や保険を通じて間接的に国民が国債を買う状況が続く限りは、   国債発行がある程度増加しても問題ない。   少なくとも4〜5年は、国債発行により福祉拡大、景気回復を図る余地が十分ある。   もちろん、中長期的に財政再建は必要。個人金融資産が多いのは過去の貯蓄が   多かったためだが、現在、貯蓄率は5%未満まで低下。   一方、財政赤字はそれ以上に増加しており、国債市場の余裕は、このままでは3〜5年。   ただ、当面余裕があるということは十分意識する必要があり、国債の大量発行も当面は可能。 5 ヨーロッパ型福祉社会の実現   ヨーロッパ型福祉社会実現のため、育児手当、子ども手当の充実を始め、雇用や育児に   社会保障を拡大するなら、5〜10年のスパンで考えると財源が必要。当然、歳入もヨー   ロッパ型とし、5〜10年の間に消費税増税を考えるべき。   現在、財政赤字が非常に大きいのは、消費税増税を5〜10年前に行う必要があったが、   様々な政治的条件により実行できなかったため。   子ども手当、農業戸別所得補償、高校無償化はヨーロッパ型福祉社会への第一歩であり、   その意味で22年度予算を評価。これを更に進めることが必要。 【3】『政治とカネ』と日本の政治改革 ●政権公約を実現する会の勉強会で岩井信奉さん(日大教授)のお話を聞きました。岩  井さんとは、かつての90年台初頭の政治改革論議以来の付き合い。久しぶりにお話を聞き、  さらに視野を広げ、そして政治の本質をしっかりと踏まえた上でのご意見にあらためて  敬服しました。 ●政治の金の問題については、入りも問題だが「出」のほうがより問題。  現行の政治資金法は「出」についての規制が不備であるとの指摘、  あるいは、アメリカも企業献金は禁止しつつ、実際は政治活動委員会  (PAC:Political  Action  Committee)を経由して企業献金が  実際には行われていることなど、企業献金はすべて悪ととらえることの  副作用や問題点などについても指摘していました。 ●特に話のまとめの部分で語られた、企業団体献金禁止に先んじて(同時に)  やるべきことについての3つの指摘は、非常に有意義でした。  岩井さんの指摘した三点は以下のとおりです。 1 「政治会計」の確立     政治家によるバランスシートの公開と適正な政治資金の模索 2 政治とカネに関する制度の体系的な見直しと法整備ー政治活動適正化法 3 選挙政治資金委員会の設置   収支報告書の監理、コンサルティング、告発 ●これだけだと、何のことか良くわかりませんが、私なりに考えてきたこと  を付け加えて考えると、  第1点は、政治活動のモデル的な資金規模をどう考えるかと言う基本的な  問題的です。「適正な政治活動」とは何かの全体像、あるいは模範的な姿についてのイ  メージは、実は日本ではまったくありません。政治活動は、一人の政治家だけでは行え  ません。政治の情報を有権者と議会の間に立って双方向で伝達する。その営みが政治活  動の基本ですが、それを行うためには当然コストがかかります。それをどう把握するの  か。こんな本質的な議論はほとんどありません。このスタートの議論が不可欠だと思い  ます。  第2点は、日本の政治関係法規の基本的な問題です。政治活動と選挙活動が  峻別されている点も問題ですし、政治資金規正法と公職選挙法のダブルスタンダードに  している点も問題です。この点を総合的に考えていく必要があるとの  根本的な指摘です。  第3点は、政治と司法のバランスをどう考えるかと言う問題につながっています。 ●政治とカネの問題は、本当に古くて新しい問題ですが、いつまでたっても、  日本の政治がこの問題に取りつかれている最大の原因は、政治とはなにかの  本質論なしで、対症療法に終始してきたことにあると思います。岩井さんの  提言のように、適正な政治活動をは何かの原点にたった根本的な政治改革の  議論をする必要があると思います。 【4】先週の主な活動。 ■3月29日(月) 08:00 第854回マンデーレポート ■3月30日(火) 13:30 東京後援会会員訪問 18:30 予算委員会 懇親会。 ★戦後5番目のスピードであがった本年度の予算、  その打ち上げの意味もあって、大いに盛り上がりました。  8時過ぎに 鳩山総理も飛び入り参加。懸案の郵政問題に  決着をつけた直後のことでもあり、総理の予算委員会の取り組みに  対する思いを実感し、委員長として感激しました。 21:00 東京後援会役員懇談会 ★高校同期から一部上場の会社の代表取締役が誕生。  大いに祝福しました。 ■3月31日(水) 12:00 財務省吉川主計官 ★市民税制についてレクチャーを受けました。 12:20 予算委員会委員部 12:30 議員総会 13:00 本会議 15:00 党首討論 ★応援傍聴。私の席は総理の左斜め後ろ。鳩山さんの表情は伺えませんでしたが、  一方、谷垣総裁、山口代表の表情は正面から良く見えました。殺気立った、  余裕のない表情。  谷垣さんは、冒頭の7分間を、政治の金の話題を延々と列挙し続けました。  内容には触れず、「なになにの件」と言った個別名称の列挙を続けるやり方で、  視聴者に悪い印象を植え付けようとする作戦でしたが、  総理の落ち着いた対応振りのほうが光りました。  普天間問題も、交渉の機微に入っているのですから、すべてを語れないのは外交交渉  の常識のはず。  それをわかった上で攻め立てるのは、かつての与党経験者の対応として  首を傾げざるを得ませんでした。 ■4月1日(木) 10:00 法務委員会 ★公訴時効、そして刑の時効を延長する刑事訴訟法改正法案の趣旨説明を  聴取しました。 11:30 政権公約を実現する会勉強会 ★岩井信奉さん(日大教授)のお話を聞きました。  『政治とカネ』と日本の政治改革というテーマでした。  (上記【3】参照) 14:00 故柴田愛子様弔問 16:00 マニュフェスト成長地域戦略研究会 ★第1回目、参議院選挙に向けての新たなマニフェストづくりが  スタートしました。3つの研究会のたちあげに参加。 ■4月2日(金) 09:30 議員総会 10:00 本会議 11:00 参議院議長主催全議員懇親会 ■4月3日(土) 10:00 あけぼし保育園入園式 12:00 星一男応援遊説 14:00 第30回四季桜を愛する会 18:00 故小松カネ様お通夜 ■4月4日(日) 11:00 星一男日光市長選候補出陣式 12:30 石井万吉を囲む会懇談会 12:00 西原3丁目お花見会 12:58 ★宇都宮駅に、枝野行政刷新担当大臣を出迎え。  日光市長選挙への応援に駆けつけてくれました。  急な応援依頼を快諾して実現。感謝。  私も日光に舞い戻り、最初の遊説に同行。  その後は、市議選に出馬した皆さんの各事務所を訪問し激励。